ホスト国で優勝候補のブラジル、5大会連続16強入りを果たしているメキシコ、98年フランス大会3位のクロアチア、アフリカの雄・カメルーンと、興味深い顔ぶれが揃ったグループだ。順当にいけば、ブラジルが首位、残り3カ国が決勝トーナメントに進める2位を争う展開になるだろう。

 王国でのW杯開催は50年大会以来2度目。50年大会は決勝でウルグアイに敗れ、そのショックで死亡者が出るなど、『マラカナンの悲劇』として同国サッカー史に刻まれている。そんなブラジルにとって、6度目のW杯制覇は目標ではなく至上命題だ。

 ブラジルの特徴は強烈なまでの「個」だ。攻撃陣の破壊力は今大会屈指。両サイドのFWネイマールとFWフッキはともに高い突破力を誇り、フィニッシュパターンも豊富だ。トップ下のMFオスカルは広い視野を持って彼らにパスを供給し、センターフォワードのFWフレッジは生まれたチャンスを確実にモノにする。守備陣にもDFラインにはチアゴ・シウバ、ダビド・ルイス、マルセロ、ダニエウ・アウベスら世界屈指の個人能力を誇る選手が揃っている。

 この個に秀でたチームを、02年日韓W杯の優勝監督ルイス・フェリペ・スコラーリが束ねる。12年11月に就任した指揮官は、それまで不振(コパ・アメリカでベスト8敗退)を極めていたセレソンを見事に再建。昨年のコンフェデレーションズカップでは10年南アフリカW杯王者・スペインを3対0で下して優勝を果たした。今のブラジルは高い個人技と統制された組織が融合している。パスワークからの崩しあり、カウンターあり、個人での突破あり……「なんでもできる」ブラジルが、A組を首位通過する確率は限りなく高い。

 メキシコは北中米カリブ海予選で苦戦し、大陸間プレーオフを勝ち抜いて、なんとか本大会出場を決めた。それでも、選手構成を見ると国内組と海外組が高いレベルで融合している。海外組ではロンドン五輪金メダルメンバーのMFハビエル・アキーノ、MFジオバニ・ドス・サントス、マンチェスター・ユナイテッド所属のFWハビエル・エルナンデスら有望なタレントを召集。国内組からはバルセロナでも活躍したDFラファエル・マルケス、DFフランシスコ・ロドリゲスら経験豊富なベテランを選出した。パスサッカーをベースに、持ち前のサイド攻撃が機能すれば、6大会連続のベスト16、その先のベスト8進出も見えてくる。ブラジルと同国が比較的近いという地の利も生かしたいところだ。

 クロアチアは2大会ぶりにW杯の舞台に戻ってきた。チームの要はレアル・マドリードの欧州CL制覇に貢献したMFルカ・モドリッチだろう。優れたテクニックを備え、戦術理解度も高い。運動量も豊富で、攻守両面でチームを支える。インテルで日本代表DF長友佑都の同僚であるMFマテオ・コバチッチも高い技術からチャンスを演出する。最前線にはブンデスリーガ得点ランク2位のFWマリオ・マンジュキッチがいる。それだけに、中盤をいかに支配してボールを前線に運べるかが勝利のポイントとなる。開催国ブラジルと当たる初戦で勝ち点を掴みとれるか。

「不屈のライオン」と称されるカメルーンも、過去6度のW杯でグループリーグを突破したのは90年イタリア大会のみ。大会直前になると、チーム内でのゴタゴタが絶えず、空中分解したまま本番に臨むケースが続いている。今回もベテランFWサミュエル・エトーが給与未払いを理由に代表引退を示唆するなど、チームが団結しているとは言い難い。バルセロナ所属のMFアレクサンドル・ソングなど、実力者も名を連ねている。本番までに少しでも強固な組織を築き、10年南アフリカ大会で味わったグループリーグ3連敗という屈辱を晴らせるか。

◎ ブラジル
〇 メキシコ
▲ クロアチア
  カメルーン

(鈴木友多)