(写真:男子部員6人で挑んだ2018年度の日本リーグ)

 第33回日本リーグを伊予銀行テニス部は男子7位で終えた。今大会からチーム数が増え、リーグ全体でプロ選手が増えてきている中で、5年連続決勝トーナメント進出は健闘とも言える。個人賞にはチームとして2014年度以来のベストアマチュア賞をリーグ通算30勝(ダブルス)を挙げた飯野翔太と、大卒新人の河野優平のコンビが輝いた。また今シーズン限りで引退するキャプテンの佐野紘一は特別賞を受賞した。

 

 

 

 

 例年東京体育館で行われる決勝トーナメントは、現在同体育館が改修中のため、リーグ戦でも使用した横浜国際プールで開催された。日本リーグの指揮を執るのは2年目となる日下部聡監督はサーフェスの違いに「少しはありますがファーストステージでも4試合戦っているので影響はなかったと思います」と振り返る。

 

 決勝トーナメントまでの旅路も決して楽なものではなかった。飯野とのダブルスで伊予銀行のポイントゲッターとなっていた中島啓が大会直前に足を負傷し、戦線離脱の憂き目に遭った。エースの片山翔も肩を痛めるなど、ファーストステージは2勝2敗と苦戦した。セカンドステージは4勝を挙げ、ブルーブロックを3位で通過。各ブロック上位4チームまでが進める決勝トーナメント進出を決めた。

 

(写真:試合前にスタッフ、女子部員と円陣を組んだ)

 2月8日にスタートした決勝トーナメント、1回戦の相手はレッドブロック2位の橋本総業ホールディングスだ。男子は17年に創部したばかりのチームだか、デビスカップ中国代表のゼ・リー、JTAランキング22位の斉藤貴史らプロ選手を多く揃える強敵だ。

 

 5年連続決勝トーナメント進出とはいえ、3位入賞を果たした14年度以降は3年連続1回戦で敗退していた。指揮官は“鬼門”を打破するため、「何かを変えないといけないと思った」と、シングルスNo.1の片山以外は今季のリーグ戦とは異なるオーダーを組んだ。

 

 シングルスNo.2で起用することが多かった佐野を飯野とダブルスを組ませ、リーグ戦1試合(シングルス)に起用した弓立祐生をシングルスNo.2に抜擢した。

「相手のシングルスNo.2斉藤選手と佐野は去年対戦していて相性が悪いように感じました。それに弓立が決勝トーナメント前にすごく調子が良かった。彼は強い相手に力を発揮するタイプですから、その爆発力に期待しました」

 

(写真:エースの片山は今季日本リーグで4勝4敗)

 そして迎えた決勝トーナメント。弓立は第1セットを1-6で落とし、第2セットは6-3で奪い返した。最終セットは互いに一歩も譲らぬ展開。しかし、最後は4-4から2ゲーム連続で奪われた。社会人3年目の弓立はプロ相手に善戦したものの、アップセットとまではいかなかった。片山はゼ・リーにストレート負け。佐野と飯野のダブルスも6-7、6-7で敗れた。0対3――。4年ぶりの1回戦突破は遠かった。

 

 一夜明けての5・7位決定戦はレッドブロック4位のエキスパート・シズオカと戦った。昨季こそ伊予銀行と同じ5位だが、15年度から2連覇を果たしている。ウインブルドン、全米オープンといったグランドスラムにも出場しているジョン・パトリック・スミス、JTAランキング45位の鈴木昂など、橋本総業同様にプロ選手揃いである。

 

(写真:現役ラストマッチを戦った相手の頭を撫でる佐野)

 前日のミーティングでは「最後勝ち切って松山へ帰ろう」との思いでまとまった。日本リーグの順位は来季のブロック分けにも関わってくるため、少しでもいい順位で終わりたかった。ところが佐野は鈴木に、片山はスミスにストレートで敗れて7位が確定した。ダブルスは飯野と弓立はフルセットの末、長尾克己&奥大賢ペアに負けた。

