製造元のミズノが謝罪 含水率の目標下回る毛糸を使用 〜NPB統一球問題〜

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 今季のプロ野球公式戦で使用している統一球の反発係数が基準値を上回っていた問題で、製造元のミズノが15日、都内ホテルで会見を開いた。冒頭、水野明人代表取締役社長が「私どもの不手際により、NPB、各球団、選手の皆様、野球ファンの皆様に多大なご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます」と謝罪。基準値を超えるボールが納品された原因として、(1)内部のゴム芯に巻く毛糸の含水率が目標値より低く、通常より硬くなってしまったこと、(2)反発係数の検査機が、NPBが調査を委託している日本車両検査協会で保有するものと、ミズノ社内のものとで結果に差異が生じていたこと、の2点をあげた。
(写真:頭を下げて謝罪する水野社長<中央>はじめミズノの幹部)
 ミズノでは現在、国内で管理している在庫の約2300ダース(2万7600個)すべてを検査中で、反発係数が基準内のものを早ければ22日から納入したい考えだ。また、毛糸など品質管理を強化し、基準に適合したボールを新たに製造。5月初旬には安定供給が可能になるため、NPBと相談の上、一斉に差し替えを実施する。

 3月29日の公式戦使用球の反発係数が、アグリーメントで定められた上限の0.4234を超える0.426(6球場の平均値)だったという驚きの数字をNPBが公表してから5日、ミズノでは社内に対策本部を立ち上げ、内部調査を進めてきた。

 昨年、統一球の仕様変更が問題になった際には、ボールの中心となるゴム芯の材質を変え、反発係数を調整していたことが明らかになった。今回は調査の結果、ゴム芯や牛革などの材料そのものや接着剤などに変更点はなく、製造工程にも変わりはなかった。

 ただし、牛革を貼る前の状態でボールの硬さを調べたところ、昨年末から今年初頭に製造されたものは品質管理の目標値を上回っているものが多いことが判明した。硬いボールは反発係数も高くなる傾向があるため、ミズノでは続いてゴム芯に巻く毛糸の巻き方、巻き量を調査。すると、同時期に製造されたボールの毛糸は、含水率が品質管理の目標値(10〜12%が許容範囲)を下回っていたものが多く使用されていた。

 含水率が低いと毛糸は軽くなるため、ボールの重量を一定にするには多くの糸が必要になる。ミズノによれば、含水率が1%下がると、約1メートル、毛糸の使用量が増えるという。その上でボールの外周の大きさを基準内に合わせるため、糸をきつく巻きつけることになる。そのため、ボールが硬くなり、反発係数が高まったというのがミズノの見立てだ。

 ミズノでは、これまでもボールの硬さや、毛糸の含水率のデータをとり、管理していた。しかし、「硬さが変わると反発係数が変わるという関係は理解していたが、含水率との関係までは分からなかった」と、含水率の目標値から外れた毛糸もそのまま使用してボールを製造していた。製造工場がある中国・上海からも毛糸の含水率が変化しているといった報告は上がっておらず、「ボールはサイズと重量で管理していた。最終的にボールの性能は反発係数で判断していた」と材料の品質まではチェックしていなかった。

 毛糸は冬場になると乾燥度合いが高くなるため、含水率が下がる傾向にある。そのためミズノでは温度と湿度を管理した部屋に材料を保管していた。保管方法に関しては従来と変わっておらず、なぜ今回、目標値を下回ったかは「工場で再度、厳密に調査したい」と現時点での原因解明には至らなかった。
(写真:奥が毛糸を巻いた状態。その後、ポリエステル糸を巻き<手前>、牛革で包む)

 とはいえ、ボールの品質が変わっていても完成品の反発係数を調べれば、基準を満たしているかどうかは判定できる。ミズノではボールを製造する上海工場と、岐阜県養老町の在庫保管場所に測定機械を設置。抜き取り検査を実施して基準内にボールが収まっているかどうかを管理してきた。測定機器はNPBが調査を委託している日本車両検査協会と同じものを使用し、両方の機器の検査結果が合致するかシーズン前とシーズン後に確認も行ってきた。

 ミズノによると、昨年まで両方の機器の結果は合致していたが、この3月、養老町に設置している測定機器と、日本車両検査協会の機器で差異が生じていることが分かった。しかし、その際は両方とも反発係数の基準内に数値が収まっていたことから、特別な対策はとっていなかった。今回、NPBが上限オーバーと公表したボールと同時期に製造されたものをミズノが調査した結果は0.416、0.418と規定範囲内。昨年の統一球の平均(0.416)から若干、数値が上昇していたが、ミズノでは「製造内での誤差の範囲内」と問題視しておらず、「結果として適合しないものが納品された」かたちになった。

 測定値の結果にズレが生じた一因として、ミズノは昨年3月末に検査機器を三重県阿山町の工場から養老町に移した影響や、検査に使用する鉄板が度重なる使用で変形した可能性をあげる。しかし、昨年の時点では合致していたものが、なぜ今年に入って差異が生じたのか、また、3月29日の使用球をNPBが調査した際には軒並み基準を上回る数値が出たのか、といった原因は「まだつかめていない」と明確にはならなかった。納品後、球団によってボールの保管状況は異なり、その影響を指摘する声もあるが、ミズノでは「1個ずつアルミホイルでくるんでおり、(性能に)大きな変化が出るとは考えられない」との見解を示した。

 今回の統一球騒動における最大の問題点は、現段階でも基準違反のボールが使用され続けていることだ。ミズノでは現状、保管している約2万7600個を1球1球検査。それぞれの硬さを調べてグループ分けし、その中からサンプルを抽出して17日に日本車両検査協会で検査する。反発係数が基準を満たしたサンプルのグループに属するボールを適合品として納品する方法で当面は対応する。

 加えて上海工場では一両日中に、含水率が目標値に収まっている毛糸のみを使用したボールの製造を開始。同工場では1日200ダースの製造が可能で、これは全公式戦で使用する3日分に相当する量という。ミズノでは新しく製造するボールから、自社検査のみならず、日本車両検査協会での検査を経て問題ないと判断したボールのみを納品する方法をNPBに提案しており、現在使用しているボールと交ざらないよう、箱に表示をつけるといった対策をとる意向だ。

 ボールがなければ野球という競技は成り立たない。ボールの質が違えば、結果にも影響が出る。特に結果がすべてのプロ野球では、ひとつのボールが選手の人生をも左右する。昨年から続く統一球を巡るゴタゴタでは、NPBもミズノも、この認識が薄かったと言わざるを得ない。数値を調べるまでもなく、材料の品質が変わればボールの質も異なってくると考えるのが一般的だろう。毛糸の含水率のデータをとっておきながら、目標値から外れたものも使用していたのでは、ものづくりとしては杜撰だ。またNPBによる検査は年数回。基本的にはミズノに管理を一任しており、チェック体制が甘すぎた。

「我々としては、いかに早く動けるかが重要になってくる。我々が期待されていることに、しっかり応えられるように努力してまいりたい」
 水野社長はそう迅速な対応に乗り出す決意を示したが、現時点では残念ながら選手やファンから“期待”されている状況とは言えないだろう。今は一刻も早く、NPBとともに対策を実行に移し、ボールではなく、グラウンドのプレーに注目が集まる環境を整えてほしい。
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