J1第1節2日目に行われた川崎フロンターレ対FC東京の一戦が23日、等々力陸上競技場で行われた。多摩川を隔てた地域にホームタウンを構える両チームの“多摩川クラシコ”はスコアレスドローに終わった。

 

 久保、昨季よりフィジカル面アップ(等々力)

川崎フロンターレ 0-0 FC東京

 

 多摩川クラシコで先発出場を果たした17歳のMF久保建英は77分間プレーし、2万3113人の観客を魅了した。4分には敵陣左サイドの深い位置でシザースフェイントでの突破を試みた。調子の良さをうかがわせたワンシーンだった。

 

 その3分後、久保はカウンターからチャンスを演出した。ハーフウェイ付近でボールを受けた久保はドリブルでボールを運ぶ。時間を作り、ペナルティーエリア手前左サイドのFWディエゴ・オリベイラにスルーパスを供給。オリベイラは右足ダイレクトでシュートを放つがGKに阻まれた。

 

 39分にはロングスルーパスを披露。久保が自ら自陣右サイドでDF車屋紳太郎からボールを奪い、センターサークルまでドリブルで持ち上がる。ルックアップし、FW永井謙佑の前方に広がるスペースにボールを送った。惜しくも俊足の永井でも追いつかなかったがパスが通っていたらゴールに直結する場面だった。

 

 41分、ペナルティーエリア手前右サイドの絶好の位置でFC東京がフリーキックを得た。キッカーの久保は長めの助走から得意の左足を振り抜く。鋭く曲がるシュートは惜しくもゴールポスト右を叩いた。

 

 後半に入っても久保は右サイドでタメを作り、FC東京の攻撃にリズムをもたらせた。飛び込んでくる相手をひらりとかわすテクニック、懐の深さ、そして体を当ててボールを奪うなど守備でも貢献していた。昨季まではあまり見られなかったプレーを披露した。

 

 試合後、長谷川健太監督は久保の働きをこう称えた。

「(今日の久保のプレーは)素晴らしいの一言だったと思います。前半、風下でなかなかボールが落ち着かなかった。どこかでタメを作らないと自分たちの時間が作れないと思った。建英のところで時間が作れて、相手にとって嫌な攻撃を仕掛けることができたと思います。

 

 相手の背後に良いボールを供給してくれた。交代するまで守備の穴も作らずに昨シーズンのプレーから上積みされたと思います。ヨーロッパに行く前の堂安律(現フローニンゲン)と同じレベルくらいには来ていると思います。順調に経験を積んで、ワールドユースで刺激を受ければまたすぐ、ヨーロッパから声がかかるんじゃないかな。そのくらいのレベルに、すでに来ているのかなと思います」

 

 指揮官が手放しに誉めるなか、当の本人は淡々としていた。

「欲を言えばもう少し前でボールに絡んでもっと相手を脅かすプレーをしたかったですが押し込まれる時間が多い中で及第点のプレーだったと思います。サッカーはチームスポーツなので“オレがオレが”というわけにはいかないです。まず土台としてチームに求められるコンセプトを表現できないと試合に出られないということをこの1年で、10代の若いうちにしっかり学べたのは大きな収穫だったと思います」

 

 これまで、才能に疑いの余地はなかったものの線の細さや球際の弱さが課題だった。ところが、この開幕戦で17歳は進化を周囲に見せつけた。今の久保ならば2019年のFC東京を牽引する存在になるだろう。

 

(文/大木雄貴)