国体の好成績弾みに日本リーグへ ~伊予銀行テニス部~
9月、伊予銀行テニス部勢が出場した第73回国民体育大会「福井しあわせ元気国体」(福井国体)は成年男女の部は男子が優勝、女子が3位で幕を閉じた。男子は「愛顔(えがお)つなぐ えひめ国体」(愛媛国体)に続く連覇を達成した。女子は3連覇こそ逃したものの3大会連続で表彰台に上がった。少年男女を含む総合成績で埼玉県に次ぐ2位に貢献した。12月からスタートする日本リーグへ弾みをつけたかたちだ。
まずは福井国体の激闘を振り返えろう。
愛媛の3連覇が成年女子は波形純理と長谷川茉美がエントリー。波形は3大会連続、長谷川は2大会ぶりの国体となった。
今大会は台風24号の影響もあり、テニス競技は大会スケジュールやレギュレーションが変更された。1回戦、2回戦は6ゲームノーアドバンテージ方式、準々決勝以降は8ゲームプロセットノーアドバンテージ方式で行われた。国体は通常8ゲームだが、1、2回戦に限り、試合進行を早めるために短縮した。これまで以上に早い段階で流れを掴まないと、一気に押し切られるリスクが高い。
初戦の相手は大阪府代表。シングルスNo.1の波形は6-3できっちり取ったものの、シングルスNo.2の長谷川は3-6で落としてしまう。それでも2人が組むダブルスは6-3で勝った。実は大会前から波形は本調子ではなかった。長谷川とのダブルス練習もあまり詰めておらず、日下部聡監督も「不安があった」と胸の内を明かした。
悪いなりにも1回戦を突破できたことで、精神的にも落ち着けたのだろう。福島県代表との2回戦は6-2、6-3とシングルスのみで片を付けた。翌日の準々決勝で愛媛は三重県代表に9-8、8-6。波形と長谷川がシングルスで競り勝った。
準決勝は埼玉県代表。昨年のインカレ女王・清水映里、プロ選手の山口芽生を擁する。昨年は決勝で優勝を争った相手でもある。日下部監督の見立てでは「去年より戦力アップしている印象」という難敵だ。波形は向かってくる相手の勢いを最後まで止めることができなかった。「波形も試合の途中でペースを変えたり工夫しましたが、ガンガン攻めてきて、どうしても後手に回ってしまった」と指揮官。4-8で押し切られると、続く長谷川も6-8で敗れた。
3連覇の夢は潰えた。その日の夜ミーティング。日下部監督は「明日は勝って終わろう」と選手たちに声を掛けた。3位決定戦は兵庫県代表と対戦。波形は8-0で相手を圧倒する。長谷川は6-8で敗れたものの、1対1で迎えたダブルスは9-7で接戦をモノにした。序盤リードをしながらも粘る相手が食らいついてきた。それでも逃げ切れたのは「精神面の成長」(日下部監督)があったからだという。成年女子の3位入賞を、指揮官はこう振り返る。
「あそこまでいったら作戦どうこうよりも精神面での勝負。その点で彼女たちが相手より上回っていたのだと思います。終盤の競った展開でも笑顔が見え、決して暗くなることはなかった。常に前を向いて戦えたことが最後の結果に繋がった」
連覇がかかる成年男子は3年連続で片山翔、佐野紘一のコンビとなった。経験豊富で実績十分の2人はダブルスにも自信を持つ。
男子は1日スタートが延びた。ゲーム方式は成年女子と同じ。日下部監督が最初の山場と捉えていたのは1回戦だった。対戦相手の静岡県代表はシード勢以外では一番の難敵である。さらに四国予選では初戦を落としていた。その後の2連勝し、なんとか勝率差で1位通過を果たしたものの、冷や汗をかいた経験があった。まず大会で波に乗るためにも、ひとつのキーポイントだ。
片山と佐野は指揮官の不安を一掃した。片山は6-1、佐野は6-3。ほぼ危なげなく2回戦へとコマを進めた。神奈川県代表との2回戦では揃って6-1で勝利。日下部監督も「自分たちのテニスができていたので、すごく良かった」と称える出来だった。
翌日に迎えた準々決勝は地元福井県代表が相手だ。正真正銘の山場が早くもやってきた。菊池玄吾は愛媛国体の決勝でも戦ったプロ選手。片山とのプロ対決は昨年苦杯を喫した菊池に軍配が上がった。先制を許した愛媛だが、「厳しい戦いなるのは予想していました」(日下部監督)と慌てることはなかった。
佐野が持ち前の粘りのテニスで松村亮太朗を苦しめた。アメリカのケンタッキー大学でプレーする松村は日下部監督が「プロ並みの実力」と認めるほどの実力者である。それでも佐野は序盤から5-0でリードすると、8-2で振り切った。佐野の快勝で息を吹き返した愛媛はダブルスでも8-2で勝利。ベスト4進出が決定した。
「まだまだ他に強いチームも多いので油断はできませんでしたが、ひとつ山を越えたなという感じはあったと思います」と日下部監督。準決勝の岡山県代表戦、決勝の大阪府代表戦はいずれもシングルスのみで勝負を決めたのだ。
佐野は全5試合中シングルス5戦全勝で連覇に貢献。指揮官も手放しで称賛する。
「今回の優勝は佐野のおかげ。本当に褒めてあげたいです」
今シーズン限りで現役引退予定の佐野。おそらく最後となる国体で有終の美を飾ったかたちだ。
日下部体制となって初の国体だった。
「秀島達哉前監督(現顧問)が前回の国体で優勝という最高の形で終わったところから、私が引き継ぎました。私が監督になってから初の国体です。男子は優勝、女子は3位。非常に良かったと思います」
国体を終えた選手たちだが、休む暇もなく10月末から全日本選手権を戦っている。12月からは日本リーグが開幕する。今季からチーム数が増え、各ブロック9チームで争われる。伊予銀行は昨年優勝の三菱電機と同じブルーブロックに入った。試合数は増えるが、1日試合のない日も設けられる。いかにコンディションを調整するかもリーグ戦を戦うカギを握る。
ここまで3年連続で5位。まずは4年ぶりの4強入りが当面の目標だ。全日本選手権を終えれば、11月に松山で合宿を行う。その後は練習試合を組んで、リーグ戦に備える。日下部監督は「最終目標は優勝ですが、まずは5位の壁を破りたい」と語る。監督就任2年目の日本リーグが迫っている。