14日、ジャパンラグビートップリーグ第3節が東京・秩父宮ラグビー場で行われ、神戸製鋼コベルコスティーラーズがサントリーサンゴリアスを36-20で下した。神戸製鋼は元ニュージーランド代表のSOダン・カーターがデビュー。初トライを挙げるなど21得点の活躍で、勝利に貢献した。

 

 オールブラックスで112キャップを誇り、テストマッチ通算最多得点記録保持者は伊達じゃなかった。カーターを一目見ようと秩父宮ラグビー場に多くの観客が詰めかけた。

 

 開始早々、自陣でカーターにボールが渡る。キックで距離を稼ぐと、観衆が大きく沸いた。見せ場はすぐにやって来た。3分、左サイドを突破したWTB山下楽平がトライ。コンバージョンキックを任されるのは、もちろんカーターだ。

 

 ゴールまで約25m。風もあまりなく、それほど難しい位置ではないように思えた。しかし、背番号10は外してしまう。「数千回もキックを成功させてきたが、“良いスタートを切りたい”という思いがプレッシャーになった」。ワールドクラスの名手も人の子である。

 

「自分の次の仕事に集中した」というカーター。8分にPGを決め、18分にはCTBリチャード・バックマンのトライで得たコンバージョンキックを成功してみせた。

 

 キックでなくランでも魅せた。22分、カーターのパスから山下が右サイドを突破。敵を引き付けて投じたパスに反応したカーターはフリーでボールを受けた。あとは無人のゴールに飛び込むだけだった。20-3と昨年のチャンピオンチームに大きな差を付けた。

 

 サントリーの沢木敬介監督もたまらずSO田村熙に代えて、マット・ギタウを投入。オーストラリア代表100キャップを超えるギタウで流れを変えようと試みた。前半23分での交代を沢木監督はこう説明した。「熙が悪かったわけではない。何かを変えなければいけなかった。あの時間での交代になりました」

 

 前半はカーターがPGで加点し、23-8で終えた。後半に入ると雨が降ったが、カーターのキックは鈍ることはなかった。3分のコンバージョン、20分と37分にPGは全て成功。21得点を挙げ、神戸製鋼を勝利に導いた。

 

「今日はチームにとっても、私にとってもスペシャルな試合だった」。開幕節はコンディションが整わずメンバー外。第2節は開催地の北海道で大きな地震があったため、延期となった。カーターにとっては4カ月ぶりの公式戦だった。

 

 この日、秩父宮ラグビー場には平日開催にも関わらず1万7576人が集まった。試合後は通常、監督(もしくはヘッドコーチ)とキャプテンが記者会見を行うが、注目度の高さからカーター1人の会見も開かれる異例の対応だった。

 

「新しいチームに入れば、自分のプレーをもう一度証明しないといけない」

 マン・オブ・ザ・マッチに輝くなど、自らの価値を証明してみせた秋雨の夜だった。

 

(文・写真/杉浦泰介)