5年後に日本で開催されるラグビーワールドカップ2019の組織委員会の理事会・評議会が25日、都内で開かれ、事務総長に元総務事務次官の嶋津昭氏(財団法人地域総合整備財団顧問)の就任が決定した。今後は嶋津氏が事務方のトップとして、IRBや国内の試合開催希望自治体との交渉、折衝など大会に向けた準備を取り仕切っていく。会見に臨んだ嶋津氏は「40数年間、地方自治と関わってきた知見と経験、そして地方自治体との信頼関係を持っている。そういうものを生かして大会を成功させるように最大限の努力をしたい」と抱負を語った。
(写真:「こういう仕事を仰せつかるとは夢にも思わなかった」と話す嶋津氏)
 W杯まで残り5年。「本格的な準備をしていかなくてはいけない」と組織委の森喜朗副会長(日本ラグビー協会会長)が語るように、2014年度はいよいよ試合開催地の選考、決定という重要なプロセスが控えている。組織委では試合会場選定のガイドラインを興味のある64自治体へ配布し、申請書の受付を開始。10月に立候補を締め切る予定だ。

 全国10〜12会場の試合開催地が決まれば、その次は各チームが大会前や期間中に合宿を張る場所を決定する作業も待っている。この過程では各都道府県をはじめとする地方自治体や、それらを管轄する総務省との連携が不可欠だ。2002年に日韓共催で実施されたサッカーW杯では組織委の事務総長を元自治事務次官の遠藤安彦氏が務め、全国各地の開催会場やキャンプ地とのパイプ役も担った。

 今回、IRBから準備活動を加速させるべく事務総長選任を要求されていた経緯もあり、組織委の御手洗冨士夫会長(日本経団連名誉会長)、森副会長が中心となって人選に着手。新藤義孝総務大臣とも相談したところ、嶋津氏が候補者としてあがったという。嶋津氏は1967年に自治省(現総務省)に入省。石川県や静岡県の財政課長などを経て、自治省の大臣官房長、財政局長を歴任した。01年には初代の総務事務次官に就任し、退官後は全国知事会の事務総長も務めた。森副会長は「自治体の財政にも精通しており、適格な方」と推薦理由を説明した。

 嶋津氏にラグビー経験はなく、実際の試合を観た感想も「率直に言って難しい競技だと思った」と明かす。ただ、徳増浩司理事(ラグビー協会理事)が「情熱があり、自ら進んで研究されている」と評するように、会見では早速、W杯成功へのポイントを3つに分けて提示した。「大会が日本にもたらせるインパクトを導き出せるか」「2020年の五輪とハーモニーを持たせられるか」、そして「全国で大会を盛り上げ、地域活性化につなげられるか」の3点だ。
 
 その中で自らに求められる最大の役割を「各自治体が試合を運営するにあたっての施設整備や財政面などの制約について、担当者と腹を割って話をし、アドバイスをする」ことととらえる。「組織委自体にも課題があり、開催自治体にも課題がある。それらを連携して一緒に解決していきたい」と長年の経験を踏まえて職務にあたる考えを示した。

 今回の理事会・評議員会では定款を変更し、理事定数を40名以内に拡大。嶋津氏を含め、4名の理事が追加された。今後、試合開催自治体が決定した際には、その代表者を理事として選任し、徐々に人数を増やして組織を強化していく。次回の理事会は5月中旬に開かれ、新事務総長の下、マーケティングやチケット販売戦略の策定といった具体的な準備が動き出す。