残留か、降格か。抜け出すか、取り残されるか。ひょっとすると優勝争いよりも劇的で、残酷なドラマが展開されている。当事者に残るのかは、最良か、最悪か、どちらかの結果と記憶しかない。J1かJ2か。来季のカテゴリーを争う戦いに、まあ良かった、ちょっと悪かった――そんな中庸な感情が入る余地はない。

 

 後半51分という時間帯に決勝弾を食らった横浜FCの選手が受けた衝撃は相当なものがあっただろうが、何といっても凄まじかったのは、ほぼ安全圏に逃げ込んだと思われた磐田の暗転ぶりだった。

 

 前半が終了した時点で、瑞穂では湘南が2-0で名古屋をリードしていた。ここが引き分けに終わらない限り残留が決まる磐田にとっては最高の朗報。仮に名古屋が追いつくようなことがあっても、磐田は勝つか引き分けで自動的に残留が決まる。そんな中で生まれた大久保の先制点。磐田からすれば二重の保険をかけたような気分になったはずだ。

 

 そんな中で食らった逆転劇と、瑞穂からの悲報。選手たちの受けた衝撃の大きさは、想像してあまりある。プレーオフまでは1週間あるとはいえ、気持ちを立て直すのは簡単なことではないはず――そう思った。

 

 だが、試合後の名波監督のコメントが見事だった。

「去年までなら3チームが自動降格だった。レギュレーションに助けられたと思って、必死に戦いたい」

 

 厄介、最悪としかいいようのない事態の中に幸運を見いだそうとする姿勢と言葉は、選手たちが衝撃から立ち直り、新たなモチベーションを掻き立てる上で大きな力となるだろう。流れ、勢いは明らかに東京Vの側にあるが、これで勝負はわからなくなった。

 

 ただ、この決戦が磐田ホームでの1試合だけ、というのはちょっと解せない。

 

 日程の調整やスタジアムの手配など、難しい問題があるのは事実にせよ、プレーオフに参加するクラブにとっては存亡にも関わりかねない戦いである。

 

 J2同士のプレーオフが、順位上位チームのホームのみ、というのは、シーズンの順位に意味を持たせるという点からも納得がいくが、最後の一戦に関しては、あまりにもJ1側が優遇されすぎている。ここは平等に、ホーム&アウェーで争わせるのが妥当なのではないか。

 

 プレーオフのレギュレーションについては、もう1つ引っかかるところがある。現行では試合が引き分けに終わった場合、順位上位のクラブが次のラウンドに進むことになっているが、日本の場合、このルールは必ずしも上位のチームにとってメリットとはなりえない。これが守備の文化が浸透したイタリアであればともかく、行けるのに行かずの専守防衛、といったやり方に馴染みのない日本では、却って足かせとなってしまうこともある。上位チームへのアドバンテージは、ホームでの開催権だけでいいのではないか。

 

 プレーオフは、普段サッカーに興味のない層を惹きつける魅力を持っている。勝つか負けるか。そこをいかに際立たせるか。天国と地獄以外の結末は不要だとわたしは思う。

 

<この原稿は18年12月6日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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