伊藤剛臣(元ラグビー日本代表)<前編>「号泣して飲んだゴスフォードの夜」

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二宮清純: 今回のゲストはラグビー日本代表(ジャパン)のナンバーエイトとして活躍し、46歳まで現役でプレー、2度のW杯出場を誇る“鉄人”伊藤剛臣さんです。雲海酒造の本格芋焼酎『木挽BLUE』をロックでいただきましょう。

伊藤剛臣: うん、うまい! とても飲みやすいですね。それでいて芋の香りもしっかりしている。これなら一升ぐらいいけちゃいそうですよ。

 

 

 

 

二宮: さすがです(笑)。

伊藤: でも実は学生時代、全然飲めなかったんですよ。

 

二宮: エエッ! それは意外だなぁ。

伊藤: 大学生の時は酔っ払ったふりして、実はあまり飲んでいなかった。

 

二宮: ヘェー。では、いつから飲めるように?

伊藤: 神戸製鋼に入社した頃です。先輩たちを前に飲まないと殺されると思ったので(笑)。夏合宿は死に物狂いで練習していた学生時代と違い、軽めのトレーニングだったんです。だから、練習後は毎晩宴会でしたね。

 

二宮: 毎晩、それは肝臓が鍛えられますね(笑)。

伊藤: “この人たちアホちゃうか”と思いましたよ。でも酒を飲みながら先輩たちは僕たちを教育しているんです。“神戸はこういうラグビーをするんだ”“こういう哲学を持っているんだ”と。今にして思えば、とても大切な時間でした。

 

 ジェイミーとの“裸の付き合い”

 

二宮: さて、いよいよアジア初開催となる日本でのラグビーW杯まであと半年です。ジャパンはプールAで、ロシア、アイルランド、サモア、スコットランドの順に戦います。伊藤さんの予想は?

伊藤: 初の決勝トーナメント進出の確率は50%だと見ています。全勝する可能性もあれば、逆に全敗する可能性もある。

 

二宮: 1次リーグ最終戦のスコットランド戦がカギを握ると言われていますが、第2戦のアイルランド戦もポイントのひとつに挙げられています。現在世界ランキング2位の優勝候補相手にどこまでの試合ができるか……。

伊藤: そうですね。前回のイングランド大会では3勝しましたが、予選突破できなかったのは勝ち点で及ばなかったからです。だから4トライ以上奪うか、負けるにしても7点差以内に抑えるか。いわゆるボーナスポイント。勝ち方も負け方も重要になってくるのかなと思います。

 

二宮: 負けるにしても次に繋がる試合が重要だ、と。

伊藤: 本当に全部の試合が1分1秒無駄にできない。総合力の戦いになってくると思います。

 

二宮: 今大会での注目選手は?

伊藤: やはり堀江翔太とリーチ・マイケルですね。

 

二宮: フッカーの堀江選手は2度W杯に出場し、58キャップです。バスケットボールやサッカーをやっていたこともあって、非常に器用なプレーヤーですよね。

伊藤: ワールドクラスだと思います。何でもできる選手ですね。彼は世界の感覚でラグビーをやっている。僕の時代は一番がジャパンで、目指すところはそこだった。でも今の選手たちは世界に目を向けている。ジャパンが一番だとは思いますが、スーパーラグビーに参戦する選手もいます。野球で例えるならメジャーリーグに行くような感じでしょうか。

 

二宮: 世界最高峰のリーグと言われるスーパーラグビーで、堀江選手はフォワードとしては日本人で初めてプレーしました。伊藤さんも今の時代に20代だったら挑戦していましたか?

伊藤: たぶん行っていたと思います。先ほど申し上げた通り、当時はジャパンがすべてでしたから、海外でプレーするという選択肢はありませんでした。

 

二宮: キャプテンのリーチ選手はリーダーシップも含め、高く評価されていますね。

伊藤: 彼は最高のリーダーですよ。当初ジャパンは予選突破を目指すと言われていましたが、リーチは今年になってベスト4と言っています。その言葉だけで彼のさらに上を目指したい、チームをもっと良くしたいという気概が伝わってきますよね。

 

二宮: スクラムハーフは人材が豊富ですよね。田中史朗選手、流大選手、茂野海人選手、内田啓介選手がいて、さらには法政大学と神戸製鋼で伊藤さんの後輩にあたる日和佐篤選手もポジション争いに加わろうとしています。

