外国籍枠拡大に伴い、Jリーグは新時代に突入する。

 J1は22日に開幕を迎える。オープニングマッチは元スペイン代表のストライカー、ダビド・ビジャまで獲得したヴィッセル神戸がアウェーでセレッソ大阪と対戦する。

 

 今季から外国籍選手の試合出場及びベンチ入りはJ1の場合「3+1(アジア枠)」から「5(アジア枠廃止)」に変更された。J2、J3の上限は「4」となる。アジアにおけるJリーグ提携8カ国(タイ、ミャンマー、カンボジア、シンガポール、インドネシア、マレーシア、カタール)の選手は外国籍枠にカウントされない。

 

 登録枠も「5」から無制限に変更された。多くのクラブがこの新ルールを活用している。神戸は現在ビジャ、アンドレス・イニエスタ(ともにスペイン)、ルーカス・ポドルスキ(ドイツ)、ウェリントン(ブラジル)、キム・スンギュ(韓国)の5人を抱える。1試合でこの5人を出場させることは可能だ。開幕で神戸と対戦するセレッソはブルーノ・メンデス、ソウザ(ともにブラジル)、ヤン・ドンヒョン、キム・ジンヒョン(ともに韓国)レアンドロ・デサバト(アルゼンチン)、マテイ・ヨニッチ(クロアチア)と6人の外国籍選手を抱えている。

 

 現時点で最多はサガン鳥栖の8人。フェルナンド・トーレス、イサック・クエンカ(ともにスペイン)、ビクトル・イバルボ(コロンビア)、チョ・ドンゴン、アン・ヨンウ、キム・ミノ(ともに韓国)、ニノ・ガロヴィッチ、カルロ・ブルシッチ(ともにクロアチア)と、一気に数を増やしている。

 

 外国籍をどう有効活用できるかが、今シーズンの一つのカギになることは間違いない。海外からいい選手が集まってくれば、そのチームのみならずJ全体のレベルが引き上がるメリットがある。しかし一方で日本人選手の出場機会が減ってしまうデメリットとも向き合っていく必要がある。

 

 Jリーグには日本サッカーを強くするという使命がある。世界に通用する選手を輩出し、日本代表の強化を考えていかなければならない。

 つまり外国籍選手頼みで優勝したところで、日本人選手を育てていなければ使命を果たすことにはならない。

 

 Jリーグは外国籍枠の拡大とともに、ホームグロウン制度を導入している。J1では「12歳から21歳までの間、3シーズンまたは36カ月以上、自クラブで登録していた選手」「21歳以下の期限つき移籍選手の育成機関は移籍元クラブでカウント」などの基準に照らし、自前で育て上げた選手を2名以上、保有しなければならない。21年からは3人以上、22年からは4人以上となる。J2、J3も22年から1人以上の登録が義務づけられる。

 

 外国籍枠拡大に伴うデメリットを、ホームグロウン制度で相殺しているような見え方ではある。だが制度よりもむしろ大事になってくるのは、クラブの姿勢だと考える。

 

 鹿島アントラーズを見ていただきたい。彼らは伝統的に2トップを採用しているが、フォワードの1枚に必ず日本人選手を起用してきた。柳沢敦、鈴木隆行、興梠慎三、大迫勇也……助っ人とペアを組ませることで彼らは日本を代表するフォワードに成長している。フォワードばかりでなく、同じポジションに助っ人を並べないのが彼らのポリシーだ。日本人選手の成長を呼び込むために、敢えてそうやってきた。ルールが変わったところで、鹿島がこのスタンスを変えることはないだろう。

 海外のビッグネームが並ぶ神戸にもU-20代表の郷家友太、小林友希、東京五輪世代の藤谷壮ら若いタレントを抱える。イニエスタ、ビジャらの力を借りながら、彼らのポテンシャルを伸ばしてもらいたいと思う。

 

 日本人選手の成長を促すための外国籍拡大でなければ意味がない。「勝つ」と「育てる」の両輪を回していくことが求められている。


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