日本時間5日、コスタリカで「FIFA U−17女子W杯」決勝が行われ、U−17女子日本代表が同スペイン代表を2対0で下し、優勝を果たした。日本は序盤、スペインにボールを支配されたものの、連動した守りでチャンスはつくらせない。すると前半5分、MF西田明華のゴールで先制に成功した。1点をリードして迎えた後半も、日本は攻守に安定したプレーを披露。33分には、途中出場のFW児野楓香のゴールでリードを広げた。日本は同大会初優勝。世代別のW杯では、日本の男女を通じて史上初の快挙となった。

 安定した戦いで6戦全勝(コスタリカ)
U−17女子日本代表 2―0 U−17女子スペイン代表
【得点】
[日本] 西田明華(5分)、児野楓香(34分)
 キャプテンのMF杉田妃和が、優勝トロフィーを高々に掲げた。日本は6試合23得点、1失点で全勝という圧倒的な強さで世界を制した。

 決勝という大一番で重圧がかかる中、日本は前半5分、早くも先制点を奪った。細かいパスワークでゴールに向かい、PA手前でボールを受けたDF松原志歩がミドルシュートを狙った。大きな弧を描いたシュートは、GKが手で弾いてクロスバーを直撃。跳ね返ったボールに、西田が詰め、右足でゴールにねじ込んだ。日本の連動した動きに、スペインはマークを絞れなかった。

 その後、スペインにボールを支配される時間が続いたものの、日本は組織的な守備で決定機はつくらせない。35分、MFガルシア・ナイカリにPA内へ進入されたものの、3人で囲い込み、ボールを奪った。ここまで失点1のみに抑えてきた堅守が、決勝でも光った。

 頂点まで残り45分。追加点を奪って優勝を手繰り寄せたい日本だが、チャンスをつくるものの、決めきれない場面が続いた。9分、MF長谷川唯が相手陣地でパスカットし、すかさずFW小林里歌子にスルーパス。小林はPA内に持ち込んでシュートを放ったが、GKに防がれた。25分には、途中出場の児野が左サイドからスローインを受け、巧みにDFと体を入れ替えてGKと1対1に。だが、シュートは再びGKにセーブされた。リードはしているが、日本に嫌な緊張感が漂い始めた。

 そんな空気を振り払ったのは、児野だった。32分、左サイドからのパスを小林がワンタッチでPA内のスペースへ。反応した児野が、またしてもGKと1対1の場面を迎えた。今度は冷静にGKの動きを見極めて、ゴール右へ流し込んだ。勝利を大きく引き寄せるゴールに、高倉麻子監督は右手で大きくガッツポーズを繰り返した。

 守りも最後まで集中力を切らさなかった。ピンチらしいピンチを迎えることなく、完封。完勝で栄冠を掴み取った。

「小さいなでしこたちが、緊張で震えていた感じだったが、堂々と戦ってくれて本当にうれしい」
 高倉監督は笑顔で選手たちを称えた。自身も元なでしことして戦ってきたが、世界の壁は分厚かった。しかし、指導者となり、W杯を制覇するにふさわしいチームを作り上げた。日本の女性指導者が世界を制したのは史上初。大仁邦彌日本サッカー協会会長は「女性指導者にとってはもちろん、日本の指導者全てにとって大きな自信になると思う」とのコメントを発表し、快挙を祝福した。

 リトルなでしこの選手たちは、2020年東京五輪で主軸になり得る世代だ。その選手たちが、育成年代時に世界を制したという経験は、大きなアドバンテージになるだろう。高倉監督も「(選手たちは)まだまだこれで終わったわけではないので、どんどん上を目指していって欲しい」と更なる成長を促した。“リトルなでしこ”から“なでしこ”へ。彼女たちの今後に、期待せずにはいられない。