森保ジャパンがいいスタートを切った。

 初陣となった9月11日のコスタリカ戦(パナソニックスタジアム吹田)を3-0と快勝した。森保一監督は海外でプレーするロシアワールドカップのメンバーをクラブでのレギュラー争いに専念させ、今回の編成は若手の海外組+国内組という編成で臨んだ。中島翔哉、南野拓実、堂安律ら若いタレントとキャプテンの青山敏弘、小林悠ら年長者がうまくかみ合っていた。

 

 森保監督と言えばサンフレッチェ広島時代や、現在のU-21代表でも3-4-2-1を基本布陣にしているが、この日は4-4-2を採用(後半途中から4-2-3-1)。多くの約束事で縛ることなく、まずは伸び伸びとやらせた感がある。

 

 指揮官は試合後、選手たちのパフォーマンスを称えた。

「攻撃の選手が攻撃できたのは守備の選手が頑張ってつなげたというのがあってのこと。選手たちには自分の良さを最大限に発揮してほしいと伝えました。それと同時に、周りと支え合ってつながってプレーすることが自分の良さを出すことになるとも。実践してくれたのは、監督として幸いなこと」

 

 支え合う、つながり合う意識を強く持たせ、ボランチの青山、トップの小林など年長者をセンターラインに配置させて「まとまり」を崩させなかった采配も見事だった。

 

 初陣は所信表明の舞台である。

 イエローカードが1枚も出ていなかったことも、このチームの特色になるような気がしている。ちなみにコスタリカは警告を2枚受けている。

 

 クリーンなプレーは、森保監督の信条だと言っていい。サンフレッチェ時代には2012年の監督就任から5年連続で、チームがフェアプレー賞を獲得している(シーズン途中で解任されたが17年もサンフレッチェは同賞を獲得)。

 

 12年にJリーグアウォーズでフェアプレー賞を受賞した際、こうスピーチしている。

「勝つために激しく、厳しくやるのは当然だとしても、人を傷つけるファウルや暴言、異議で無駄なイエローカードをもらうことはやめようとずっと言い続けてきました。選手たちは試合で熱くなっているときも常にクリーンで、かつ激しく、厳しくプレーすることを忘れずにやってくれたことを誇りに思います」

 

 ほかに気を向けず、勝つためにプレーに集中させる意味もある。「クリーンで激しく」がサンフレッチェの売りであった。

 

 フェアプレー精神の強調は、日本のスタイルとも合致する。

 フェアプレーポイントでセネガルを上回り、決勝トーナメントに進んだロシアワールドカップは記憶に新しい。8月にU-20女子ワールドカップを制したヤングなでしこも、フェアプレー賞を獲得している。「クリーン」であることが「強い」という認識が、より広がっていくような気がしている。

 

 U-21代表との兼務は、多忙極まりない。今回のA代表メンバーも、インドネシアでアジア大会を戦いながら現地で発表している。専念できないのは確かにデメリットだと言える。しかしメリットもある。昔は国内組を集めて代表の強化キャンプを張ることも多かったが、国内の超過密日程時代の今はそれも難しい。両方を兼務することによって、少なくとも選手を指導できる時間が増え、自分の考えやチームコンセプトを落とし込みやすくなる。若手が東京五輪世代のU-21代表で評価を上げていけば、A代表に抜てきしやすい環境ではある。デメリットよりもメリットのほうが大きいとも感じる。

 

 3-0という結果もさることながら、内容も良かった。兼任だからこその楽しみも増えてきた。不安よりも期待を抱かせる、最高の船出であった。


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