27日、YBCルヴァンカップ決勝の湘南ベルマーレ対横浜F・マリノスの一戦が埼玉スタジアムで行われた。湘南が1対0で横浜FMに勝利した。試合は前半36分にMF杉岡大暉のミドルシュートで湘南が先制。この1点を守り切り、湘南がカップ戦初優勝を果たした。

 

 大会MVPは杉岡が獲得(埼玉スタジアム)

湘南ベルマーレ 1-0横浜F・マリノス

【得点】

[湘] 杉岡大暉(36分)

 

 湘南は勝てばカップ戦初制覇。タイトルは平塚時代の1994年に獲得した天皇杯以来となる。大一番の一戦でキャプテンマークを巻いたのは今季、浦和レッズから移加入したMF梅崎司だった。

 

 開始早々、MF岡本拓也が右足でシュートを見舞う。タイトル獲得経験者が少ない湘南だが、立ち上がりから相手を圧倒した。4分後にはMF秋野央樹が得意の左足でミドルを放ち、22分にはFW石川俊輝が右サイドから鋭いクロスを供給するが、わずかにゴール前のFW山崎凌吾に合わない。

 

 守っては横浜FMを相手に球際でことごとく競り勝ち、試合のペースを握らせなかった。すると36分。U-21日本代表の杉岡が精彩を放つ。こぼれ球を拾った杉岡がペナルティーエリア手前で迷うことなく左足を一閃。鋭いミドルシュートがゴール右に突き刺さり、湘南が先制した。

 

 湘南が1点リードして試合を折り返す。曺貴裁監督は「ラインコントロールを欠かさずに、常にコンパクトに保つこと」「お互いを信じ合って、我々らしく戦うこと」「残り45分、楽しもう」と指示を出し、選手をピッチに送り出した。

 

 後半開始から2分、梅崎が左サイドをドリブルで突破し、左足でシュートを放つが惜しくもゴール右に逸れる。15分には岡本が右サイドからカットインして左足を振り抜くがゴール左に外れた。追加点は奪うには至らないが、後半もペースを掌握したのは湘南だった。

 

 時計の針が進むにつれて、湘南サポーターの声援が大きくなり、選手を鼓舞する。ベンチの選手たちも懸命に指示を送る。ピッチのイレブンは懸命にそれに応えた。

 

 試合終盤には横浜FMが前線に圧力をかけ、防戦一方となったが、最後まで体を張りフリーでシュートを打たせなかった。試合終了の笛が鳴ると、選手、スタッフが熱い抱擁を交わした。歓喜の渦がピッチのあちこちにできていた。

 

 試合後、MVPを獲得した杉岡は先制点の場面をこう振り返った。

「自分でもびっくりしました。1回、思い切ったプレーをしておきたかったので、打ったら良いコースに行ってくれた。相手は斜めの飛び出しに弱いという分析結果を事前に聞いたいた。こぼれたボールがたまたま来ただけですが、良いところで、ボールを持てました」

 

 続いてプロ生活で初のタイトル獲得に「こんなにも嬉しいのか」と語った後に、表情を引き締め直してこう続けた。

 

「しっかり切りかえてチーム一丸となって戦っていけたら、絶対にJ1に残留できる力はあると思います。それを信じてやっていきます」

 

 現在、湘南はリーグ戦では勝ち点36の13位。降格プレーオフ16位のサガン鳥栖との勝ち点差はわずかに3ポイントしかない。今回の貴重な成功体験をどうリーグ戦に繋げるか。今日の素晴らしいゲームを展開したクラブが降格となっては残念極まりない。湘南の選手たちは、喜びもつかの間、すでに気持ちはリーグ戦に切りかえている。カップ戦が終わり、いよいよリーグ戦も終盤。湘南がJ1を面白くするのは火を見るより明らかである。

 

(文/大木雄貴)