森保ジャパンに休息はない。アジアカップを終えたら、6月にブラジルで開幕するコパ・アメリカ(南米選手権)が次に待っている。

 

 コパ・アメリカはCONMEBOL(南米サッカー連盟)主催の大陸選手権で、1916年にスタートして100年以上の歴史を誇る。日本はカタールとともに招待され、1999年以来20年ぶりの参加となる。グループリーグでチリ(6月17日)、ウルグアイ(20日)、エクアドル(24日)との対戦が決まっている。

 

森保ジャパン3月の2連戦は対コロンビア(22日、日産スタジアム)、対ボリビア(26日、ノエビアスタジアム神戸)といずれも南米勢が相手。6月の小パ・アメリカを見据えた重要な強化試合となる。日本代表が次回に招集されるのは本大会直前。メンバー登録期限が大会の1カ月前だと考えれば、今回の2連戦が事実上の最終選考になるわけだ。

 

 森保一監督は今回、キャプテンの吉田麻也(サウサンプトン)、大迫勇也(ブレーメン)、長友佑都(ガラタサライ)、酒井宏樹(マルセイユ)らアジアカップのメンバーから13人を入れ替えた。

 

 その理由は、1つに海外組の事情を考慮したと考えていい。吉田や原口元気(ハノーファー)は残留争いに巻き込まれており、クラブに専念させた形。一方、大迫や長友、遠藤航(シントトロイデン)はケガを考慮して見合わせている。

 

 ただ、そればかりではない。酒井は残留争いにもケガにも当てはまらない。欧州からの長距離移動や時差調整はコンディションに影響を及ぼす可能性もある。実績ある酒井の実力は分かっており、アジアカップで1カ月間、代表チームに拘束している事情もあって見送ったと考える。「休養」もコンディションづくりには欠かせない。

 

 一方で南野拓実(ザルツブルク)、堂安律(フローニンゲン)ら若手は、招集に踏み切っている。柴崎岳の場合はヘタフェで出場機会に乏しく、休みよりも試合に出る必要性があると感じて招集したと思われる。アラベスの乾貴士については森保ジャパンでの出場時間が短いだけに、ここでじっくりと見ておきたいということなのだろう。

 

 2つ目の理由は、小パ・アメリカのメンバー選考にある。AFC(アジアサッカー連盟)所属の日本はあくまでゲスト参加のため、拘束権が認められない。既に大迫が所属するブレーメンは招集拒否の姿勢を示しており、指揮官も欧州勢との調整に苦しんでいることを明かしている。

 

 もし吉田、大迫、長友、酒井ら海外組を呼べないときに、どうするか。緊急事態の想定と重なるように、呼ぶタイミングをずっと計っていた香川真司(ベシクタシュ)、昌子源(トゥールーズ)の招集に踏み切った。オランダで3シーズン目を送る小林祐希(ヘーレンフェーン)や、ベルギーで12得点を挙げている鎌田大地(シントトロイデン)も呼び寄せている。幅広く選択肢を持っておきたいという指揮官の思惑が見えてくる。

 

 日本代表に海外組が多数を占める時代において、今回のメンバー23人中国内組が12人と過半数を超えたことも興味深い。

 

 コパ・アメリカにおける海外組の編成が不透明という部分も関係しているのだろう。とはいえJリーグはコパ・アメリカの大会期間中も試合を行うため、クラブ側への配慮も求められる。過去の事例から見ても「1クラブ1名」という制約がつくのではないだろうか。

 

 今回、14日のメンバー発表時点で2名以上呼んでいるのは東口順昭、三浦弦太のガンバ大阪だけ。多くのクラブから集めていることには、そのような意図を感じなくもない。鎌田、安西幸輝(鹿島アントラーズ)、畠中槙之輔(横浜F・マリノス)ら20代前半の若手にチャンスを与えようとしているのも印象的だ。

 

 今回は特別な事情があるとはいえ、若手との融合は元々の路線と言える。

 

 森保監督は以前、こう語っていた。

「若い世代をレベルアップさせることで日本代表全体の選手層を厚くすることができる。若い選手がキャリアを重ねた選手と一緒にプレーすることで学べることも多い。そして所属クラブに戻って代表の経験を成長に変えてくれればいいし、チームにも還元できるんじゃないかって思っています」

 

 コロンビア、ボリビアとの戦いから、新しいスター候補が出てくるかもしれない。そうなれば代表の競争が激化し、代表のローテーション化も可能となる。

 

 時代に合わせながら、チームづくりも変わっていく。“やっぱり吉田や長友たちがいなきゃダメ”となってしまえば、メンバー固定化に逆戻りする可能性もある。

“いやいや、吉田や長友たちがいなくても面白いんじゃない?”となるかどうか――。今後の森保ジャパンの指針を示す重要な2連戦となる。


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