9シーズン目を迎えたbjリーグも、24、25日の「ファイナルズ」をもってフィナーレを迎える。決戦地である有明コロシアムには、各カンファレンスセミファイナルを勝ち抜いてきた4チームが集結する。イースタンカンファレンス(東地区)からは富山グラウジーズ(東地区1位)と秋田ノーザンハピネッツ(同3位)、ウエスタンカンファレンス(西地区)からは琉球ゴールデンキングス(沖縄、西地区1位)と京都ハンナリーズ(同2位)だ。23日には、前日記者会見が行なわれ、大一番を控えた4チームのヘッドコーチ(HC)たちが、チャンピオンリングへの意気込みを語った。
(写真:ファイナルズ進出チームのHCらと河内コミッショナー<中央>)
 MVP城宝擁する富山VS“名将”率いる秋田

 東地区のカンファレンスファイナルは、富山が参入8年目、秋田は同4年目でともに初めて有明に駒を進めた。
 
 富山の特徴は強力日本人選手と外国人選手による破壊力抜群の攻撃だ。中でもガード(G)の城宝匡史は今季、レギュラーシーズン全52試合にスターターで出場。持ち前の高い得点力でリーグ8位の平均17.4得点(日本人選手歴代最高位)の活躍で、チーム初のレギュラーシーズンカンファレンス1位に貢献した。また、日本人選手初のシーズンMVP、2シーズンぶり2度目のベスト5に選出された。彼のドライブ突破は、富山の生命線でもある。

 もちろん、日本人のみならず、ベスト5に選ばれたフォワード(F)アイラ・ブラウン、リバウンドランキングでリーグ2位のセンターフォワード(CF)サム・ウィラードなど、外国人選手の能力もリーグ屈指。ボブ・ナッシュヘッドコーチ(HC)は「誰でも得点がとれる。日本人でも、外国人でもバランスよく成績を残せることが我々の強み」と胸を張る。河内敏光bjリーグコミッショナーも「団結力を感じる」と高評価だ。

 8年目にして初のファイナルズ。経験不足が懸念されるものの、城宝は大阪エヴェッサで優勝を2度経験している。やはり彼が精神的支柱となって、チームを牽引することが、富山が優勝へ近づくためのポイントとなる。

 対する秋田は、浜松・東三河フェニックスを連覇に導いた中村和雄HCが指揮を執る。就任3年目の今季は、指揮官が掲げる攻撃バスケットが浸透し、開幕12連勝。終盤に失速してレギュラーシーズン2位でフィニッシュしたものの、確実にプレイオフを勝ち抜いた。

 秋田のキーマンは、ベスト5、アシスト賞に輝いたポイントガード(PG)富樫勇樹だ。若干20歳ながら絶対的な司令塔としてチームをコントロールする。河内コミッショナーは富樫を「自分で点数がとれ、また周りの選手にボールを配るというPGとして絶妙な能力を備えている」と絶賛した。富樫を中心に、アウトサイドからシューティングガード(SG)田口成浩、F大塚裕士、インサイドではリバウンド王のFルーベン・ボイキンらが脇を固める。どこからでも点を狙える布陣で、対戦相手に襲い掛かる。
(写真:健闘を誓う富山・ナッシュHC<左>秋田・中村HC)

 中村HCは「いいゲームをやれると思う。ファイナルズには普段、バスケットを見ない人も来る。そういう人たちに、bjのバスケはすごいなというものを見せる気持ちで戦いたい」と抱負を述べた。指揮官は秋田出身だけに、地元にチャンピオンリングを持ち帰るという気持ちは強い。秋田から東京に向かう時には、「GO、GO、ハピネッツ」と書いたプラカードを持つ空港の職員に見送られたという。そんな地元のバスケに対する熱を中村HCもしっかりと感じている。
「秋田は異常なところ。僕は負けて秋田に帰ったら、相当の文句を人々から言われます。(富山の)ナッシュHCは、ハワイ出身で負けて帰省しても何も言われないでしょう。だから、(勝利を)譲ってくれればいいのにな、としみじみ思います」

