お久しぶりです。白寿生科学研究所人材開拓課の松修康です。今年最初のコラム更新となります、遅くなりましたが本年もどうぞよろしくお願いいたします。


 本格的な寒さが到来し、今年は雨が少ないせいか乾燥する日が続き、インフルエンザが猛威を振るっています。私の娘の学校でもインフルエンザによる学級閉鎖がすでに起きていて、娘は大丈夫かなと心配していますが、目に見えないウイルスなので防ぎようがないんですよね……。家では娘と一緒に手洗いやうがいといった最低限の予防策を心掛けています。皆様もくれぐれも気をつけてお過ごしください。

 

 プロ野球はいよいよキャンプインしました。選手たちはレギュラーを獲得するため目の色を変え、必死になって頑張っていると思います。今年も期待の新人や移籍選手の活躍をとても楽しみにしています。今回は、私自身のキャンプ前に実施していた自主トレについてお話したいと思います。

 

 多くのプロ野球選手は暖かい海外や南国の地で自主トレを行い、それぞれ各自の課題などに取り組んでいます。私の現役時代、自主トレは鹿児島・阿久根と宮崎で行いましたが、特に記憶に残っているのは阿久根の自主トレです。入団して数年、自主トレ先が定まってなくて、どこか施設がしっかりしている所がないかと探しているときに、球団職員の方に「阿久根に良い施設があるよ」と教えてもらい、それがきっかけで阿久根で自主トレを行っていました。

 

 鹿児島は暖かいイメージだったのですが、最初の年はとても寒く、初日は雪が降り、グラウンドにも積もる始末でした。当然思うように体を動かすことができませんでしたが、練習を終え宿舎に戻ろうとしたときに、施設の管理の方から、「寒いから中で体を温めて帰りなさい」と、温かいコーヒーを煎れてもらった記憶があります。その方はとても優しく、いつも気に掛けてくれて、昼ご飯や夜に差し入れもしていただき、毎日毎日自分たちをもてなしてくれました。練習の記憶より、その方の思い出が勝っているくらいです。

 

 翌年の自主トレも阿久根に行き、その方とおいしいご飯を食べたり、焼酎を飲んだり、休日には一緒に遊びに行っていたくらい仲良くなりました。そのときに覚えたのが新たな変化球ではなく(笑)、芋焼酎でした。鹿児島は芋焼酎が有名で、最初はお店にも芋焼酎しかなく仕方なく飲んでいましたが、飲むうちにとても好きになり、今でも焼酎は芋を好んで飲んでいます。

 

 そしてその方と仲良くなったことがきっかけで、少年野球チームと一緒に練習したり、雨のときは体育館でママさんバドミントンに参加したりと交流も増えていき、楽しく練習をさせてもらいました。そんなある日のことです。バドミントンをプレー中、ママさん選手から打ち方を指摘され、「野球の投げ方とバドミントンの打ち方は似ているんですよ」と言って見本を見せてくれました。そのフォームは無駄な動きが一切なく、きれいで力強い腕の振りでした。余りにもきれいなフォームだったので思わず「打ち方を教えてください」とお願いしました。最初は「プロ野球選手に私が教えられることはないです」と断られましたが、再度お願いをして何とか教えてもらって、身体の使い方を教わっていく中で大事なことに気がつきました。

 

 それは、強いボールを投げるとき、軸足に力を溜め、その力を活かし体重移動をすることで強く腕が振れるということでした。私は今まで当たり前にできていたことができなくなっていて、投げ急いで軸足に力を溜めることなく投げる毎日が続いていました。それが違和感につながり、結果も悪く悩んでいたのですが、何気なくやったバドミントンから投げ方のヒントをもらったわけです。

 

 バドミントンの腕の振りや身体の使い方によって、いいときの自分の感覚が戻ってくる感じでした。その後もキャッチボールを見てもらい、たくさんのヒントをいただき、良いときの身体の感覚がどんどん戻ってきて、本当に今でも感謝しています。そのママさん選手が指導者になっていたとしたら、たくさんの選手が育っていることと思います。

 

 それから私は、このバドミントンの経験からテニスや卓球などにも取り組み、そこから身体の動かし方や使い方など自主トレ期間中に多くのことを学びました。しかし、です。いざキャンプになると自分で考ることもせず、思い出したはずの軸足に力を溜めてその力を活かすことを忘れ、コーチから言われたことを一生懸命やることが仕事と考え、違うことばかり意識してしまい、フォームがバラバラになってしまっていました。今思えば、とても残念な自分がいたなと後悔しています。

 

 自主トレ中は、野球だけの事を考えてるシーズン中と違い、リフレッシュしながら練習に取り組んでいました。それで心に余裕があったのかもわかりませんが、いろいろなことからヒントを得る事ができ、その学びが技術向上につながるとても大切な時間だと気づかされました。これは私だけではなく、周りからも自主トレ中に気付きがあったとよく耳にします。私の自主トレの経験から思うのは、人のご縁から何かが生まれ、活かされていることを強く学ぶ時間だったんだなと実感しています。

 

 今回は、あまり話題となることが少ない自主トレについて書いてみましたが、いかがでしたか? 開幕はまだまだ先ですが、今年も野球界の盛り上がりと発展を願っています。では、また次回お目にかかりましょう。

 

<松修康(まつ・のぶやす)プロフィール>
1976年7月23日、神奈川県生まれ。中学時代まで地元・神奈川でプレー。高校は宇都宮学園高校(現・文星芸術大学附属高校)に進み、卒業後は東北福祉大学へ。99年、ドラフト2位で福岡ダイエー(現ソフトバンク)に入団した。00年10月、オリックス戦でプロ初登板。01年6月10日、オリックス戦で初先発し、6回1/3、1失点で初勝利。これがプロ唯一の勝ち星となった。04年、左の中継ぎとして自己最多の40試合に登板。05年、現役を引退。横浜DeNA、北海道日本ハムの打撃投手を経て白寿生科学研究所へ入社。現職は管理本部総務部人材開拓課所属。プロ野球選手をはじめ多くの元アスリートのセカンドキャリアを支援する。


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