各チームのメンバー構成を見ると、やはりアルゼンチンが頭ひとつ抜けている印象だ。この南米の雄を軸に、ナイジェリア、ボスニア・ヘルツェゴビナがグループリーグ突破を争う。イランは初のベスト16進出を狙うも、目標達成は困難だろう。

 アルゼンチンの過去5大会の最高成績はベスト8。1978年アルゼンチンW杯、86年メキシコW杯を制した威光は弱まりつつある。アルゼンチンが今大会で狙うのは7大会ぶり3度目の優勝しかないだろう。

 そんなチームの攻撃陣は実に豪華だ。3トップにはFWリオネルメッシ、FWゴンサロ・イグアイン、FWセルヒオ・アグエロのワールドクラスの点取り屋が並び、2列目にはMFアンヘル・ディ・マリア、MFフェルナンド・ガゴという創造性あるチャンスメーカーがいる。サブのFWエセキエル・ラベッシ、FWロドリゴ・パラシオも他の国ならエース級のストライカーだ。攻撃のカギを握るのはメッシ。彼の代名詞でもあるドリブルは、細かいボールタッチによって変幻自在にコースを変えられる。また緩急も使いこなし、対応する相手を置き去りにする。同世代のアグエロ、イグアインとのコンビネーションも抜群。キャプテンとして臨むブラジルW杯、母国を28年ぶりの栄冠に導けるか。

 守りのキーマンはMFハビエル・マスチェラーノだ。豊富な運動量を生かし、中盤の底でピンチの芽を摘み取るボランチだ。全体的に前がかりになる傾向が見られるだけに、マスチェラーノがリスクマネジメントを徹底し、速攻に対する脆弱性をカバーする。もちろん彼のみならず、チーム全体が危機察知能力を働かせられなければ、ナイジェリア、ボスニア・ヘルツェゴビナに足元をすくわれる可能性もある。

 アルゼンチンに続くのは、2大会連続5回目の出場となるナイジェリアだろう。94年米国W杯、98年フランスW杯でベスト16進出を果たした“スーパーイーグルス”(ナイジェリア代表)は、今大会で初のベスト8以上を目指す。

 個人技主体のチームにおいて、司令塔役を担うのがMFジョン・オビ・ミケルだ。ボランチとして高水準の守備能力を誇り、未然にピンチを防ぐ。またミケルはボールキープ力にも優れ、ボールを前に運びながら、スルーパスで局面を打開することもできる。まさに攻守の要であり、ミケルが大会を通して好調を維持できれば、ナイジェリアの躍進も期待できる。

 ボスニア・ヘルツェゴビナは92年に旧ユーゴスラビアから独立し、同国サッカー協会は96年にFIFA加盟を果たした。そこから国際主要大会はすべて予選で涙を呑んできたものの、ついに悲願のW杯出場を果たした。
 チームは連動性のある攻撃で相手ゴールに迫り、欧州予選では10試合で30ゴールを積み重ねた。24歳のMFミラレム・ピャニッチは、精度の高いパスと鋭い仕掛けでチャンスを演出。そしてエースFWエディン・ジェコが、空陸問わない決定力でゴールを陥れる。

 守備陣も欧州予選で6失点と水準は低くない。初戦のアルゼンチン戦で勝ち点を確保し、第2戦でグループリーグのライバル・ナイジェリアを叩けば、初出場でベスト16進出も十分可能だ。

 イランは10年南アフリカW杯でポルトガルを率いてベスト16入りしたカルロス・ケイロス監督の下、アジアを勝ち抜き、2大会ぶり4回目の出場を決めた。チームの特徴はアジア地区最終予選8試合で2失点に抑えた堅守。ゾーンプレスを採用し、相手のボールホルダーを複数人で囲んでボールを奪い取る。しかし、同組の3カ国はいずれも高い攻撃力を有しており、受けに回る時間帯が長くなれば、ゴールをこじ開けられるだろう。守った後の速攻がどれだけ機能するかが、同国史上初のグループリーグ突破を果たすための最重要ポイントだ。

◎ アルゼンチン
〇 ナイジェリア
▲ ボスニア・ヘルツェゴビナ
  イラン

(鈴木友多)