大型トレード時代から変わらぬ移籍選手の重圧
2019年、最初のコラム更新です。皆様、今季もよろしくお願いいたします。今年は暖かな正月だったこともありのんびりと家族サービスなどをして過ごしました。私事ですが娘の成人式もあって晴れやかな1年の始まりになったかなと思っております。それにしても広島の街は長野久義選手の入団という大ニュースに揺れていました。
基本は創意工夫
私の現役時代にFA制度はなく、選手の移籍はもっぱらトレードでした。
広島には水谷実雄さんとの交換で阪急から加藤英司さんが来たり、その後はロッテの首位打者・高沢秀昭さんらが高橋慶彦さんとのトレードで入団したことがあります。トレードでやって来た選手に対して周囲は「どんな選手なんだろう」と、とにかく注目の的でした。私も同じ外野手として高沢さんが入団したときには「どんな選手なのか?」「どんなもんなのか?」と。今ほど両リーグの垣根も低くなく、選手間の交流もそうなかったですから、移籍選手が注目されるのは仕方ない部分がありましたね。移籍加入した選手はそういうプレッシャーの中で結果を残さなくてはいけない。結構、しんどいことだと思います。
マスコミは長野選手が来て「若手のお手本だ」と書いていますが、学ぶのは広島の選手だけではなく長野選手もです。広島のやり方、強さの秘密、野球への取り組みなど巨人のときとは異なる野球に触れることになる。新しい場所にいけば、その分、新しい引き出しが増えることでしょう。そして新しい人脈も得ることができる。彼にとってはあの年齢で新しい場所でチャレンジできる、すごくいい機会だと思います。
加藤さんの名前を出して思い出しましたが、私はPL学園から法政大に進み、そして広島に入りました。なのでルーキーのときは法大の先輩である山本浩二さん、PLの先輩の加藤さん、2人分のスパイク磨きを仰せつかっていました。今のように用具係はいなかったので、それも後輩の仕事だったんです。お二人にはとてもよくしていただき、初ホームランを打ったときには浩二さんにスーツをプレゼントされたのもいい思い出です。まあ私がヘマをすると「あれは法政の後輩じゃろ」「いやいや、ありゃあPLのもんじゃ」と加藤さんと浩二さんが押し付けあったりもしましたがね、アハハハ。
さて我が香川オリーブガイナーズの話をすれば、原田宥希、加藤次郎というバリバリのクローザーと内野のレギュラーが退団しました。独立リーグの宿命として、これは仕方がありません。彼らを独立リーグにずっと縛り付けておくことはできませんから、新しい道へ進む彼らを応援したいと思います。毎年、戦力が入れ替わり、その中で創意工夫をして戦っていく。それが独立リーグ流です。
創意工夫は監督だけでなく選手たちにも求められます。今でこそスポーツの現場で「自分で考えろ」という指導が当たり前ですが、私はずっと昔からそういう指導をしています。うまくいっているときには「なぜうまくいっているのか?」と考え、反対に調子が悪いときにも「なぜだろう?」と自分で考える。野球選手として成長するにはそれが一番大事なことだと思っています。
香川の選手たちには創意工夫をして、そして失敗を恐れることなく、大きく育って欲しいですね。去年までの経験をいかして一皮むけてくれれば、それがチームの成長にもつながります。野球はチームスポーツですが、投手対打者という面では個人の戦いです。個人のレベルアップがそのままチーム力に直結します。今は自主トレの時期ですが、早くグラウンドで選手と顔を合わせるのが楽しみです。
今季の目標はもちろんアイランドリーグ優勝と独立リーグ日本一です。応援してくれている香川の人たちのためにも、そこはブレずに頑張りたいと思っています。地元に愛されるチームを育てあげ、そして全国に向けて「香川オリーブガイナーズ」の名前を発信できるように1年を戦います。例年と変わらぬ熱い応援をよろしくお願いします!
<このコーナーは毎月1日更新です>