(写真:完封勝利を収めたビックカメラのバッテリー)

 23日、日本女子ソフトボールリーグの第7節最終日が各地で行われた。群馬・高崎市城南野球場では、2位のビックカメラ高崎BEE QUEEN対5位の太陽誘電ソルフィーユと10位の大垣ミナモ対12位の伊予銀行VERTZの2試合が行われた。ビックカメラは太陽誘電との“高崎ダービー”を3-0で制した。通算成績を13勝2敗とし、1敗をキープしている首位のトヨタ自動車レッドテリア-ズを追走。2勝12敗の伊予銀行は4勝10敗の大垣ミナモを3-1で破り、降格圏脱出へと一歩近付いた。

 

 群馬県高崎市を拠点に置くビックカメラと太陽誘電。昨シーズンの決勝トーナメントで日本リーグの覇権を争った“高崎ダービー”が同市で行われた。生憎の曇り空だったが、両軍の応援団がスタジアムに詰め掛けた。

 

 ここまでの道のりは対照的だ。2位のビックカメラは12勝2敗で首位トヨタをピタリと追う一方で、太陽誘電は7勝7敗の勝率5割と苦しんでいる。決勝トーナメントに進出できる4位とは1勝差で、5位には太陽誘電を含む4チームが並ぶ大混戦の中にいるのだ。

 

(写真:要所を抑えたピッチングで今シーズン8勝目を挙げた上野)

 先発のマウンドにはビックカメラが上野由岐子、太陽誘電が藤田倭と両エースが上がった。しかしフタを開けてみると、ビックカメラが上野で“直球勝負”したのに対し、太陽誘電は“スイッチリレー”の奇策を仕掛けた。

 

 先攻はビックカメラだ。太陽誘電は先発の藤田が、2番の糟谷舞乃にヒットを許すと、すかさずDP(指名選手)の尾﨑望良と交代した。尾﨑が1アウトを奪った後、4番の山本優を歩かせた。すると藤田と尾﨑が再びスイッチ。藤田が5番の中西舞衣を打ち取った。

 

 スターティングメンバーは交代後も再出場できるソフトボールならではのリエントリー制度を活用した変則リレーで、初回をゼロで凌いだ。藤田と尾﨑が打撃力もある“二刀流”だからこそ可能な奇策とも言える。

 

 2回は尾﨑がマウンドに上がる。先頭の内藤美穂にヒットを打たれると、続く大工谷真波に送られた。ここでピッチャーを藤田にスイッチしたが、藤本麗の内野安打で一、三塁とピンチは広がった。9番の我妻悠香にはスクイズで先制点を奪われた。

 

(写真:主砲の山本はリーグ通算最多本塁打記録へあと1本と迫る)

 ビックカメラの先発・上野はスコアボードにゼロを並べる。先制点をもたらしたのが女房役の我妻なら、追加点を挙げたのは主砲の一撃だった。2死ランナーなしで打席に入った山本が、尾﨑から右中間へ大飛球を放った。

 

「塁に出ることを意識した」という山本が振り抜いた打球はフェンスを越えた。2試合連続の今シーズン5号。日本代表でも4番を務める主砲が、リーグ通算40号で貴重な追加点を挙げた。打線は5回にも市口侑果がタイムリーで加点した。

 

(写真:チャンスで凡退し肩を落とす藤田。ノーヒットに終わった)

 3点もあれば、この日の上野には十分すぎるリードだった。「駆け引きを楽しみながら投げた」と要所を締めるピッチング。四死球で無駄なランナーを出さなかったことも大きかった。被安打5、奪三振は7。105球で太陽誘電打線をシャットアウトした。

 

 太陽誘電の4番・藤田は2度のチャンスをモノにできず3タコだった。「上野さんのすごさを改めて感じました」と完敗を認めつつ、「やっていて楽しかった」との思いを口にした。

 

「ビックカメラになってからは連覇をしていない」と上野。チームは先週、全日本総合選手権を制した。今シーズンは連覇に加え、2冠も懸かっている。「1戦1戦を大事に」と淡々と語る36歳のエースが、チームを頂点に導く。

 

(文・写真/杉浦泰介)