10日、J1の第32節最終日にセレッソ大阪対川崎フロンターレの一戦がヤンマースタジアムで行われた。首位(勝ち点63)の川崎Fは1対2で敗れた。だが2位のサンフレッチェ広島(勝ち点56)が0対1で敗れたため、残り2節で逆転が不可能となり川崎FがJリーグ連覇を達成した。

 

 知念、執念でPK獲得(ヤンマースタジアム)

セレッソ大阪 2-1 川崎フロンターレ

[セ] 杉本健勇(50分)、山村和也(90+4分)

[川] 家長昭博(90分)

 

 川崎Fは勝利すれば文句なしの優勝、引き分け以下でも2位の広島の結果次第では連覇が達成できる好条件だった。これまでワントップを務めてきた主将のFW小林悠が3日の柏レイソル戦で左眼窩底を骨折。戦線離脱を余儀なくされた。ワントップの位置にはMF阿部浩之が入った。

 

 川崎Fは敵陣でボールをキープするものの、ゴールマウスをこじ開けることができずに試合を折り返した。後半に入ると10分にC大阪のFW杉本健勇に先制点を奪われた。この後も果敢に相手陣内でボールを保持するが、全員守備のC大阪ゴールを破ることはできなかった。

 

 それでも、後半44分に途中からピッチに立ったFW知念慶がPKを獲得した。これをMF家長昭博が右隅に決めて同点に追いつく。ところが試合終了間際、川崎FはMF福満隆貴に右サイドを崩されて、ゴール前にクロスを入れられた。このボールをMF山村和也にきっちりと決められた。1対2で川崎Fはこの試合に敗れた。他会場の2位・広島も敗れたため両チームの勝ち点は8差のまま。残り2節で広島の逆転優勝の可能性がなくなり、川崎Fのリーグ連覇が決まった。

 

 試合後、川崎Fの鬼木達監督はこう感想を述べた。

「想像していなかった終わり方ですが、1年間戦ってきた結果だと思います。ここまで選手たちはよくやってくれた」

 

 川崎F一筋のMF中村憲剛は「(目の前の一戦に)負けたので悔しい。それでも“優勝”と聞いたので気持ちの整理がつかないが、1年間の積み重ねだと思う」と優勝の感想を述べた。

 

 今季、川崎Fは広島にロケットスタートを切られた。ロシアW杯の中断前の成績は、広島が12勝1分2敗。川崎Fが8勝3分4敗。一時は勝ち点で13ポイントも離された。ところが、中断期間があけると広島の勢いに止まったのに反比例するように川崎Fは白星を積み重ねた。ロシアW杯後の川崎Fの成績は12勝3分2敗。広島は5勝4分8敗だった。

 

 川崎Fが夏場に強かった理由――。それはもともと運動量に依存しないチームだからではないか。31節終了時点での川崎Fの1試合あたりの平均走行距離はJ1最下位の107,383キロ。J1の平均が112,269。約5キロも少ない。今季の戦いで川崎Fが相手より走行距離で上回ったのはわずかに2試合しかない。

 

 それに加え、テクニックの高さを生かしボールを支配したゲームコントロールで相手をバテさせたことが、酷暑だった今季を制した大きな理由なのではないだろう。

 

 運動量の多さに頼らない現代サッカーのアンチテーゼともいえる川崎Fの連覇は日本サッカー界に一石を投じたといってもいいだろう。

 

(文/大木雄貴)