広島カープがリーグ3連覇を達成した。セ・リーグにおいて巨人以外でリーグ3連覇を達成したのは広島が初めてである。

 

 

 プロ野球がセ・リーグとパ・リーグの2リーグに分立したのは1950年。自他ともに認める“球界の盟主”巨人は9連覇(1965~73年)を1度、5連覇(55~59年)を1度、3連覇を3度(51~53年、2007~09年、12年~14年)、2連覇を2度(1976~77年、89~90年)達成している。

 

 優勝回数は36回。優勝確率は実に5割2分2厘だ。

 

 では他のチームはどうか。冒頭でも少し触れたように、今回、広島が3連覇するまでは、最高でも2連覇止まり。広島(79~80年)、東京ヤクルト(92~93年)、中日(2010~11年)の3球団が連続してリーグを制したが、3連覇はいずれも巨人によって阻止された。そこに“球界の盟主”の意地を見て取ることができる。

 

 それがどうだ。今回、巨人は抵抗らしい抵抗も見せずに、やすやすと広島の独走を許してしまった。

 

 今季、広島との対戦成績は、7勝17敗1分け。敵地マツダスタジアムにおいては2シーズンにまたがって13連敗を喫した。

 

 交流戦後の広島―巨人3連戦前。“ミスター赤ヘル”と呼ばれた山本浩二は、こう嘆いたものだ。

 

「もう少し巨人に頑張ってもらわないとペナントレースの灯が消えてしまうよ」

 

 かつて巨人が、敵のOBからここまで同情されたことがあっただろうか。案の定、3タテをくらった。それを受け、V9巨人の某OBは寂しそうに、こうつぶやいた。

 

「広島が強いというよりも、他の5球団が弱過ぎる。特に巨人は目の色変えて広島を倒しにいかなければならないのに、負けても悲壮感が見られない。正力松太郎さんが草葉の陰で泣いているよ」

 

“プロ野球の父”と呼ばれる正力松太郎は巨人軍の創立者でもある。

 

 正力の遺訓は次の3つ。

<巨人軍は常に紳士たれ

 巨人軍は常に強くあれ

 巨人軍はアメリカ野球に追いつけ、そして追い越せ>

 

 2つ目の「常に強くあれ」は、いったい、どこへ行ってしまったのだろう。

 

 古くは別所毅彦を巡る引き抜き騒動、江川卓の“空白の一日”事件など、チーム強化のためなら、なりふり構わないところが巨人にはあった。随分、世間から批判を浴びたものだが、逆に言えば、それだけ必死だったということだ。

 

 ヒール・ジャイアンツ。それも今となっては懐かしい。

 

<この原稿は2018年10月19日号『漫画ゴラク』を一部再構成したものです>

 


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