強豪ウルグアイに勝った夜。

 誇っていい。親善試合とはいえ、ホームとはいえ、いつも本気モードで戦ってくれる南米の強豪との打ち合いを制したのだから。試合後も審判団に詰め寄って、悔しさをにじませるエディンソン・カバーニを見ても、この勝利がいかに大きいかが理解できる。

 

 確かに2ゴールを挙げた南野拓実、代表初ゴールを挙げた堂安律、そして前線で体を張った抜群のキープ力とともに相手の脅威であり続けた大迫勇也のパフォーマンスも素晴らしかった。だが「誰が一番、目を引いたのか」と問われたら、背番号10の中島翔哉を挙げたい。それほどこの日のインパクトは大きかった。

 

 まず南野が先制点を決めた前半10分のシーン。

 中島は対峙する相手をフェイントでかわして、ペナルティーエリア内に向かう南野のタイミングに合わせてドンピシャのパスを出している。

 

 このレベルの相手になると、いかに個の勝負で相手を上回れるかがカギを握る。対面する相手を揺さぶって南野の動き出しを呼び込み、そしてパスを受け取った背番号9が絶妙なトラップからこれまた相手を揺さぶってゴールに至っている。「個」と「組織」のマッチングが、ゴールショーの口火を切ったのだった。

 

 中島は「組織」を頭に入れながら、「個」の勝負に挑み続けた。サイドに張るだけではなく、中に寄ったポジショニングでボールを受けたら第一選択は、常にゴールにあった。

 

 後半の立ち上がりは、ウルグアイがペースをつかみかけた。だが中島はそれに抗うように、積極的に仕掛けて4分間のうちに3本のシュートを浴びせた。それもすべて枠内。味方のミスでカバーニに同点ゴールを奪われたが、その2分後に堂安のゴールが生まれたのも中島の積極性がチームを前に向かせたからではないだろうか。

 

 そして何よりも中島は、楽しそうにプレーしていた。

 コーナーキックに向かう際にリフティングして場内を沸かせたり、左サイドで“またぎフェイント”からクロスを送ったり、終盤には絶妙なターンで前を向いたり……観る者を魅了し、相手を翻ろうした。

 

 FC東京時代に彼をインタビューしたことがある。

 印象に残っている言葉を紹介したい。

「どんな舞台でも、どんな強い相手でも楽しんで自分の思い描くプレーができる選手になりたいですね。そしてチームを勝たせたい。たとえリオデジャネイロ五輪の決勝でブラジルとやったとしても、いつもどおりやれるように。そしてJ1であってもJ3であっても、一番目立つ選手になりたい。そのためにはドリブルでもパスでも、毎試合違いを出していかなきゃいけないし、試合はもちろん練習でも毎日目立たなきゃいけないと思っています」

 

 FC東京でもポルティモネンセでも、五輪代表でもA代表でも。

 相手がどこであろうとも、自分が思い描くプレーを。

 

 サッカーを楽しもうとする、強いポリシー。

「僕は楽しむためにサッカーをやっているんで。もっと練習したいし、もっとうまくなりたいんです」

 

 あの日の中島と、この日の中島の姿勢は何も変わっていない。

 ワクワクさせる背番号10。

 彼が率先して楽しんでいたからこそ、この日の日本代表も楽しんでプレーしていたように見えたのかもしれない。


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