四国アイランドリーグplus年間総合優勝の香川オリーブガイナーズから3人のタイトルホルダーが生まれた。投手部門は原田宥希(最優秀防御率、最多セーブ)、秀伍(最多勝利、最多奪三振)、打者部門は妹尾克哉(首位打者)。今回は入団2年目で首位打者に輝いた妹尾に話を聞いた。ルーキーイヤーを終えて取り組んだ昨オフのトレーニングと打撃改造のポイントとは?

 

 先輩選手とのパワー差

 昨年、香川に入団して最初に驚いたのは先輩選手との体力差でした。こっちは高卒1年目、向こうは20歳を越えている。その選手たちと比べると自分の体力、パワーのなさを痛感しました。高校時代、甲子園こそ行けませんでしたが、結構、自信を持ってアイランドリーグに入ったのに、先輩との差が歴然としていたのがショックでしたね。

 

 それで昨オフはウエイトトレーニングを重点的に行い、パワーアップを図りました。結果、体重はキープしたまま、13~14%だった体脂肪率がひと桁になりました。

 

 トレーニングと同時に打撃改造にも着手して、西田真二監督の「大谷翔平もメジャーで足の上げ方を小さくした。試してみてはどうか」とのアドバイスで右足の上げ方を小さくしました。もちろんフォーム改造の効果もありましたが、それもこれもすべては筋力増加、パワーアップしたことの恩恵だと思っています。

 

 シーズンに入ってから結果が出ないときもありましたが、それでも監督に継続して起用してもらって、そこで経験を得られたのも大きかった。体が強くなったことで腰の故障の心配もなく、シーズンを通してさらに成長できたと思っています。

 

 打撃とともに今年は守備も課題として取り組みました。今季、二遊間でコンビを組んだペドロ・シリアコ(元レッドソックスなど)からもアドバイスをもらいました。彼が言うには「捕り方の形を気にしすぎて打球に入るタイミングがとれていない。それでボールとケンカしている」と。リズムのいい音楽をかけながらノックを受けたりして、打球とタイミングを合わせる練習を結構しました。守備に関しても大きく成長したと感じています。

 

 走攻守で自分のアピールポイントはどこかと聞かれたときには、「全部です!」と答えるようにしています。本当にすべて自信があるんですけど、中でも一番は足ですね。今季、調子が悪くなかなかヒットが出ないときにはセーフティーバントを決めて打率を稼いだこともあるので、足でとった首位打者、と言ってもいいかもしれません。

 

 小学生のころから野球をしていて、中学3年生あたりから「プロ野球選手になる」という夢が、はっきりとした目標に変わりました。もちろん、今もそれは変わりません。

 

 冷静に打てた人生初のサヨナラ打

 高3で進路を考えていたとき、大学から声をかけてもらって、そこの練習にも参加しました。でも、NPBを目指す上で「何か違うな」と感じ、それでアイランドリーグに進みました。大学に入ったらドラフトにかかるのは4年後になる。アイランドリーグなら1年目からチャンスがある。それが魅力でしたね。

 

 身近でNPBに進んだ存在として、地元・兵庫の同級生・才木浩人(阪神)がいます。彼は須磨翔風高で当時から体が大きく(現在は身長189センチ)、目立つ存在でした。でも、ボール自体はそんなに「すごい」とは感じなかったんですが、それが今、彼は阪神で1軍でも登板しています。プロ入り後に見たとき、体の大きさはそのままですが、なんかガッチリしていて「阪神に入って、すごい練習をしているんやろうな」というのが伝わってきました。身近な人物がそうやってNPBで成功しつつあるのは、すごく刺激になります。誰にも負けたくないと思っているので、僕もNPBへ進み、1軍で活躍する選手になりたいですね。

 

 6月の北海道日本ハム、千葉ロッテの2軍との交流戦では、1試合3打点をマークする活躍ができました。対戦したピッチャーはコントロールはまあまあでしたが、やはり球の勢いや強さは独立リーグの選手より上でしたね。決して満足できるものではありませんでしたが、少しでも結果が残せて良かったです。

 

 2年目の今季、NPBのスカウトがグラウンドに来ているのはちょいちょい見ています。でも、意識してしまうとダメなので、スカウトがいてもいなくてもいつもどおりのプレーを心掛けました。平常心ですね。

 

 そういえば、愛媛とのチャンピオンシップで人生初のサヨナラヒットを打ちましたが、あのときも平常心を意識して打席に入ったんですよ。9回裏、満塁、一打サヨナラ--。高校時代にこれと同じシチュエーションがあり、そのときはミスショットをしてセカンドフライに終わりました。チャンピオンシップで打席に向かうとき「あ、あのときと同じや」と思い出して、それで「絶対に決める!」という気負いは封じ込めました。いつもどおりセンター返しを意識して、冷静な状態で打席に立つことができ、2年越しのリベンジでしたね。

 

 香川で2年間プレーして、自分でも大きく成長したと思っています。自分なりにひたむきに野球に取り組んできたので、この後、NPBのドラフトに関してはとにかく待つのみです。応援してくださったファンや各スポンサーの皆さんにいい報告をしたいですね。

 

<妹尾克哉(せのお・かつや)プロフィール>
1998年11月18日、兵庫県出身。小学2年で野球を始め、最初のポジションは城島健司らに憧れてキャッチャー。中学時代はヤングリーグに所属し、高校は神戸国際大学附属高に進学。1年夏に同校が甲子園初出場した際にベンチ入りはならなかったが、俊足巧打の内野手として徐々に頭角を現し、2年春は近畿大会優勝を果たす。3年夏は再びマスクを被り、県大会準々決勝で明石商に敗れて甲子園出場は果たせず。2017年、高校卒業後、四国アイランドリーグplus香川に入団。1年目は腰の故障もあり打率2割2分4厘に終わったが、今季は打撃改造の効果もあり、打率3割5分6厘で首位打者に輝いた。愛媛とのチャンピオンシップでもサヨナラ安打を放つなど活躍した。右投左打。身長178センチ、体重76キロ。


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