「ANA CUP第43回日本ハンドボールリーグプレーオフ」が17日、東京・駒沢体育館で行われた。女子決勝はレギュラーシーズン1位の北國銀行Honey Beeが同3位のオムロンピンティーズを29-20で下し、5年連続6度目の優勝を達成した。男子はレギュラーシーズン3位のトヨタ車体BRAVE KINGSが同1位の大崎電気OSAKI OSOLを27-23で破った。トヨタ車体は初優勝。3連覇中の大崎電気は4連覇ならなかった。

 

 男子は大崎電気の連覇が途切れたが、女子はレギュラーシーズンを無敗で駆け抜けた女王・北國銀行がV5を達成した。

 

 序盤、ペースを掴んだのは北國銀行。持ち味のディフェンスからの速攻が生きた。レフトバック(LB)塩田沙代が豪快にシュートを突き刺すと、そこから約3分半の間で一挙に5-1と突き放した。

 

 ところがオムロンがタイムアウトを取ったあたりから北國銀行の歯車が狂い始める。オムロンがサイドから中へと切り込み、ピヴォット(PV)永田しおりのポストもうまく使い、北國銀行のディフェンスを撹乱させにきた。

 

 シーズン中も仕掛けてきた策だが、北國銀行の守りに迷いが生じた。守りの要である塩田は「自分が慌ててしまいバタバタした」と語る。塩田を含め2人が一時退場するなど数的不利にも陥り、17分33秒で7-8と逆転を許した。「足を止めて下がってしまい、簡単にシュートを打たれていた」と荷川取義浩監督がベンチで激高する場面も見られた。

 

 それでも4連覇中の女王は粘りを見せる。ゴールキーパー(GK)寺田三友紀を中心に塩田とPV永田美香らで凌ぎ、攻撃はセンターバック(CB)横嶋彩、大山真奈らの活躍で得点を伸ばす。勝ち越すと前半を15-13で終えた。

 

 後半に入ると堅守速攻を発揮した。働き蜂は運動量豊富にコートを駆け回る。相手がスキを見せれば鋭いカウンターで一刺し。23分24秒のライトウイング(RW)鰍場雅代のゴールも、大山が激しいディフェンスでボールを奪ってからの速攻だった。

 

 プレーオフのMVPは横嶋だったが、大山は攻守両面での貢献が目立った。攻めては横嶋と共に組み立て、効果的にゴールを奪う。守備でも身体を張ってボールを奪取した。

「派手なプレーができるようなプレーヤーではない。泥臭くても1点に絡めるようなプレーを心掛けています」

 

 後半開始から7分近くを無失点。16分間でわずか1点に抑えるなど前半は手を焼いたオムロンの攻撃をわずか7点に封じ込めた。勝負の行方がほぼ見えてきた試合終盤にもGKの交代際で迎えた大ピンチ。LB吉田起子のシュートを塩田が弾き、最後は寺田が飛び付いてゴールを死守した。

 

 最後まで気を緩めることなく29-20で試合終了。「シーズン前に『1敗もせず全勝でいこう』と高いレベルを求めた」と荷川取監督。レギュラーシーズンから一発勝負となったプレーオフまでリーグ戦では1度も負けなかった。これで北國銀行は7連覇の広島メイプルレッズに次ぐ史上2位の5連覇と連続優勝記録を伸ばした。今季は全日本社会人選手権、国民体育大会と合わせて3冠。次なる目標は東アジアクラブ選手権だ。

 

(文・写真/杉浦泰介)