3月末の開幕を目前に控えて、四国アイランドリーグplusの各球団はその準備に余念がない。新監督としてチームを率いる徳島インディゴソックス・牧野塁監督も、急ピッチでチーム状況の掌握を進めている。牧野監督は現役時代、オリックス、阪神、東北楽天、広島とNPB各球団を渡り歩き、近年は楽天でアカデミーコーチを務めていた。初めて独立リーグの指揮を執る新監督に目標と意気込みを聞いた。

 

 野球人の前に社会人たれ

「前監督だった石井貴さんが東北楽天のコーチに就任することになり、徳島インディゴソックスが監督を探している」。そういう話を知人から聞き、独立リーグに興味を持ったのが監督就任のきっかけでした。球団の話を聞いてみると徳島では野球はもちろんですが、それ以前に人間形成を主眼に置いている、と。自分自身の考えとも一致する部分があり、それで徳島の監督を引き受けることになりました。

 

 就任前、球団オーナーから「独立リーグは練習などの環境は劣悪です。でも、その中で選手たちは頑張っています」と聞いていました。実際に徳島に行ってみると、確かにNPBに比べればすべての面で恵まれていないことばかりでした。でも、オーナーの言葉通り、選手はその環境の中で創意工夫して練習を積んでいた。合同自主トレで初めて顔を合わせたとき、選手たちの動きも良かったので、「ああ、きちんと練習する意識を持った選手ばかりなんだな」と感じました。駒井鉄平コーチ、橋本球史コーチの指導の下、前向きに頑張っている成果なのでしょう。

 

 徳島に来てから選手たちとのコミュニケーションを大事にしています。野球のマジメな話から、日常の他愛のない会話まで、とにかく声をかけるようにしています。コミュニケーションがとれていないと、アドバイスをしても心に響かないですからね。選手に対しては、オンとオフのめりはりをつけることを強調しています。これはオリックス時代の仰木彬監督から影響を受けました。仰木さんはご存知のように「遊べ、遊べ。でも仕事もきちんとしろ」というスタンスです。練習するときはする、休むときは休む、遊ぶときは遊ぶ。それをきちんとしてこそプロという気がしますね。

 

 監督1年目の今季、チームのキープレーヤーとしては投手では竹内裕太をあげておきましょう。昨季、後期で5勝(シーズン6勝)した彼には、今季も圧倒的なパフォーマンスを見せて欲しい。竹内が活躍することが、そのままチームの勢いになります。野手ではキャプテンで4番の安井勇輝、強打の瀬口拓也が中心になるでしょう。また打線のキーマンとしては岸潤一郎に注目しています。岸は昨季、盗塁王を獲得したように非常に足が速く、プレーにスピードがある。加えて打力もあるので1番でも3番でも、どこに入れても機能する。チャンスメーカーもできて、ポイントゲッターにもなれるプレーヤーです。ケガの回復具合が気になりますが、開幕して早い段階から活躍してくれることを期待しています。

 

 新人投手では右の上間永遠、左の安丸友耶、さらに大型右腕の森祐樹も楽しみです。キャッチャーで新加入の川端晃希は25歳と独立リーグでは年齢は上ですが、大阪桐蔭、同志社大、JFE東日本と一流の球歴を持っています。その経験値で若い投手陣を引っ張ってほしいですね。

 

 徳島はご存知のとおり6年連続してNPBドラフトで指名を受けているので、監督としてはその部分でもプレッシャーがあります。ですが、NPBに選手を送り出すことは私の絶対的な使命、マストなことだと思っています。先にあげた竹内や岸はドラフトにかかる逸材ですし、他にもいい選手がいます。シーズンの目標はリーグ優勝と独立リーグ日本一です。やるからには勝つのが当然ですし、勝つことでチーム力もアップします。さらに優勝するチームとなればスカウトなど見てくれる人も増える。そのためにも強いチームを作りたいですね。

 

 昨季、リーグ優勝を逃して選手たちは悔しい思いをしました。その雪辱を果たすために頑張りますので、今季も変わらぬ応援をよろしくお願いします。

 

<牧野塁(まきの・るい)プロフィール>
1974年7月17日、東京都出身。横浜市内のシニアリーグから高校は山梨学院大付属へ進学。同校エースを務めたものの甲子園出場は果たせず、ドラフト3位指名でオリックスに入団した。1年目の9月にプロ初登板。中継ぎとして仰木彬監督(当時)に重用されオリックスで11年間活躍。04年、トレードで阪神に移籍し、06年からは東北楽天、08年途中から広島。09年オフに戦力外通告を受け、トライアウト参加後に現役引退。横浜DeNAの打撃投手、楽天球団職員、アカデミーコーチを経て、19年から徳島インディゴソックスの監督に就任した。NPB在籍17年で通算222試合登板、337奪三振、防御率4.33。

 

(取材・文/SC編集部・西崎)


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