18日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会のグループH第1節で、ロシア代表(FIFAランキング19位)と韓国代表(同57位)が対戦した。試合は消極的だった前半を終えると、後半に展開は一変する。24分にFWイ・グノのゴールで韓国が先制すると、その5分後にFWアレクサンドル・ケルジャコフが決め、ロシアが追いつく。試合は再び小康状態に入り、そのまま1−1の引き分け。ロシアと韓国が勝ち点1を分け合った。

 ともに途中出場の選手が得点(クイアバ)
ロシア 1−1 韓国
【得点】
[ロ]アレクサンドル・ケルジャコフ(74分)
[韓]イ・グノ(69分)


“カリスマ”監督対決は、白黒つかず引き分けとなった。

 今大会グループリーグ第1節の最終戦は、ともにW杯では過去最高4位を誇る韓国とロシア。韓国の指揮を執るのは、Jリーグでも活躍したホン・ミョンボである。現役時代は4度のW杯に出場。2002年の日韓W杯ではキャプテンとしてチームを牽引し、4位を経験。監督としても12年のロンドン五輪で初の銅メダル獲得に導いたアジアのカリスマだ。一方のロシアは、言わずと知れた名将のファビオ・カペッロ。ACミラン、レアル・マドリードなど、ヨーロッパの名だたるビッグクラブで数々のタイトルを勝ち取り、“優勝請負人”とも謳われた。

 初戦の重みを熟知している両監督の意向もあってか、互いにリスクを冒さず慎重な立ち上がり。ゴールを脅かすほどのシュートは、31分のDFセルゲイ・イグナシェビッチの直接FKぐらいだった。右足から放たれた強烈なボールがゴールへ向かったが、ここは韓国のGKチョン・ソンリョンが弾き返した。前半はスコアレスで終えた。

 試運転のような前半だったが、後半に入ると一気にギアが上がった。まずはロシア。開始早々にMFビクトル・ファイズリンのミドルシュートでゴールマウスを襲ったが、チョン・ソンリョンが左一本で枠外へクリアーした。そこで得たCKを長身センターバックのバシリ・ベレズツキが頭で合わせたが、ゴールのわずか左に外れていった。

 対する韓国も5分にMFク・ジャチョル、6分にMFキ・ソンヨンがミドルレンジから強烈なシュートを放った。前半は1本もなかった枠内シュートが立て続きに飛んでいったが、いずれもロシアの守護神イゴール・アキンフェエフが立ちはだかりゴールを許さなかった。

 11分、ホン・ミョンボ監督はFWパク・チュヨンに代えて、イ・グノを投入した。動きにキレが見られない背番号10に見切りをつけ、Jリーグのジュビロ磐田やガンバ大阪でも活躍した29歳のストライカーに託した。

 するとイ・グノは指揮官の期待に応える。24分、センターサークル付近でボールを持ったイ・グノがドリブルで敵陣深くに、どんどん侵入する。イ・グノはペナルティエリア手前で右足を振り抜くと強烈なシュートを放った。GKの正面を突くコース。それまで韓国が放つミドルシュートを慎重に弾いていたアキンフェエフがキャッチを試みる。しかし、名手はボールを掴み損ね、後方に弾いてしまう。アキンフェエフは慌てて飛びついてが、ボールは無情にもゴールを割った。ショックを隠せないアキンフェエフは両手で顔を覆い、しばらくは放心状態だった。相手の信じられないイージーミスで、韓国が先制点を手にした。

 韓国のホン・ミョンボ監督の起用が当たれば、ロシアの名将も黙っていないとばかりに次々と策を講じる。27分までに3枚目のカードを使い切り、逆襲を狙う。その2分後に、試合は再び動く。ロシアは右サイドから、ボールをつなぎペナルティエリア内に侵入。右45度の位置から、交代出場のアラン・ジャゴエフがシュートを放った。ボールは一度、GKチョン・ソンリョンに弾き、DFが大きく蹴り出そうとした。クリアーが小さくロシアの選手に当たり、ボールがこぼれる。それを拾ったのも途中からピッチに上がったアレクサンドル・ケルジャコフ。足元にボールをコントロールすると、ゴール右に叩き込んだ。カッペロ監督が切った2枚のカードが得点に絡み、ロシアが同点に追いついた。

 その後は時計の針を振り出しに戻したかのように、引き分けムードが漂った。試合は動くことなくタイムアップし、1−1のドローに終わった。監督の交代策が見事にハマった両国。韓国は3大会連続決勝トーナメント進出へ向け、最低限の結果は得た。3大会ぶりの出場となるロシアにとっても、勝ち点1は良くはないが悪くもない数字と言っていいだろう。この試合で大会出場全32カ国・地域が出揃った。グループリーグ初戦を通じて、アジア勢は2敗2分けと、唯一勝ち星がない。2戦目以降の戦いに期待したい。

【ロシア】
GK
イゴール・アキンフェエフ
DF
アンドレイ・イェシュチェンコ
ドミトリ・コムバロフ
セルゲイ・イグナシェビッチ
バシリ・ベレズツキ
MF
デニス・グルシャコフ
→イゴール・デニソフ(72分)
ビクトル・ファイズリン
アレクサンドル・サメドフ
ユーリ・ジルコフ
→アレクサンドル・ケルジャコフ(71分)
オレグ・シャトフ
→アラン・ジャゴエフ(59分)
FW
アレクサンドル・ココリン

【韓国】
GK
チョン・ソンリョン
DF
イ・ヨン
ユン・ソギョン
キム・ヨングォン
ホン・ジョンホ
→ファン・ソッコ(73分)
MF
ハン・グギョン
キ・ソンヨン
イ・チョンヨン
ソン・フンミン
→キム・ボギョン(84分)
ク・ジャチョル
FW
パク・チュヨン
→イ・グノ(56分)