「バラエティー番組をやっていると、“こんな時期に不謹慎だ”というクレームの電話がかかってくるのですが、カープに関する話題では、ひとつもそういうことがない。いかにカープが地域に根付いているかがわかりますね」

 

 過日、広島を本拠地とするテレビ局の社員から、そんな話を聞いた。それはカープの選手たちが募金など災害支援活動に熱心に取り組んでいるという理由だけではなさそうだ。

 

 周知のように西日本を中心に全国を襲った豪雨は瀬戸内地域に未曾有の被害をもたらした。広島県内だけでも108人の死者を出し、今なお6人の安否不明者がいる。これを受けカープは7月9日からの対阪神3連戦を中止した。

 

 災害発生後、初の主催試合となった7月20日の巨人戦ではマツダスタジアムに3万1396人の大観衆が集まった。ファンはカープの試合を待ち望んでいたのだ。

 

 振り返って考えてみれば、カープは出自からして原爆を投下され、焦土と化した広島の「復興のシンボル」として誕生した球団である。

 

 カープの名付け親として知られる谷川昇が「プロ野球が焦土の中から立ち上がった広島の人たちの精神的慰安と結束に役立つと判断すると球団結成の腹を固め」(広島東洋カープ球団史)たことが端緒となり、創設に向け動き始めたのである。

 

 スポーツの力は微力ではあるが無力ではない。カープはそのことを証明し続けている。

 

(このコーナーは二宮清純が第1週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜、フリーライター西本恵さんが第3週木曜を担当します)


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