(写真:髙島チェアマン<右>からMVPの盾を授与されるカーター)

 16日、ジャパンラグビートップリーグ2018-2019年間表彰式が都内ホテルで開催された。MVPには今季から神戸製鋼コベルコスティーラーズに加入し、2冠獲得に導いた元ニュージーランド代表SOダン・カーターが輝いた。トップリーグを15季ぶり、日本選手権を18季ぶりに制した神戸製鋼からはPR山下裕史、No.8中島イシレリ、SHアンドリュー・エリス、CTBアダム・アシュリークーパーらリーグ最多の6名がベストフィフティーンに選出された。

 

 やはり主役はこの男だった。前日に総合順位決定トーナメントを終えたトップリーグ。神戸製鋼のトップリーグ&日本選手権の2冠が決まった。まだ入れ替え戦、カップ戦の日程は残っているが、年間表彰式が行われた。MVPはシーズン前から注目を集めていたカーターが受賞した。

 

 カーターは卓越したゲームメイクに加え、キッカーとして得点源にもなった。リーグ戦7試合中4試合に出場し、61得点を挙げた。順位決定トーナメントは全3試合に出場。62得点を挙げ、神戸製鋼のタイトル奪取に大きく貢献した。ベストフィフティーンの規定が5試合以上出場のために選考からは漏れたものの、ベストキッカー賞に輝いた。

 

(写真:「ハードワークが認められたのかな」と、トップリーグ1年目でのMVP受賞を喜んだ)

 キックの極意について「ミスをしないこと」と語り、こう続けた。

「4、5歳の頃からキックが好きで家の裏で練習してきました。残念ながら(トップリーグ)最初のキックはミスしてしまいましたが、ミスをカバーしようと次のプレーをした。ルーティンや準備が大事で、キックに対する姿勢が(精度に)影響する。たくさん練習をやればやれるほど努力が報われるものだと思います」

 

 ワールドラグビー年間最優秀選手に輝くこと史上最多タイの3度。“生ける伝説”はあくまで謙虚である。「とてもプレーしやすかった」とチーメイトを称え、「その結果、個人賞をもらうのは気恥ずかしさもありますが、誇りに思います」と胸を張った。その真摯な姿勢はチームメイトにも大きな影響を与えた。

 

 FL橋本大輝はカーターの日本デビュー戦後、“カーター効果”についてこう語っていた。

「私生活から練習に取り組む姿勢までを含め、24時間プロ意識が高い選手。グラウンドで良いプレーをするためにはどうすべきか。ラグビーに取り組む姿勢をみんなに教え、チームを引っ張ってくれている」

 

 見習うべき“姿勢”はプレー中にもあった。カーターとハーフ団を組み、2冠達成に貢献したSH日和佐篤は「真っすぐを向いてパスをできることはSOに限らず、どの選手も見習うべきポイントだと思います」と口にしていた。正面を向いてプレーすることで、ディフェンスに狙いを絞らせない。スバ抜けたスピードがなくても、引き出しの多さ、的確な判断力で補ってきた。

 

 年齢は36歳。決して若くはない。

「“(その年齢で)どこまでできるのか?”と思われた方もいるかもしれない。日本に来るからにはチームに少しでも貢献し、助けたかったんです。自分がまだできるということを示したかった」

 赤のジャージーの10を背負った男はピッチの内外で凛々しく立ち続けていた。

 

 主な受賞チーム、選手は次の通り。

 

(写真:2冠を達成した神戸製鋼<左からエリス共同主将、前川共同主将、ディロンHC>)

【優勝】

神戸製鋼コベルコスティーラーズ 15季ぶり2回目

【準優勝】

サントリーサンゴリアス

【3位】

ヤマハ発動機ジュビロ

【フェアプレーチーム賞】

ヤマハ発動機ジュビロ 2季ぶり2回目

 

【MVP】

ダン・カーター(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

【新人賞】

岡田優輝(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)

 

(写真:レメキは自身初のトライ王を獲得し、「来年もガンバリマス」とコメント)

【最多トライゲッター】

レメキ・ロマノ・ラヴァ(Honda HEAT) 8トライ 初

【得点王】

サム・グリーン(豊田自動織機シャトルズ) 68得点(6T/10G/6PG) 初

【ベストキッカー】

ダン・カーター(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 86.2% 初

 

【ベストホイッスル賞】

麻生彰久 6季連続6回目

 

【ベストフィフティーン】

PR1 稲垣啓太(パナソニック ワイルドナイツ) 6季連続6回目

HO 坂手淳史(パナソニック ワイルドナイツ) 初

PR3 山下裕史(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 4季ぶり2回目

LO トム・フランクリン(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

LO ブロードハースト・マイケル(リコーブラックラムズ) 初

(写真:日本代表の主将リーチはベストフィフティーンに選出)

FL リーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス) 2季連続6回目

FL クワッガ・スミス(ヤマハ発動機ジュビロ) 初

No.8 中島イシレリ(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

SH アンドリュー・エリス(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

SO 山沢拓也(パナソニック ワイルドナイツ) 初

WTB 福岡堅樹(パナソニック ワイルドナイツ) 2季連続2回目

WTB レメキ・ロマノ・ラヴァ(Honda HEAT) 初

CTB アダム・アシュリークーパー(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

CTB リチャード・バックマン(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) 初

FB ジオ・アプロン(トヨタ自動車ヴェルブリッツ) 初

 

【功労賞】

大槻卓 ※リーグ戦通算100試合担当レフリー

 

(写真:40歳の久富。23日にはトップリーグ入れ替え戦に臨む)

【特別賞】

久富雄一(日野レッドドルフィンズ) ※リーグ戦通算150試合出場

山田章仁(パナソニック ワイルドナイツ) ※リーグ戦通算100試合出場

ブロードハースト・マイケル(リコーブラックラムズ) ※リーグ戦通算100試合出場

イェーツ・スティーブン(トヨタ自動車ヴェルブリッツ) ※リーグ戦通算100試合出場

マレ・サウ(トヨタ自動車ヴェルブリッツ) ※リーグ戦通算100試合出場

今村雄太(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) ※リーグ戦通算100試合出場

桑水流裕策(コカ・コーラレッドスパークス) ※リーグ戦通算100試合出場

日和佐篤(神戸製鋼コベルコスティーラーズ) ※リーグ戦通算100試合出場

 

(文・写真/杉浦泰介)