30日、ボクシングのトリプル世界戦が東京・大田区総合体育館で行われた。WBO世界スーパーフェザー級タイトルマッチは王者の伊藤雅雪(伴流)が同級1位のイフゲニー・チュプラコフ(ロシア)を7ラウンドTKOで破り、初防衛に成功した。WBC世界バンタム級暫定王座決定戦は5位の井上拓真(大橋)が2位のペッチ・CPフレッシュマート(タイ)に判定勝ち。世界戦初挑戦で戴冠となった。WBC世界ライトフライ級タイトルマッチは王者の拳四朗(BMB)が同級7位のサウル・フアレス(メキシコ)を判定で下し、5度目の防衛を果たした。

 

 トリプル世界戦に臨んだ日本人ボクサーたちは、いずれもベルトを腰に巻いてみせた。大晦日のマカオで行われる日本人トリプル世界戦にも弾みをつけたかたちだ。

 

 トップバッターは拳四朗。WBC王座を4連続防衛中で、3連続KO中である。

 

 拳四朗は頭を振って守るフアレスをとらえきれない。手数で圧倒したがダウンを奪うまでには至らなかった。

 

 3対0のユナニマス・デシジョン。4連続KOは逃したものの、大差の判定勝ちで危なげなくベルトを守った。5連続防衛は現日本人世界王者最長だ。

 

 拳四朗に続いたのは井上拓。兄の尚弥(大橋)は3階級制覇王者で現在はWBA世界バンタム級王者に君臨している。

 

 兄と同じ階級で王座に挑んだ。対戦相手のペッチにはランキング、キャリア、そしてリーチでも劣る。だが井上拓はリング上でそれを感じさせなかった。

 

 井上拓は序盤から打って出た。途中から足を使いながら距離を取りつつ、手数は減らさない。ダウンこそ奪えなかったが、ユナニマス・デシジョンの完勝だった。

 

 2年越しのタイトル奪取だ。2016年の12月にも世界戦のチャンスを得たが、トレーニング中のケガで中止になった経緯がある。兄に続き掴んだ世界のベルト。さらに価値を高めるためには、今後の戦いが重要になってくる。

 

 メインを務めた伊藤は、今回が凱旋試合である。7月にアメリカで王座を掴み取った。

 

 距離を詰めながらクリンチを連発するチュプラコフに手を焼くも、徐々にペースを掴んでいく。5ラウンドになると、伊藤の強打が挑戦者を襲い出した。

 

 7ラウンド、伊藤はチュプラコフをロープに追い込むと、猛ラッシュを仕掛けた。右に左に連打を浴びせると、挑戦者陣営が“白旗”を上げた。

 

 ロシアからの刺客を下し、自らの拳で実力を証明してみせた。今回の防衛戦はアメリカでも生中継された。次戦は再びアメリカに踏み入れることが濃厚だ。

 

(文/杉浦泰介)