未来に繋げる2年目を ~愛媛国際オープン~
2年目の春である。4月8日から7日間、松山市にある愛媛県運動公園でテニスの国際大会『第2回ITFユニ・チャームトロフィー 愛媛国際オープン』が開催される。西日本唯一のITF国際大会の愛媛国際オープンには伊予銀行テニス部からも全選手がエントリー予定。ITFワールドテニスツアー(旧ITFフューチャーズ)は世界のトップを目指す若手の登竜門だ。
昨年は記念すべき第1回大会だった。前身の「JTT道後カップ愛媛オープン」が3年間の“充電”を経て、生まれ変わった。シングルスは当時20歳の徳田廉大が優勝。ダブルスは伊予銀行1年目の河野優平と早稲田大学4年の坂井勇仁のペアが準優勝するなど若手の活躍が目立った大会となった。
徳田はグランドスラムの予選出場が見えるまで世界ランキングを上げた。またワイルドカード(主催者推薦枠)で愛媛オープンの本戦を経験した田島尚輝は錦織以来となる全仏オープンのジュニア部門でタイトル(男子ダブルス)を掴んだ。田島はユースオリンピックの混合ダブルスで金メダルを獲得した。「愛媛から世界へ」との大会キャッチコピー通りの飛躍を見せている。
「世界で戦っている選手、あるいはこれから世界で戦う選手を観られるというのは大きい。国内大会にはない緊張感もあり、特にジュニアの選手たちにはいいモチベーションになっているのかなと思います」
そう語るのは昨年に続き、トーナメントディレクター(TD)を務める秀島達哉氏だ。秀島TDは伊予銀行テニス部の顧問で、愛媛県テニス協会の普及・強化委員長も兼ねている。
今年、国内で開催されている男子の国際大会は11。残念ながら昨年と比べて2大会減少している。最上位のATPワールドツアーは「楽天ジャパンオープン」のみだ。それに次ぐATPチャレンジャーは「慶應チャレンジャー」「兵庫ノアチャレンジャー」の2大会。その下のカテゴリーにあたるITFワールドツアーは愛媛国際オープンを含め8大会ある。愛媛国際オープンだけが賞金総額2万5000ドルとなっている。
それだけに愛媛国際オープンは日本テニス界にとっては貴重な存在と言える。コートに立って世界を体感することも大事だが、生でそのプレーを観られることも貴重な経験である。今大会も入場料は無料となっている。ボールパーソンは今年も愛媛のジュニアが担当する。その“目”を養えるのはプレーヤーだけではない。イン・アウト、サービスを判定するライン審判も地元愛媛から参加するのだ。
昨年は愛媛県から6名が担当したライン審判。秀島TDは予想外の反応があったという。
「チェアアンパイア(主審)がライン審判を評価するのですが、前回大会では一部のライン審判に“東京オリンピックを目指したらどうか”という声も上がっています。東京オリンピックでライン審判を務めるには国際大会の実績が大きく評価されます。当初は予想していなかったのですが、たくさんの方に応募をいただいております。そういった化学反応を含め大会の価値に繋がっていると思います」
未来へ繋げていきたいのは人だけではない。会場となる愛媛県総合運動公園のテニスコートはグランドスラムの全豪オープンと同じハードコートだ。一時はソフトテニスなど汎用性が高い砂入り人工芝のオムニコートに張り替える動きもあったというが、世界基準のコートにこだわった。
元プロテニスプレーヤーの伊達公子氏は日本経済新聞の電子版でこう持論を述べている。
<コートが世界基準とかけ離れている。海外ではハードとレッドクレー(赤土)が主流だが、日本は砂入り人工芝のコートが相当数を占める。これが選手の成長を阻む一因になっている>(2019年2月27日配信)
世界で戦ってきた伊達氏の言葉だけに重みがある。
近年では国体でハードコートが整備される流れができつつある。そこからさらに踏み込んで、国際大会が開催できるようになれば国内のテニス普及・強化に繋がる。愛媛国際オープンが成功するか否かは、日本テニス界の未来にも繋がっていると言ってもいい。
愛媛県はスポーツ立県の実現を目指しており、スポーツで地域を活性化したいと考えている。第1回と比べても協賛企業の数は増えており、県内の機運も高まってきているとも言える。協賛企業同士の交流の場も設けているという。
<想いを、つなぐ。地域を、つなぐ。>
その橋渡し役として、伊予銀行も協力を惜しまない。
秀島TDはこう意気込む。
「1、2回で終わらせるのではなく、“国際大会がこのまちにある”ということが大事です。皆様のお力を借りながら、ずっと継続していきたい。2月は愛媛マラソン、4月は愛媛国際オープンという風物詩になれればいいと思っています」
未来を繋ぐ大会が今年も始まる。