22日、JリーグはJ1、J2、J3全51クラブの2013年度の経営情報を開示した。12年から施行されたクラブライセンス制度では、3期連続赤字もしくは債務超過となるクラブにはライセンスが交付されない。現在、12年度から2期連続赤字を計上しているクラブは、名古屋グランパス、ヴィッセル神戸、栃木SC、ザスパクサツ群馬、アビスパ福岡。債務超過に陥っているクラブは横浜F・マリノス、サガン鳥栖、大分トリニータ、コンサドーレ札幌、栃木、群馬、FC岐阜、神戸、福岡、ギラヴァンツ北九州、ロアッソ熊本。これら過去2期の状況と14年度の見込み決算を踏まえて、9月末にライセンス審査が行われる。現時点で11クラブがライセンス未交付の可能性があるが、各クラブは財務改善計画の実行段階に入っており、すでに計画を完了したクラブもあるという。ただ、2期連続赤字と債務超過の福岡については、大河正明常務理事は「黒字化の目途は立っているが、債務超過を解消できる確証を持てていない」として、今後もリーグが状況を注視していく考えを示した。
(写真:クラブの個別経営情報について説明を行う大河常務理事)
 福岡は現在、約2800万円の債務超過に陥っている。今後は9月末のライセンス審査までに、いかに問題をクリアできるかが重要だが、大河常務理事は福岡の現状を「まさにいま、(債務超過解消に向けて)明るい材料を見つけようとしている」と表現した。それでも債務超過解消の目途が立たなければ、福岡はクラブライセンスを剥奪され、2015年シーズンはJリーグで戦うことはできない。

 解消に向けては、スポンサーからの増資を得ることが最も現実的といえる。しかし、大河常務理事によると「九州には“七社会”というものがあり、(福岡を)九州電力や九電工がサポートしてきた。しかし、原発問題などの事情もあり、(増資)は厳しい状況になっている」という。
 そこで、リーグが期待しているのは、ユニホームの胸スポンサーの獲得だ。現在、J1、J2で胸スポンサーがついていないのは福岡と東京ヴェルディだけだ。胸スポンサーはいわゆるメインスポンサー。それを確保できれば多額の広告費用獲得を見込める。大河常務理事も「胸にスポンサーが入れば増資などをしなくても何とか(債務超過)をクリアできる域には達していると思う」と語っていた。

 福岡以外のクラブも安心というわけではない。東京Vは純資産が約900万円しかなく、14年度で大幅な赤字を計上すれば債務超過に陥る。東京Vのみならず、純資産の少ないクラブには同様の恐れがある。ライセンス審査は9月末に行われるため、10月以降に今年度末の債務超過が確定した場合は、来季はJ1またはJ2 で戦うが、2016年シーズンのクラブライセンスが交付されない。その際、15年度中に財務状況の改善が実現した場合の16年度のライセンス交付については、大河常務理事曰く「ケースバイケース」。そのような状況にならないように、リーグは財務状況に不安のあるクラブへのヒアリングなどを行って、あくまで9月末までに改善を完了させる姿勢だ。

「ヘトヘトになりながらあちこちへ行きます」

 大河常務理事はこのように笑った。9月末までに残された時間は少ない。各クラブに問われているのはピッチ外のチーム力だ。

(文/写真・鈴木友多)