(写真:昨年は名古屋での決勝トーナメントを制したビックカメラ高崎)

 第51回日本女子ソフトボールリーグは11月17日、リーグ戦上位4チームによる決勝トーナメントがスタートする。2年ぶりの王座奪還を目指すトヨタ自動車レッドテリアーズ、連覇を狙うビックカメラ高崎BEE QUEEN、2年連続準優勝の太陽誘電ソルフィーユ、2007年以来の優勝がかかる豊田自動織機シャイニングベガが東京・神宮球場を舞台に覇を競う。

 

 決勝トーナメントは例年通りページシステム方式を採用する。17日の第1試合で1位のトヨタ自動車と2位のビックカメラ高崎が対戦し、勝者は決勝進出が決まる。敗者は3位決定戦に回り、第2試合の太陽誘電と豊田自動織機の勝者と対戦する。優勝のためにはトヨタ自動車とビックカメラ高崎は2勝、太陽誘電と豊田自動織機は3連勝が条件となる。

 

 2強の激突か!?

 

(写真:昨シーズンのプレーオフMVP。エース上野の出来が勝敗を分ける)

 日本リーグは2012年よりトヨタ自動車とビックカメラ高崎(前身のルネサスエレクトロニクス高崎時代も含む)が交互に優勝しており、2強時代が続いている。今シーズンもリーグ戦はトヨタ自動車が20勝2敗、ビックカメラ高崎が19勝3敗と他を圧倒した。両チームは日本代表、元代表を多く揃え、投打のレベルが高い。総得点はトヨタ自動車が22試合で121得点、ビックカメラ高崎が95得点。ともに1試合平均で4、5点取れる破壊力を有している。総失点はトヨタ自動車が38に対し、ビックカメラ高崎は27。強いて言えば攻撃はトヨタ自動車、守りではビックカメラ高崎に分がある。

 

 今シーズン、ビックカメラ高崎とトヨタ自動車の直接対決はリーグ戦2試合、全日本総合選手権準決勝と3度あった。いずれもビックカメラ高崎に軍配が上がっている。決勝トーナメントでは2試合対戦する可能性もある。最後に笑うのは2年連続12度目の優勝となるビックカメラ高崎か、はたまた節目の10度目の制覇を狙うトヨタ自動車か。

 

 2強には共通点が多い。まずは世界に誇るエースを擁する点だ。トヨタ自動車はアメリカ代表のモニカ・アボット、ビックカメラ高崎は日本代表の上野由岐子だ。リーグ戦の成績も2人は群を抜いている。アボットは12勝無敗。防御率0.23と驚異的な数字を残した。奪三振もダントツの143個だ。投手3冠を手にし、シーズンMVPの最有力候補だ。

 

 一方、上野の10勝、防御率0.82はいずれもアボットに次ぐ2位だ。13勝無敗、防御率0.56と大活躍し、MVPを獲得した昨シーズンほどではないにしろ、エースとしての役割を十二分に果たした。「ビックカメラになって2連覇を達成できていないので、チームとしても2連覇を意識しています。勝ちたいのはどこも同じ。強い執念を持って戦いたい」と語っていた。

 

(写真:昨シーズンは首位打者、今シーズンはホームラン王の山本)

 両チーム、4番には日本代表の中軸を担う右の長距離砲が座る。ビックカメラ高崎は山本優だ。日本代表の宇津木麗華監督が「日本の4番として安心して見ていられます」と絶大なる信頼を寄せるスラッガーだ。8月の世界選手権では全11試合に出場し、打率4割3分3厘、6本塁打、17打点と大活躍だった。リーグトップの7本塁打を放ち、通算本塁打でも山田恵里(日立サンディーバ)を抜いて歴代1位に立った。今、波に一番乗っている長距離砲といえよう。

 

 トヨタ自動車は23打点で打点王に輝いた山崎早紀だ。山本に次ぐ6本塁打を記録するなど長打力もある。5盗塁とスピードも併せ持つ。今年、2年ぶりに代表に復帰した。世界選手権、アジア競技大会、JAPAN CUPの国際大会とコンスタントに呼ばれ、3番・レフトの定位置を掴みつつある。

 

 カギ握る日本代表の頭脳

 

 ここで両軍のキープレーヤーを紹介しよう。まずはビックカメラ高崎キャプテンの我妻悠香。“上野の女房役”から日本代表の正妻へと成長した23歳の大型キャッチャーである。

 

(写真:キャプテン、正捕手としてチームを牽引する我妻)

 我妻は入社3年目の15年に正捕手に抜擢された。172cmの長身で強肩が武器だ。当時は“上野の女房役”とのイメージが強かったが、今では日本代表で上野以外の投手が登板する時もスタメンマスクを任されている。宇津木監督は「2020年の時に上野をはじめ他のピッチャーがいかに失点せずに投げられるか。彼女の配球に懸かっています」と我妻を育てる方針だ。

 

 フィールド上の監督とも言われるキャッチャー。チーム全体をまとめるリーダーシップも必要とされる。我妻は昨シーズンからチームのキャプテンを務めている。昨シーズンのビックカメラ高崎の優勝は彼女の成長なくしてはありえなかった。岩渕有美監督、上野ともに我妻の成長を認めていた。

 

