「小さい時からの憧れ、夢が最後の決め手だった」(「日刊スポーツ」12月12日付)と、丸佳浩は自らの巨人移籍について語ったそうだ。子供の頃から、東京ドームに野球を見に行っていたという。それを言われては、どうしようもないですね。私なら、小さい頃、父親のバイクに乗せられて旧広島市民球場に通ったので、残留になるけど(笑)。

 それよりなにより、プロは基本的には金額がすべての世界だから、致し方ないということだろう。

 

 さて、今季、夏場に鬼のような活躍をした丸を欠いて、来年はどうなるのだろう。はたして、4連覇できるだろうか。

 

 まず、丸がいようがいまいが、4連覇ということ自体が、きわめて困難である。常識で言えば、確率は低い。ただ、現在のセ・リーグの場合、他チームがさして強力ではないという、カープにとってはきわめて恵まれた条件がある。強いからではなく、他が弱いから可能性はある、ということですな。

 

 でも、大補強の巨人が強いのでは、と言われそうだ。いや、菅野智之先発の試合をなんとかすれば、十分戦える。これまで、西川龍馬や田中広輔が菅野に一発かました試合がありましたね。ああいう戦い方をすればいいのだ。今季の終盤は、あまりに簡単に完封、完投を許した印象がある。

 

 来季、ポイントになるのは、岡田明丈だと思う。日本シリーズでも、第3戦で岡田がど真ん中にストレートを投げてアルフレド・デスパイネに手痛い一発をあびなかったら、勝敗のゆくえはわからなかった。なぜそうなるかと言えば、ストレートをコントロールできていないからである。

 

 岡田が一番良かったのは、去年のオープン戦から前半戦にかけてだ。その頃は、左足をあげてステップして投げに行くとき、両肩の線が水平に保たれていた。本人も、それを好調の理由に挙げていたと記憶する。

 

 しかし、今季は開幕してからずっと、足を上げたとき、左肩が右肩より上にあがっていた。昔で言えば、山口高志のように、と例をあげればわかりやすいだろうか。しかし、今は、ダルビッシュ有であり、大谷翔平の時代である。この肩を水平に保つというポイントで、かなり違ってくると思うのだが。ともあれ、岡田が2桁勝つこと。これがまずは、4連覇のカギだろう。

 

 もうひとり、隠し球をあげておきたい。床田寛樹である。

 2017年のドラフト3位で入った左腕だが、ルーキーイヤーの昨年、開幕はローテーションの一角を担いながら、早々に肘を故障して離脱した。実は、うまく育ったら、クリス・ジョンソンくらいまでなれる素材だと、個人的には評価していた。彼をとったスカウトは天才だ、と言いたいくらいに。

 

 床田が復帰登板を果たしたのは、今年の8月のことである。

 体は故障前よりがっちりしてきたが、さすがにまだ、到底ジョンソンの域とはいえない。しかし、動画を確認するかぎり、登板間隔をあけて使えば、ローテーションに入れる力はある。

 

 故障前は、もっとジョンソンばりの右打者のインコースへのストレートが切れていたような気がするし、まだまだ全開ではないだろう。むしろ、その分、キャンプ以降のさらなる伸びしろに期待できる。彼が2桁勝てば、おのずと優勝も近づいてくるだろう(ついでに言うと、9月15日のウエスタンリーグ福岡ソフトバンク戦で、先発・床田とバッテリーを組んだのは中村奬成である。見る限り、来季は、彼の一軍デビューもあるのではないか)。

 

 もちろん、丸の抜けたセンターをどうするか、という大きな課題がある。誰がやっても、今季の丸ほどの成績には至らないだろう。外野の練習をはじめた西川は確かにおもしろい存在だ。もともと、内野の守備はあまり安心して見ていられないほうだし。センター野間峻祥、ライト鈴木誠也は決まりだろうから、空くのはレフトである。そこでもう一人、隠し球を指名したい。坂倉将吾である。

 

 彼は捕手であり、中村奬成のライバルである。中村を捕手で、坂倉を外野にと言うと、そんなにひいきするなと言われそうだ。

 

 しかし、坂倉の打撃は捨てがたい。何度も言うが、北海道日本ハムの近藤健介をお手本にすればいいのだ。近藤も捕手登録である。

 

 ともあれ、丸が抜けたことで、来季のカープは否応なくかなり様子が変わる。人材を的確に配置し、抜擢しなければならない。そこが、真の見物である。

 

(このコーナーは二宮清純が第1週木曜、書籍編集者・上田哲之さんが第2週木曜、フリーライター西本恵さんが第3週木曜を担当します)


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