 こう語って報道陣を笑わせた中村HC。しかし、名将の頭には、勝利を奪い取る考えしかないはずだ。3年かけてつくり上げたチームで、3度目のbj制覇なるか。

 挑戦者として臨む元王者・沖縄VS創設5年目で初制覇ねらう京都

 ウエスタンカンファレンスのファイナルでは、4季連続同地区1位の沖縄、3季連続でファイナルズ進出の京都が激突する。

 2度のbj制覇経験がある沖縄は昨季、プレイオフでまさかの敗退を喫し、最終順位は5位に終わった。チーム再建に向け、今季から伊佐勉HCが就任。伊佐HCはチーム創設1年目からアシスタントコーチを務めており、沖縄の長所・短所を知り尽くしている。そんな指揮官が率いたチームは、レギュラーシーズン43勝というリーグ史上最多の勝利数を積み重ねた。勝率は8割2分7厘に上り、京都の浜口炎HCも「リーグで最も安定したチーム」と賛辞を惜しまない。

 快進撃の要因として、伊佐HCがチームの強みであるディフェンスにさらに磨きをかけたことが挙げられる。今季、沖縄のレギュラーシーズンの平均失点は、68.5点。両カンファレンスで唯一、60点台に抑えた。相手に点を与えないことで、試合を通して大崩れしない安定性をもたらした。

 チームには、SGアンソニー・マクヘンリー、Fジェフ・ニュートン、G金城茂之、G小菅直人ら勝ち方を知るベテランが健在。そこにG波里成やG岸本隆一といった若手がうまく融合している。シーズン途中から、昨季、横浜ビー・コルセアーズの日本一を支えたFドゥレイロン・バーンズも加入し、選手層はより厚くなった。

「今年はやっとの思いで有明にたどり着いた。一方、京都は3年連続の有明。我々がチャレンジャーです。当たって砕けないようにがんばりたい」
 伊佐HCは、2季ぶりの決戦へ向けてこう意気込んだ。会場の有明コロシアムには、熱狂的なブースターが数多く駆けつけることが予想される。チーム、ブースターが一体となって昨季の雪辱を目指す。

 一方の京都は3季連続のファイナルズだ。レギュラーシーズンは好不調の波が小さく、確実に白星を稼いで2位。プレイオフではファースト、セカンドラウンドともに最終決定戦にもつれこむ激戦を制した。
(写真:初優勝を狙う京都・浜口HC<左>と就任1年目でファイナルズ出場の沖縄・伊佐HC)


 京都のストロングポイントは、リーグで一番の厚さを誇る選手層だ。ゴールハンターのFデイビッド・パルマー、リバウンド王3回のセンター(C)クリス・ホルム、リーグ屈指の日本人シューターSG岡田優、仙台で活躍したベテランPG日下光……誰が試合に出ても、戦力が下がらない点が、京都の強みである。

 そして、今季は元NBA選手のSG/SFエドウィン・ユービレスも加入した。ダイナミックかつスピーディーなドライブで敵陣を切り裂き、高い身体能力を生かしたディフェンスも得意なオールラウンダーだ。ユービレスのNBA仕込みのプレーに、観客は沸き立ち、相手は脅威を覚える。ユービレスが警戒されれば、他の選手のマークが薄くなる。そのギャップを突く臨機応変な攻撃で得点を狙うのも京都のパターンだ。

「(プレイオフ・セカンドラウンドの)滋賀戦が終わって1週間空いたのがすごくヘルプになった。ケガ人も全員復帰し、いい状態で明日を迎えられると思う」
 こう語る浜口HCからは勝利への自信がうかがえた。一昨季は4位、昨季は3位。今季は2位を飛び越して、チーム創設5年目で初のbj制覇を狙う。

〜2013−2014シーズン ファイナルズ(有明コロシアム)〜

5月24日(土)
<イースタン・カンファレンス ファイナル>(14:10〜)
 富山グラウジーズvs. 秋田ノーザンハピネッツ
<ウエスタン・カンファレンス ファイナル>(18:10〜)
 琉球ゴールデンキングスvs.京都ハンナリーズ

25日(日)
<3位決定戦>(13:10〜)
<ファイナル>(17:10〜)