 我妻自身もキャプテンとして1シーズン戦い抜いたことで自信を得たようだ。

「どんな試合状況になっても、自分の調子が悪くても、それを持ち込まなかった。みんなから見られている意識を持って、常に同じ気持ちでグラウンドに立てたことがすごく良かった部分だと思います。例えば自分のバッティングがダメな時も、相手に1点を先制された場面でも、次にしっかりと切り替えることができた。それはチームへの声掛けだったり、しっかり試合をつくっていくという部分で慌てることがなくなったかなと……」

 

(写真:我妻のリード面での成長は日本代表・宇津木監督も評価している)

 そんな我妻が駆け引きの面白さ、怖さを知ったのは後半戦からだという。彼女が自身の配球を改めるきっかけとなったのが、昨年9月にトヨタ自動車と対戦した全日本総合選手権大会準々決勝である。

 

 被安打2と好投を続けていた上野が6回裏に同点打を浴びた。打たれた相手は日本代表の長﨑望未。この時、“ベストピッチであれば打たれない”とばかりに、我妻の配球はアウトコース一辺倒になっていた。彼女からすれば自信を持って要求したボールだった。しかし単調なリードは相手に読まれ、レフトオーバーのツーベースで追いつかれた。この一打をきっかけに上野のリズムは乱れ、逆転を許してしまった。結局、ビックカメラ高崎は1対2で敗れてしまう。

「この一打が自分にヒントを与えてくれました。結局、同じ配球ばかりじゃ通用しない」

 

 この敗戦は我妻に大きな教訓をもたらせした。単調な配球を改め、リードの引き出しを増やした。それによって投手陣も安定感を増した。その後の7試合位ではわずか5点しかとられなかった。我妻の好リードが光った。決勝トーナメントではリーグ最多得点のトヨタ自動車打線を封じることができるのか。

 

 “持っている”スラッガー

 

(写真:巧みなバットコントールで打球を運ぶ長﨑)

 トヨタ自動車からは“天才打者”と呼ばれる26歳の長﨑を挙げたい。就任2年目の中西あかね監督が「チームの中心になってほしい」と大きな期待を寄せている世代のひとりだ。92年4月から93年3月生まれのこの世代にはキャプテンの古澤春菜を筆頭に、首位打者の塚本智名、打率2位の鈴木鮎美らがいる。中でも早くから頭角を現したのが長﨑である。

 

 11年に入団した長﨑は1年目、日本リーグでいきなり本塁打王、打点王、ベストナイン、新人賞に輝いた。新人での4冠は山田以来の快挙だった。その後もコンスタントに結果を残し、名門トヨタ自動車の主力として活躍している。彼女のキャリアハイは14年の決勝トーナメント。ルネサスエレクトロニクス高崎(現ビックカメラ高崎)との決勝戦で貴重な先制弾を放ち、MVPを手にしたのだ。

 

 MVP弾を振り返ろう。決勝は11月、わかさスタジアム京都で行われた。ルネサスエレクトロニクス高崎の先発はエースの上野だった。長﨑の出番は初回、1死三塁の場面で回ってきた。

 

「上野さんは誰よりも良いピッチャーで甘い球が少ない。3打席のうちに必ず1球はチェンジアップがくるので、他の球種は捨ててでも1球に賭けてみようと思いました」

 長﨑の賭けは吉と出た。初球、インコース低めにチェンジアップがきたのだ。「身体で反応した」という鋭いスイングで、ライトポール際へ弾き返した。

 

(写真:2013年にはリーグタイ記録となる28打点で打点王に輝いた)

 当時の監督・福田五志名誉監督は殊勲のヒロインについて、こう語っていた。

「練習通りだったとはいえ、なかなかあの場面で打てるものではない。ましてや相手は上野です。そういうところで力を出せるのはすごい。“持っている”んでしょうね」

 

 誰もが認める長﨑の高度な打撃技術。彼女も「やはり自分が一番長けているものはバッティング。守備も走塁もレベルアップしたいと思っていますが、打撃をそのままにしておくと、他人と同じ選手になってしまう。私にとって、バッティングは妥協できない部分です」と、バットへのこだわりを見せる。

 

 今シーズンは打率3割4分8厘、1本塁打、14打点をマークした。長﨑は、これをどう評価するのか。以前、彼女のソフトボール観について、本人に聞いたことがある。

「ソフトボールは“完璧”がないスポーツです。打つにしても10割は打てないですからね。でも、だからこそ夢や目標はなくなることがないと思っているんです。そういう意味では、ずっと成長させてくれる」。飽くなき向上心が、彼女の今を支えている。「どれだけいい試合をしても、またすぐに次の試合が始まる。浸る時間もなければ、後悔する時間もないんです。反省はしますが、後悔はしないようにしている。後ろを振り向かず、ずっと前を向きながらソフトボールをしています」

 ビックカメラ高崎の我妻がトヨタ自動車の長﨑をどう封じるかにも注目だ。

 

 BS11では今シーズンも日本女子ソフトボールリーグ決勝トーナメントを中継します。11月17日(土)のトヨタ自動車レッドテリアーズvs.ビックカメラ高崎BEE QUEENは20時に放送。翌日の決勝は19時オンエアです。今シーズンの総決算をぜひお楽しみください!

※放送内容は中止、または変更になる可能性がございます。


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