第409回 レブロン再出発、ウォリアーズの3連覇への挑戦、渡邊雄太のデビュー ~2018-19 NBAシーズンの見どころ~
9月21日よりNBA全チームのメディアデイが全米各地で開催される。開幕までもうあと1カ月弱——。2018-19シーズンはどんなドラマが生まれるのか。今回は4つのポイントを軸に、今季のNBAの見どころを探っていきたい。
キング率いるレイカーズに注目
“選ばれし男”はハリウッドでも成功できるのか――。レブロン・ジェームズが7月1日にロサンゼルス・レイカーズ移籍を発表したことは、米スポーツ界では当然のように大きなニュースになった。このレブロン率いるレイカーズこそが、今季最大の注目チーム。一昨年には故郷チームのクリーブランド・キャバリアーズ(以下、キャブズ)を悲願の初優勝に導いたキング・ジェームズは、今度はLAでマジック・ジョンソン球団社長とともに新たなチーム作りに挑む。
しかし、2013年以降はプレーオフから見放されているレイカーズで優勝争いに食い込むのは容易ではあるまい。今季はレブロンとロンゾ・ボール、ブランドン・イングラム、カイル・クーズマという若手トリオが軸になるが、まだ戦力不足な感は否めない。ラジョン・ロンド、ランス・スティーブンソン、ジャベール・マギー、マイケル・ビーズリーといったクセの強い選手たちを次々と補強したが、このメンバーでゴールデンステイト・ウォリアーズ、ヒューストン・ロケッツといったウェスタン・カンファレンスの強豪に太刀打ちできるのかどうか。
さすがのレブロンも今季にいきなり上位進出を果たせるとは考えてないだろうが、今後を楽しみにさせるポテンシャルは示したいところか。現役最強プレイヤーにとって、新たな挑戦が始まる。1年を通じて話題のチームであり続ける中で、レイカーズの行方からしばらく目が離せない。
現代最強チーム、3連覇なるか
開幕時点でニュースになるのはレイカーズでも、シーズン終盤に話題の中心になるのは今季もウォリアーズに違いない。昨季まで4年連続ファイナルに進出し、3度の優勝を遂げた現代最強チーム。今季にフランチャイズ史上初の3連覇を達成すれば、真の意味で歴史に刻まれるチームになるのだろう。
ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、クレイ・トンプソン、ドレイモンド・グリーンを擁するチームが、オフにはニューオーリンズ・ペリカンズからFAになったデマーカス・カズンズを1年530万ドルという安価で獲得。これで晴れて全ポジションにオールスターを揃え、さらに戦力アップしたとみられている。昨季に最大のライバルとなったロケッツから主力選手が何人か抜けたこともあり、今季もウォリアーズがダントツの本命と目されてしかるべきに違いない。
その気になればリーグ史上最多を更新するシーズン74勝だって不可能ではないはずだが、彼らがもうそんな記録を目指すことはない。勝負の時期に向け、少しずつ、確実に、今季もウォリアーズは前に進んでくるはずである。
“レブロン以降”の東の覇者は
過去8年連続でファイナルに進んできたレブロンがレイカーズに移籍し、今季は久々にレブロンが属さないチームがイースタン・カンファレンスの王者に就くことになる。いわゆる“群雄割拠の時代”。そんな中で最も注目すべきは、多くの若手タレントを揃えたボストン・セルティックスとフィラデルフィア・76ersだ。
昨季のセルティックスは多くの故障者に悩まされながら、それでもシーズン55勝を挙げた。カンファレンス・ファイナルでもレブロンとキャブズを第7戦まで追い詰めたチームに、カイリー・アービング、ゴードン・ヘイワードという2大エースが満を持して戻ってくる。
アービング、ジェイレン・ブラウン、ヘイワード、ジェイソン・テイタム、アル・ホーフォードと続くスタメン5人は強力。41歳にしてリーグ最高級の名将と目されるようになったブラッド・スティーブンスHCの存在も大きい。攻守両面でハイレベルなセルティックスに、2010年以来となるファイナル進出の絶好機が到来しそうだ。
ジョエル・エンビード、ベン・シモンズ、ダリオ・シャリッチといったヤングスタートリオを持つ76ersも爆発力と魅力では負けていない。昨季5年ぶりに進んだプレーオフで貴重な経験を積み、リーグ屈指のタレント集団は様々な意味で大きく前進した。今オフにJJ・レディック、アミア・ジョンソンという頼れるベテランを残留させたの適切な動きと言える。あとは1年目は大誤算だった昨年度のドラフト全体1巡指名選手マーケル・フルツが徐々にでも力を発揮すれば、76ersは誰にとっても厄介なチームになるはずである。
日本人2人目のNBAデビューは
渡邊雄太がメンフィス・グリズリーズと2ウェイ契約を結んだおかげで、今季のNBAはバスケットボールファン以外からも注目を集めることになる。
この2ウェイ契約を手にした選手は、基本的にはNBAのマイナーリーグであるGリーグの所属だが、1シーズンに45日間だけNBAでロースター登録が許される。つまり渡邊はNBAでもプレーできるだけの実力者だと評価されたということ。2004年にフェニックス・サンズでプレーした田臥勇太以来、日本人史上2人目のNBAプレーヤーの誕生はもう目前に迫っている。
身長206cm、93kgという堂々たる体格の渡邊は、シュート力、スキル、スムーズなフットワークも備えた万能型だ。特にジョージ・ワシントン大学4年生時にはアトランティック10カンファレンスの最優秀守備選手賞を受賞したディフェンスは本物。今夏のサマーリーグでも守備でハイライトを作った。守備はオフェンスに比べてスランプが少なく、渡邊はGリーグ、さらにNBAでも貢献できる術を見つけるのではないか。
今後、最も怖いのは故障。ルーキーとしては若くない23歳の渡邊にとって、大きなケガは致命傷になりかねない。逆に言えば、ケガがないままプロの水にも慣れていけば、今季中のどこかで“その瞬間”が訪れる可能性は高い。晴れてNBAデビューを飾った時には、日本でもバスケットボール界の枠を超えたレベルの騒ぎになることだろう。
杉浦大介(すぎうら だいすけ)プロフィール
東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、NFL、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『スラッガー』『ダンクシュート』『アメリカンフットボールマガジン』『ボクシングマガジン』『日本経済新聞』など多数の媒体に記事、コラムを寄稿している。著書に『MLBに挑んだ7人のサムライ』(サンクチュアリ出版)『日本人投手黄金時代 メジャーリーグにおける真の評価』(KKベストセラーズ)。最新刊に『イチローがいた幸せ』(悟空出版)。
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