伊藤: 僕は試合を見ていて田中が一番いいなと思います。彼が入ると全体が動くというか、フォワードもバックスも生きてくる。全体が円滑に回る印象があります。昨年はジャパンのジェイミー・ジョセフヘッドコーチも流を先発で使い、後半途中から田中を入れて流れを変えるような起用法が多く見られましたね。

 

二宮: ジェイミーヘッドコーチとは現役時代、ジャパンで一緒にプレーしていますよね。

伊藤: はい。実はジェイミーが初めてジャパンに呼ばれた1998年のオーストラリア合宿で、ナンバーエイトのポジションを争うライバルなのに、同部屋になったんです。彼は日本のサニックスでプレーしていたので日本語も少し喋れた。僕も拙い英語でコミュニケーションを取りました。

 

二宮: 相部屋でのエピソードは?

伊藤: そのオーストラリア合宿ではシングルベッドを2つくっつけたような部屋でした。寝る前にジェイミーが素っ裸になった。「Why?」と聞くと「ニュージーランドスタイルだよ」って。

 

二宮: ニュージーランドスタイル(笑)。

伊藤: こちらはなかなか寝付けませんでしたよ(笑)。でもね、彼はオールブラックス(ニュージーランド代表の愛称)に選ばれるような人ですから、すごく紳士で、性格も良い。遠征や合宿に行くといろいろな話をしてくれました。日本食が好きで、日本の文化や日本人が大好きなんです。本当に良いヤツですよ。

 

 レジェンドよりもジャパンの戦友

 

二宮: 近年のジャパンはスクラムやラインアウトというセットプレーが非常に安定してきた印象があります。

伊藤: これまでジャパンはそこに苦戦してきましたからね。でもセットプレーが安定しないと、試合にならない。ここ数年、世界とも互角に戦えるようになってきたことで、持ち味である素早いアタックがより、生きるようになりました。

 

二宮: 昨年の秋には世界ランキング1位のオールブラックスから5トライを奪いました。

伊藤: あとはディフェンスをいかに整備できるかでしょうね。今アタックはセットプレーが安定してきて、アンストラクチャー(陣形が整っていない状況)からの攻撃に磨きをかけているところなので、どこが相手でもトライを取る力は付いてきたと思います。

 

二宮: スクラムが安定したことのひとつに長谷川慎スクラムコーチの存在がありますね。

伊藤: 僕は彼と同学年なんです。ジャパンで一緒にプレーしましたが、僕がフランカーで彼がプロップで出場した時にはスクラムを組む際に、「タケ、頼むぞ」と言っていました。当時のジャパンは、スクラムは押されるものとして認識していて、マイボールスクラムではすぐにボールを出していました。でも彼は後ろからの押しを必要としていた。スクラムに対する意識がすごく高くて、プレーヤーの時から“スクラムは8人で組むものだ”という哲学をしっかり持っていたんだと思います。

 

二宮: そうした経験が今の指導に生きているんでしょうね。

伊藤: ええ。彼は最前列に立つフロントロー(プロップ2人とフッカー)だけでなくバックファイブ(ロック2人とフランカー2人とナンバーエイト)の意識の高さやスキルもチームメイトに求めていた。もちろんフロントローの強さはベースにありながら、バックファイブの力をいかに前へ伝えるか。そこが一番大事だと考えていました。

 

二宮: 伊藤さんは2度のW杯に出場していますが、一番印象に残っているのは?

伊藤: 初めて出場した1999年大会はリザーブでした。だから初の先発出場を果たした2003年大会ですね。スコットランド、フランス、フィジー、アメリカを相手に1度も勝てませんでしたが、ジャパンの意地を見せようと、みんな頭からタックルにいきました。それを世界のメディアが評価してくれたんです。ジャパンは桜のエンブレムから“チェリーブロッサムズ”という愛称でしたが、2003年のW杯での身体を張ったプレーから“ブレイブブロッサムズ”と呼んでくれたんです。“勇敢な桜の戦士たち”と。1勝もできませんでしたが、少しはジャパンのプライドを示すことができたかなと……。

 

