今年で27年目を迎えたJリーグ。試合に出場できる外国籍選手枠が拡大されたこともあり今オフのストーブリーグは盛り上がりましたね。今季、僕が注目した開幕カードはヴィッセル神戸対セレッソ大阪戦です。はやり元スペイン代表FWダビド・ビジャが加入した神戸が気になりました。

 

 このゲームは22日の金曜日に開催されたこともあり、注目度は高かったようです。両チームとも球離れが速く、好ゲームでした。スルーパスの正確さ、技術的なものや戦術的なものを含め、日本のサッカーは変わってきたなぁと感じましたね。ビジャ、MFアンドレス・イニエスタ、FWルーカル・ポドルスキのトライアングルは見ごたえがありました。結果こそ神戸が0対1で惜敗を喫しましたが、内容は悪くなかったように思います。

 

 神戸はDFラインに不安があり、うまくかみ合っていないように映りました。攻撃陣には経験豊富な選手が多いですが、守備の連係構築がまだ出来上がっていないように感じました。ここが穴となり他チームに突かれるおそれがあるでしょう。リーグを戦いながらうまく修正できればさらに良いチームになると思いますよ。

 

 ビジャ個人にフォーカスしましょう。どんなに警戒されていてもカットインでゴール前に入って行き、切り返してシュートに持ち込むあたりはさすがですね。世界的なストライカーですから、“ここぞ”という勝負所を分かっているのでしょう。ドリブル、シュートも独特のリズムを持っています。

 

 こんな豪華なメンバーを揃えるチームと対戦できるなんてDFとしては凄くいい経験になります。自らの技術、ボディーコンタクト、経験、駆け引き……。すべてを駆使して止めたいと思うのがDFの心理です。対戦したDFたちがそこで得た経験を糧にさらに成長してくれれば、日本サッカーのレベルアップも計れるはずです。神戸と対戦する日本人DFたちにはぜひ頑張ってもらいたいですね。

 

 僕の古巣である鹿島アントラーズはホームで昇格組の大分トリニータと対戦し、1対2で敗れました。鹿島は大分にボールを回させつつ、主導権を握ろうとしたみたいですが縦パス一本で変化をつけられました。特に大分のFW藤本憲明に決められた1点目は見事でした。ワンタッチで打たれ、GKクォン・スンテのタイミングを外したシュートでした。彼はJFLから這い上がってきた29歳。自分が頭で思い描くことと技術がフィットして、今が脂ののった時期でしょう。これからも大分を牽引して欲しいですね。

 

 さて、今季の優勝予想ですが開幕で敗れたものの鹿島を推したいと思います。小笠原満男がいなくなり新生・鹿島として頑張って欲しい。そして何より鹿島時代の後輩の鬼木達(現・川崎F監督)にやられてばかりじゃ、しゃあないでしょう(笑)。まぁ、鬼木は可愛い後輩なのですがリーグ3連覇は鹿島に阻止してもらいたいですよね。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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