第141回 ウルグアイ相手に躍動感あるサッカーができたわけ
森保ジャパンは10月に行われたパナマ戦とウルグアイ戦にも勝利し、発足以降未だ負けなしです。特に、強豪のウルグアイには4対3と打ち合いを制しました。この勝利は評価に値しますね。
各チームの選手事情を考慮しながらの招集をしていますが、若い力を全面に出しながらうまく戦っていますね。
前回のコスタリカ戦と違い、今回はロシアワールドカップのレギュラーだった選手を6人呼びました。DFの長友佑都、吉田麻也、酒井宏樹、MFの柴崎岳、原口元気、FWの大迫勇也ですね。この中で大迫が唯一、パナマ戦とウルグアイ戦の両方に出場しました。2列目の中島翔哉、南野拓実、堂安律との連係は興味深かったですね。
2列目の3人があれだけ自由にプレーできたのは大迫の存在が大きかった。彼をターゲットにすることで他の選手が前を向いてプレーできていました。相手を背にしてプレーできる大迫は、自らターンしてシュートも打てる。彼が入ったことで攻撃のバリエーションが増えました。
大迫は体の使い方がうまいですね。僕は現役時代、センターバックでした。ああいうタイプが対戦相手にいたら厄介です。対策とすれば、僕はあまり寄せすぎないようにすると思います。激しく当たろうと思って体を寄せると、僕の体をうまく利用してくるタイプではないでしょうか。近づき過ぎず、離れ過ぎず、手で大迫の体を触れられる距離をうまく保ちたいですね。良い意味での"微妙な距離"というのがあるんです。
ボールホルダーと大迫で2対1の状況をつくる
FWは相手DFの体にうまく体重を預けてポストになったり、ターンしたりするんです。それに寄りかかれば、「相手のDFはここにいるんだ」とわかる。これを微妙な距離を取るとFWは「あれ、後ろにいるはずのDFはどこだ?」となるんです。ただ、いずれにしてもDFからすれば大迫は要注意な選手であることに変わりはない。細かい駆け引きが必要です。
ボールを収めるくらいのプレーはやらせてあげるけど、これ(ターンやシュート)以上はやらせないよ、という割り切りも必要になってきます。
ただ、大迫がポストプレーで落としたところに中島、南野、堂安らにドリブルで仕掛けられて2対1の状況を作られるとDFとしてはすごく困ります。今までの日本は大迫がボールを2列目の選手に落とすと、ボールを受けた選手はサイドにボールを展開することが多かった。
ところが、今の3人は果敢に仕掛けてくる。これは非常に厄介です。ウルグアイDFも困惑したはずですよ。森保ジャパンのサッカーに躍動感があるのは、こういった要因があるのではないでしょうか。
11月にも親善試合が2試合組まれています。今後、もっと良くなるのではないでしょうか。この先の森保ジャパンに期待したいですね。
それと、もう1つ。鹿島アントラーズがアジアチャンピオンズリーグの決勝に初めて進出しました。ジーコがテクニカルディレクターに就任してから、現場にピリッとしたいい雰囲気が漂っています。先日、ジーコと顔を合わせる機会がありました。「アントラーズにとって記念すべき日を迎えるために頑張らないと」と言っていました。熱い想いを持って、決戦に臨んでくれるでしょう。
●大野俊三(おおの・しゅんぞう)
<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。
*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。