27日、キリンチャレンジカップ2014が埼玉スタジアム2002で行われ、日本代表がキプロス代表を1対0で下した。日本は序盤からボールを支配したものの、中央を固める相手守備陣を前になかなかチャンスをつくれない。逆にキプロスに速攻を仕掛けられ、ゴール前まで攻め込まれる場面があった。試合が動いたのは前半43分、日本がDF内田篤人のゴールで均衡を破った。後半、日本は何度か攻撃のかたちをつくり出したものの、追加点を奪うことはできなかった。注目のFW大久保嘉人は後半13分から出場。ゴールはとれなかったが、シュートを放つなど積極的な姿勢を見せた。日本は今後、事前合宿地の米国入りし、コスタリカ代表(日本時間3日)、ザンビア代表(同7日)とテストマッチを行う。

  内田、約4か月ぶり実戦でゴール(埼玉)
日本代表 1−0 キプロス代表
【得点】
[日] 内田篤人(43分)
 国内最終戦で2つの明るい材料が見つかった。ひとつは内田、DF吉田麻也、MF長谷部誠ら負傷していた選手が問題なくプレーしたこと。もうひとつは大久保は本番までにチームに融合し得るということだ。

 内田が決めたスタッフへの恩返し弾

 負傷組の中で、特に状態が心配されていたのが内田だ。2月9日に右太ももを痛めて以来、リハビリに努めてきた。内田は約4カ月ぶりの実戦に先発として出場した。

 試合は序盤から日本がボールを支配し、左サイドを中心に攻撃を組み立てた。前半9分、左サイドでボールを持ったMF香川真司が中央へはたき、受けたMF遠藤保仁はPA外からミドルシュート。これはGKの正面を突いた。16分には、DF長友佑都から同じようなパスを受けた香川がPA手前からシュートを狙ったがGKに防がれた。

 内田は守備に追われることが多かったが、何度か長い距離のオーバーラップを敢行。ベンチで見つめるアルベルト・ザッケローニ監督に、順調な回復ぶりを示した。

 すると43分、そんな内田が先制点を奪った。ゴール前でパスがつながり、香川が混戦の中でシュート。こぼれたところを、この位置まで攻め上がっていた内田が詰める。一度はDFにブロックされたものの、再度押し込んだ。

 ゴールした内田は日本ベンチに向かい、仲間から祝福を受けた後、前田弘トレーナー、早川直樹コンディショニングコーチらと抱き合った。
「前田さんと池田(浩)ドクター、早川さんのために、ちょっと(ゴールを)狙っていた。ケガをしてから、ほぼ毎日、どれぐらいの練習をすればいいのか、どれぐらい回復しているのか、(スタッフと)連絡を取り合っていた。(スタッフは)シャルケのクラブハウスにも来てくれて、シャルケのドクターとも会ってくれた。だから僕は安心してリハビリに専念できた。選手がスポットライトを浴びられるのも、あの人たちが時間を削って、選手のためにやってくれているから。(ケガをして)そういうことを学んだ」

 内田は復帰に向けて支えてくれたスタッフへの感謝をゴールという最高のかたちで示した。ザッケローニ監督からは「ケガで離れていた3選手が復帰したが、全員に満足している」との評価を与えられた。「(負傷することを)ビビっても仕方がない。ケガをしても治せばいい。思い切ってプレーすることが大事」と内田。不動の右サイドバックはスタッフと二人三脚で、ブラジルでの活躍を目指す。

 大久保、充実の代表復帰戦

 内田のゴールの次にスタジアムが沸いたのは、後半13分、大久保がピッチ脇へ現れた時だ。背番号13は大歓声を一身に浴び、約2年3カ月ぶりに代表のピッチに立った。

 ポジションはワントップだった。「(ザッケローニ監督から)今まで通りのプレーをやれと入る時に言われた」という大久保は17分、左サイドの香川からパスを受けると、PA手前から右足を一閃。DFに当たり、ゴール上に外れたが、指揮官の要求どおり、積極的にゴールを狙うらしさを見せた。

 大久保の積極的な姿勢に引っ張られたのか、周囲の選手も果敢にゴールを狙う回数が増えた。21分、香川がPA外からミドルシュート。22分には、相手のクリアボールを拾った長谷部が狙い、GKが弾いたところをMF本田圭佑が詰めた。いずれも得点にはつながらなかったものの、各選手がシュートを強く意識していた。

 大久保は流れの中でもチャンスに絡んだ。33分、PA手前でボールを拾うと、前方へ走り込んだ山口へ浮き球のパス。これを山口がヘッドで落とし、本田が左足で合わせた。シュートはGKにセーブされたが、 連動性ある攻撃に、相手守備陣は対応しきれていなかった。やはり、少ないタッチ数でパスをつなぎ、選手が常に動きながらゴールに向かうことが、W杯でも得点を奪えるかどうかのポイントになりそうだ。

「(約2年3カ月ぶりの代表戦で)すごく楽しかった」
 ゴールは奪えなかったものの、大久保の表情は明るかった。相手のDFラインと中盤の間に入り、香川などとポジションチェンジする場面もあった。大久保は「連係はスムーズだったし、チャンスも作れた。もう1点入ればね。でも、前でのつなぎはものすごく良かった」とチームへの融合が順調であることを口にした。

 その中で、チームメイトに“注文”もつけた。それは攻撃に「怖さ」を求める大久保らしい内容だった。
「ボールを奪った時にボランチの選手たちが後ろに下げていた。そこ(中盤の位置で)で取れるということは、向こうのDFラインが崩れているわけで、DFがいてもとりあえず前の選手に預けてくれれば、そこから(香川)真司、岡崎、清武、(本田)圭佑だったりが入ってくるから流れの良い攻撃になる。そこで(ボールを後方に)下げられると、ブロックを組まれる。あそこで1本入るだけで、スピーディーに日本らしいショートカウンターといった攻撃が絶対にできる」

 大久保はW杯メンバーに選出される前に「代表でやる自信は全然ある」と語っていた。では、実際に代表に入ってからの手応えはどうだったのか。
「(自信は)もっと増した。“全然できるわ”って。ゴール前で(見ている人を)ワクワクさせたい」
 残されたテストマッチはあと2試合。周囲とさらに連係を高め、自身2度目の大舞台に臨む。