 

 決勝トーナメントは連日の0対3。7位でリーグ戦を終えることとなった。接戦まで持ち込みながらも届かない。日下部監督はこう語る。

「ほんの少しの差がやはり高い壁になっている。3年連続5位で、今年は7位。そこは何か変えていかなければいけないと思っています。ただ周りのチームもプロ選手が増え、レベルが上がっている中で毎回決勝トーナメントに進出していることは、選手たちの頑張りが成果に出ているのかなと思います」

 

 1年間キャプテンを務めた佐野は、これでユニホームを脱ぐ。後輩たちにこうメッセージを送る。

「決勝トーナメントでは、あと少しで勝てそうなところで勝てなかった。周りのレベルが上がっている中で、いい試合はできているのですが、あと一歩足りない。その一歩というのが大きな差なので、来季以降はそこを埋めてほしい」

 

(写真:佐野<左>は特別賞、飯野はダブルス通算30勝で表彰された)

 入行8年目の佐野は現役生活をこう振り返った。

「すごく充実した8年間でした。会社もすごく理解していただき、練習の時間に充てさせてもらえました。試合にも行かせていただき、テニスのしやすい環境を皆さんでサポートしてくれた。大変感謝しています」

 国民体育大会では成年男子連覇に貢献するなど、結果で応えてきた。

 

 指揮官は「彼は口で引っ張るタイプではない。結果を残し背中で見せてくれました」と評価する。佐野自身は「あまりキャプテン、キャプテンしていなかったと思います。自由奔放にやらせてもらった。みんな個性豊かだったので好きにやらせていました」と語った。ムードメーカーの一面もあったという。ルーキーの河野は「僕はすごく仲良くさせていただきました。佐野さんがいない時の練習は雰囲気が少し暗くなる。それほどチームに明るさを与えているんだなと感じます」と語った。

 

 新人の河野は4月のITTFユニ・チャームトロフィー愛媛国際オープンで、早大の坂井勇仁と組んで男子ダブルス準優勝。日本リーグはコンディションを崩したこともあって決勝トーナメントの出場はなかったが、リーグ戦8試合で飯野と組んで6勝2敗の成績を残した。日本リーグの勝率はチームトップだ。日下部監督は「内容的に悪い試合もありましたが、それでも結果を残している」と評価している。

 

(写真:ダイナミックなプレーが持ち味の弓立も期待の若手だ)

 河野本人は手応えよりも悔しさの方が多いという。

「6勝2敗は正直ダメな2敗。むしろ自分の中では勝つか負けるかの大事な試合で1勝2敗でした。良かったのは愛媛オープンで準優勝だけです。それに8勝0敗、決勝トーナメントに任されるレベルにいなければいけないのに、あれがいかにたまたまだったというのを証明している」

 

 今季はダブルスでの活躍が目立ったが、「シングルスとダブルス両方頑張りたいです。“ダブルスプレーヤー”と言われるは好きじゃない。僕はダブルスプレーヤーというよりシングルスができない選手」とプライドを覗かせる。来季に向けて、こう意欲を燃やす。

「来季は戦績よりも信頼される人間になりたいです。“やっぱりコイツならやってくれる”と期待される選手に。まずは日本リーグ全試合出場が目標です」

 

(写真:インターバル中にアドバイスを送る日下部監督)

 来季はエースの片山は残留。シングルス2番手の佐野が抜け、新たに2選手が加わる予定だ。就任3年目を迎える日下部監督は「やはり佐野の抜けた穴は大きい。シングルスの強化、そして若手の育成も重視しながらチームづくりをしていきたい」と来季を見据える。

 年々厳しさの増す日本リーグ。上位進出のカギは現有戦力のレベルアップ、そして今季以上に若手が躍動する必要があるだろう。

 

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