25日、ベトナムで開催中の女子アジアカップ決勝で、なでしこジャパン(女子日本代表)が女子オーストラリア代表を1対0で下し、大会初優勝を果たした。日本は豪州に押し込まれた序盤をしのぐと、前半28分にDF岩清水梓のゴールで先制。リードして試合を折り返した。後半は、決定機に追加点を奪えなかったものの、守備陣が体を張った守りでリードを死守。日本が14度目の出場で初めてアジアを制した。

 岩清水、優勝導く決勝ヘディング弾!(ホーチミン)
女子日本代表 1−0 女子オーストラリア代表
【得点】
[日本] 岩清水梓(28分)
「本当に欲しいタイトルだった」
 殊勲の岩清水は少し興奮した様子で、優勝の喜びを語った。日本は過去に13度出場し、決勝にも4度進出していたが、優勝には手が届かなかった。“悲願”ともいえるアジア杯を制し、今後はW杯連覇、そしてリオデジャネイロ五輪金メダルという目標に向かう。

 序盤は豪州の攻勢に押し込まれた。前半1分、DF有吉佐織がFWカーにボールを奪われ、シュートに持ち込まれたがゴール上へ外れる。12分には、FWヘイマンに右サイドからのクロスに頭で合わせられたが、GK福元美穂の正面に飛んだ。

 日本は劣勢をしのぐと、徐々にサイドでの攻防を制し、攻撃にかたちができはじめた。15分、FW高瀬愛実がFKのこぼれ球に反応し、オーバーヘッドキック。これはGKに防がれたものの、積極的にゴールを狙う姿勢で豪州に重圧をかけた。

 すると28分、日本に待望の先制点が生まれる。左サイドからのショートコーナーを受けたDF宇津木瑠美が、ファーサイドへクロス。反応した岩清水が頭に当てたボールは、相手選手、そしてクロスバーに当たってゴールラインを越えた。岩清水は準決勝・中国戦の延長決勝ゴールに続く値千金弾となった。

 1点をリードして迎えた後半は、4分、ヘイマンにPA手前から強烈なミドルシュートを打たれた。これは福元がしっかりキャッチしたが、日本は豪州の反撃に耐える時間帯が続いた。
 23分、途中出場のFW菅澤優衣香が右クロスを胸トラップしてから右足で狙うもクロスバーを直撃。追加点のチャンスを逃すと、直後、カーにクロスに飛び込まれて、ゴールネットを揺らされる。しかし、これはオフサイドの判定となり、事なきを得た。

 その後も、豪州の攻勢に押し込まれた日本。だが、守備陣が集中した守りでゴールだけは許さない。34分、左サイドバック・宇津木がドリブル突破を仕掛けてきたゴーリーに粘り強く対応し、体を入れてボールを奪取。44分、今度は右サイドバックの有吉が強引に突破を試みる選手に対し、滑り込みながらクリアした。そのまま3分のアディショナルタイムもしのぎ切り、日本がアジア制覇を達成した。

「チームのメンバーが1人でも欠けていたら優勝できなかった。全員で勝ち取った勝利だと思う」
 主将MF宮間あやは、優勝についてこう感想を述べた。今大会は国際Aマッチデーはないため、海外リーグでプレーする主力選手をすべては招集できなかった。エースFW大儀見優季もグループステージ終了後にチームを離脱していた。しかし、これまで出場機会が少なかった若手選手がそんな苦境を打破した。高瀬は全試合に出場し、得点こそ挙げられなかったものの、体の強さを生かして前線の起点になり続けた。DF川村優理は、本来のボランチではないセンターバックというポジションながら、高い守備力は発揮。コンビを組んだ岩清水も「初めてセンターバックをやったと思うが、頑張ってくれた。自分よりも身体を張ってくれていて頼もしかった」と“相棒”を称えた。

 今回のアジア制覇は、若手のみならず、チーム全体に新たな自信をもたらしたに違いない。それでも、今後、世界と渡り合うためには、チーム力の更なる底上げは欠かせない。宮間は「自分たちは世界一を取っているので、来年に向けてやらなければいけないことは多い」と次を見据えた。勝って兜の緒を締める――なでしこは、慢心せずに高みを目指し続ける。