(写真:創部4年で2連覇。秀明水球クラブも合わせれば3度目の優勝)

 第94回日本選手権水泳競技大会水球競技最終日が東京辰巳国際水泳場で行われた。女子決勝は秀明大学が日体クラブを13-8で下し、2連覇を達成した。同3位決定戦は秀明水球クラブがブルボンウォーターポロクラブ柏崎(ブルボンKZ)にペナルティーシュートアウト(PSO)の末に勝利。秀明水球クラブは秀明大としてエントリーしていない同大水球部員を中心に構成されている。秀明大勢はいずれも表彰台に上がった。男子はブルボンKZが6年ぶり2度目の優勝。準優勝はKingfisher74、3位は日本体育大学だった。

 

 創部4年目の秀明大。1期生にとっては大学最後の日本選手権を制し、有終の美を飾った。同大としては2連覇。日本選手権には秀明大のメンバーが秀明水球クラブとしても4年連続で出場しており、今回の主力選手にとっては実質の3連覇である。

 

(写真:試合開始直前の表情は明るく、良い緊張感で決勝を迎えられた)

 一足先に終えた3位決定戦では秀明水球クラブが接戦を制した。昨年、秀明大は優勝したが秀明水球クラブは4位で、ダブル表彰台を逃した。前日の試合後に鈴木琴莉(4年)は「学生最後の試合。どちらも最終日勝って終わりたい」と語っていた。それだけに「決勝の前に良い試合をしてくれたので、“何としても良い試合で終わろう”と話しました」と気合いも乗った状態だったという。

 

(写真:今大会1試合平均7.67失点と安定した守備を見せた渡部)

 初戦、準決勝と試合の入り方が課題だった。決勝は日体クラブを相手に第1ピリオドから主導権を握った。1分20秒に稲場朱里(3年)のゴールで先制。寺方千晶(2年)、山本実乃里(3年)が得点を加えるなど5点を奪う。守ってはGK渡部歩美(4年)を中心に失点を1に抑えた。加藤英雄監督は「このピリオドの出来が良かった。ピンチもあったけどGK中心によくセーブした」と評価した。

 

(写真:キャプテンの鈴木は肩の故障を押しての出場。攻撃を牽引した)

「フレッシュな時に付けた差は大きい。その後の余裕が違います」と指揮官。4点の貯金が与えたアドバンテージは少なくない。第2ピリオドは互いに3点を奪う展開で、前半戦を終えた。後半に入ってからは岩野夏帆が活躍。第3ピリオド開始早々に、坂上千明(4年)のパスからゴールを奪った。渡部のパスから抜け出してGKと1対1の場面でも冷静に決めた。岩野は終盤に山本のゴールもアシストするなど、点差を広げた第3ピリオドの立役者となった。

 

 秀明大は第4ピリオド、日体クラブの反撃を3点に抑えた。最後まで危なげなく試合を進め、5点差で逃げ切った。大会連覇について加藤監督は「簡単ではなかったです」と振り返る。日本代表の活動やケガでチームを離れる選手もいた。

「チーム全員揃っての練習もなかなかできなかった。そこをどう下級生とミックスさせていくかを試行錯誤しました。その中で選手が何をやるべきか分かってきて、ある程度自立してきた。ミスをしても選手はすぐ修正してくれた」

 

(写真:3試合で8得点を挙げ、優勝に貢献した岩野)

 選手の成長を実感する加藤監督。チーム最多の5得点を挙げた稲場、それに次ぐ3得点の山本は日本代表である。寺方、岩野という下級生の活躍も目立った。中でも岩野に対して加藤監督は「彼女がいなかったら今大会の優勝はない」と称えた。「日本人離れしたシュート力を持っている」と評価する将来のエース候補の決定力は光った。

 

 指揮官は続けて好セーブを連発したGKの渡部のプレーも「頭の良い子なので、非常に安定していた」と褒めた。渡部は昨年の日本選手権を秀明水球クラブの一員として出場した。表彰台に上がれず、悔しい思いをした1人だ。「今回はしっかりメダルが獲れて、チームの勝利に貢献できて良かったです」。準決勝も好守が目立ったが、決勝ではロングパスでチャンスをつくり、攻守両面での活躍である。殊勲のヒロインは「今日が今シーズンベスト。一番良い動きができました」と胸を張った。

 

(写真:表彰式終了後、加藤監督の下に集まる秀明大の選手たち)

 1期生は卒業するが、今後も秀明大で練習を積むという。大会には秀明水球クラブとして出場する。「まだまだ付き合いは続く。選手寿命も延ばしていきたいです」と加藤監督。秀明大は日本女子水球界をリードする存在として、その歩みを止めるつもりはない。

 

(文・写真/杉浦泰介)

 

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