二宮: さぞかし、大会後に飲んだ酒はうまかったでしょうね。

伊藤: 最後の試合が終わって、オーストラリアのゴスフォードで酒を飲みに行ったんです。1次リーグ最終戦のアメリカ戦後でしたからガンガン飲んでいました。ハッと気付くと、僕の近くにプロップの長谷川慎と豊山昌彦、フッカーの網野正大というフロントローの選手がいたんです。熱くなってきっちゃって、“コイツらが縁の下の力持ちで頑張ってくれたからオレらは戦えた”と。スクラムを一生懸命組み、タックルもたくさん決めてくれた。それを思い出して、僕は号泣しました。

 

二宮: 苦楽をともにした仲間だからこそ、込み上げるものがあったんでしょうね。

伊藤: はい。3人と熱く飲んでいると、ジャパンの外国人スタッフが「イトウ!」と僕を呼ぶんです。でも酔っ払っているから「うるせぇ! オレはコイツらと飲んでいるんだ!」と突っぱねました。あとから、そのスタッフに言われました。「イトウ、実はジンザン・ブルックがいたんだよ」と。

 

二宮: アハハハ。ジンザン・ブルックと言えば、オールブラックスのキャプテンも務めたラグビー界のレジェンドですね。

伊藤: 伝説的なナンバーエイトでした。僕はパスができない、キックができない昭和のラガーマン(笑)ですが、彼は30m、40mのパスを放れますし、ドロップゴール決めちゃうくらいキックの精度も高い。次世代ナンバーエイトの走りです。

 

二宮: それは惜しいことをしましたね。

伊藤: 僕も泣きながらジンザン・ブルックが同じパブにいることは、横目で気付いてはいたんです。“ただオールブラックスよりもジャパンの方が大事だ!”と思って、その時は突っぱねてしまったんです。

 

二宮: レジェンドより戦友を優先したんですね。さて、話は尽きませんが、一旦ハーフタイムに入りましょう。

伊藤: 『木挽BLUE』はとても飲みやすいので、お酒も食事も美味しくて、話が進みますね。テンポよくボールを回すジャパンのラグビーのようです。さて二宮さん、夜は長いですよ(笑)。

 

(後編につづく)

 

伊藤剛臣(いとう・たけおみ)プロフィール>

1971年4月11日、東京都生まれ。高校1年にラグビーを始める。法政二高時代には高校日本代表に選ばれた。法政大学3年時には大学選手権で25年ぶりの優勝をチームにもたらした。法大卒業後は名門神戸製鋼に入社し、1994年度の全国社会人大会、日本選手権7連覇に貢献した。その後も2度の全国社会人大会、日本選手権優勝を経験。トップリーグ初代王者に輝いたチームの中心選手として貢献した。 2012年、神戸製鋼から釜石シーウェイブスに移籍。 日本代表ではW杯に2大会出場。代表キャップ62。2018年1月まで現役最年長記録選手として活躍していたが、惜しまれながらも現役を引退した。現在はラグビーW杯2019日本大会のアンバサダー、また釜石シーウェイブスのアンバサダーを兼任し、ラグビーW杯、ラグビーの魅力を伝えている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今回、伊藤さんと楽しんだお酒は芋焼酎「木挽BLUE(ブルー)」。宮崎の海 日向灘から採取した、雲海酒造独自の酵母【日向灘黒潮酵母】を使用し、宮崎・綾の日本有数の照葉樹林が生み出す清らかな水と南九州産の厳選された芋(黄金千貫)を原料に、綾蔵の熟練の蔵人達が丹精込めて造り上げました。芋焼酎なのにすっきりとしていて、ロックでも飲みやすい、爽やかな口当たりの本格芋焼酎です。

 

提供/雲海酒造株式会社

 


<対談協力>
美舟
東京都新宿区荒木町9 丸美ビル1F

TEL:03-3357-8177

営業時間:17:30~23:00

定休日:日・祝

 

☆プレゼント☆

 伊藤さんの直筆サイン色紙を芋焼酎「木挽BLUE」(900ml、アルコール度数25度)とともに3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらのメールフォームより、件名と本文の最初に「伊藤剛臣さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、郵便番号、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)を明記し、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストをお書き添えの上、お送りください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は19年4月11日(木)。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、伊藤剛臣さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

 

(構成・写真/杉浦泰介)

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