(写真:残留が決まり歓喜する日野のフィフティーンと、敗戦に落胆する近鉄フィフティーン)

 ジャパンラグビートップリーグの2018-19入替戦が各地で行われ、トップリーグ14位の日野レッドドルフィンズがトップチャレンジリーグ3位の近鉄ライナーズを21−11で下した。トップリーグ13位の宗像サニックスブルースはトップチャレンジリーグ4位の栗田工業ウォーターガッシュに75−0で圧勝。日野と宗像サニックスはトップリーグ残留を決めた。
 
 トップチャレンジリーグ1位のNTTドコモレッドハリケーンズと同2位の三菱重工相模原ダイナボアーズは、トップリーグ16位のコカ・コーラレッドスパークス、同15位の豊田自動織機シャトルズを破り、トップリーグ昇格を果たした。コカ・コーラと豊田自動織機はトップチャレンジリーグに降格となった。

 

 2年目の飛躍誓う

 

 日野の細谷直監督は「選手たちが頑張ってくれた。来年活躍するチャンスを掴んでくれました」と語った。トップリーグ参戦1年目の日野が1部残留を決めた。

 

(写真:W杯会場でもある熊谷に日野の応援団は駆け付けた)

 バックスタンドを赤く染めた一団はグラウンドに入場する選手たちを日野コールで迎えた。主将のLO村田毅はその光景を「ありがたかった」と感謝する。トップリーグ昇格1年目の日野はシーズンを14位で終え、トップチャレンジリーグ3位の近鉄と入替戦に回っていた。

 

 入替戦は3季連続だが、昇格に挑んだ過去2戦とは違いトップチャレンジリーグからの挑戦を受けるかたちだ。細谷監督が「近鉄さんとはトップリーグにいる年数が比べものにならない。“もう一度昇格しよう”と声をかけました」と口にすれば、村田は「僕らは終われる立場ではない。チャレンジャーのつもりで臨んだ」と続いた。

 

(写真:正確なキックでチームの攻撃をリードした染山)

 日野はSO染山茂範のキックでエリアをマネジメントする。背番号10が効果的に陣地を押し戻した。しかし序盤、敵陣でのラインアウトを生かせない。スローワーのHO木津武士によればサインの伝達ミスにより、呼吸が合わなかった。12分に自陣でペナルティーを犯し、近鉄のSOパトリック・ステインにPGを決められた。

 

 先制を許した日野。14分には左サイドを突破され、左中間にトライを奪われた。だが、ここはTMO(ビデオ判定)の末、攻撃の起点となったところで近鉄のオフサイドがあり、ノートライの判定となった。そのペナルティーで得たチャンスを日野はショット(PGを狙う)を選択。これを染山が難なく決めて同点に追いついた。

 

(写真:事前に用意していたサインプレーからトライを挙げた村田)

 得意のセットプレーは徐々に威力を発揮していく。21分、敵陣左でラインアウトを獲得。木津はリフトした味方に放るのではなく、ニアサイドに走り込んできた村田にボールを渡す。スピードに乗った村田はパスダミーで相手をかわし、一気にインゴールへ飛び込んだ。「近鉄さんがジャンプにプレッシャーをかけてくるのはわかっていた」(村田)と会心のサインプレーでトライを奪ってみせたのだ。

 

 勝ち越しに成功した日野は再びセットプレーから得点を挙げる。30分、再び左サイドからのラインアウト。木津は今度は長いボールを放る。リフトされた選手を越えたボールをFL西村雄大がキャッチすると、走り込んできたWTB竹澤正祥にパスを送った。スピードに乗ったルーキーは左中間にトライ。用意していたサインプレーが再び決まった。

 

 染山のコンバージョンキックが決まり、日野は15-3とリードを奪った。36分には染山のPGで3点を追加し、15点の貯金をつくって前半を終えた。

 

(写真:今季から加入した木津。冷静な声掛けでチームを落ち着かせた)

 後半に入ると、日野の我慢の時間が続いた。押し込まれる場面が目立ったが、トライを許さなかった。マイボールラインアウトをキープできないなど近鉄のミスにも助けられた。互いにPGで得点した後、35分にはトライを奪われたものの、焦らずボールを保持して時計の針を進めた。ホーンが鳴り、ラストワンプレーが知らされると染山が外に蹴り出して、21-11で試合を終わらせた。

 

 村田は「コカ・コーラ、サニックス戦で最後の10分間我慢し切れなかった。サニックス戦では10分で地獄を見た。それがあったから勝てた」と語り、「100%準備してきたことを最後までやり切れたことが勝因」と試合を振り返った。総合順位決定トーナメントのコカ・コーラ、宗像サニックス戦はいずれも残り10分で2トライを奪われた。15日、宗像サニックスには逆転負けを喫していた。最後まで集中を切らすことなく逃げ切れたのは、前週の悔しい負けがあったからだ。

 

 日野のトップリーグ1年目は開幕戦を勝利で飾ったものの、その後は6連敗。順位決定トーナメントで2勝を挙げ、ここまで挙げた勝ち星は3個のみである。今季、神戸製鋼コベルコスティーラーズから移籍してきた木津は「まだまだのびしろがあるチーム」と言う。村田は「この位置にいたくない。今年よりもいい準備をし、違う景色を見れるようにしたい」と飛躍を誓った。

 

(文・写真/杉浦泰介)