アジアカップにおける評価基準は「優勝したかどうか」だと考える。つまり優勝しか成功と言えないのが、アジアサッカーをリードする日本代表の宿命である。今回のUAE大会、日本は決勝でカタール代表に1-3で敗れ、「優勝できなかった大会」となった。

 

 1992年広島大会で優勝して以来、00年レバノン大会、04年中国大会、11年カタール大会を制してきた。2大会連続の“V逸”は初めてのケースになる。広島大会優勝メンバーの森保一監督も「結果がすべて」と語っており、カタールに力負けしたことは非常に残念だった。

 

 収穫は、7試合を戦えたこと。

 グループリーグ初戦、1月9日のトルクメニスタン代表戦から2月1日の決勝までの3週間、合宿を含めれば約1カ月間、チームづくりに使えた。海外組を加えたベストメンバーで、丸々1カ月間活動できた意味は大きい。

 

 現状の国際Aマッチデーでは多くても10日間ほどしか活動できない。多数を占める海外組は長距離移動や時差の負担があり、なおかつ、試合の直前合流を余儀なくされる選手もいる。その非常に短い時間でコンディションを合わせ、チーム戦術を落とし込まなければならない。

 

 筆者の印象に強くあるのが、イビチャ・オシム監督時代の07年、東南アジア4カ国共催となったアジアカップ。高温多湿のベトナム・ハノイで連日、ハードなトレーニングを課していた。“こんな機会、滅多にないのだから”と言わんばかりに。

 

 この大会は4位に終わったものの、3位決定戦(今大会から廃止)ではライバル・韓国代表と戦うことができた(0-0でPK戦の末に敗れる)。こちらも「優勝できなかった大会」ではあったが、当時の決勝に進んだとチームと同じ試合数をこなしている。この1カ月後、オーストリアで開催された3大陸トーナメントで日本はスイス代表に4-3で打ち勝ち、チームづくりの成果を示した。

 

 森保ジャパンも同様、ステップアップしていくためにはヒリヒリする公式戦でマックスの試合数をこなす必要があった。チームが立ち上がってまだ4カ月。今回のアジアカップでどれだけ戦術、コンセプトを浸透させられるかが重要だった。もし韓国やオーストラリア代表と同じく準々決勝で敗れていたら、活動期間が1週間短く、試合数も2試合少なかった。強化の観点から見れば、7試合やれたことは最低限のノルマは達成できたと言える。

 

 決勝まで戦えたことで検証材料も多く出てくる。

 戦術面ではいろいろと課題が浮き彫りになった。直近のカタール戦で言えば、相手の3バックに対してミスマッチが生じ日本のプレスがはまらず、ボールを奪えないままゴール前に運ばれて流れの中から2失点を喫している。「臨機応変」を謳いながら決勝の舞台で表現できなかった。大迫勇也にボールが入ってくるところを狙われるなど、相手の対策を上回る手を打てなかった。

 

 今秋からカタールW杯アジア2次予選がスタートすることもあり、カウンター対策や引いた相手からゴールを奪う“引き出し”にも磨きを掛けていく必要があるだろう。

 

 コンディション面の検証も求められる。

 決勝トーナメント1回戦サウジアラビア代表戦から中2日の準々決勝ベトナム代表戦はターンオーバーせずに臨んだ。準決勝イラン代表戦では結果を残せたが、決勝ではどのように影響したのか。中2日のカタールは後半明らかにバテていたが、中3日の日本も試合の入り方がうまくいかなかった。合宿や試合間の調整を含め、今後のコンディションづくりに活かしてもらいたい。

 

 今回、成功はつかめなかった。だが7試合をこなせたこと、イラン戦の快勝のほかにも若手の台頭など収穫も多かった。今後の成功につながる大会だったと信じたい。


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