9日(日本時間)、FIFAワールドカップブラジル大会の準決勝で、ドイツがブラジルに7−1で勝利し、決勝進出を決めた。ブラジルは前半11分、MFトーマス・ミュラーに先制ゴールを奪われると、そこから失点が止まらなかった。23分にFWミロスラフ・クローゼ、25分、26分にはMFトニ・クロース、そして29分にMFサミ・ケディラに決められ、前半だけで5失点。後半も24分、34分にFWアンドレ・シュールレに得点を許した。反撃は後半アディショナルタイムの1点に抑えられた。大敗したブラジルは、3位決定戦でアルゼンチン―オランダの敗者と戦う。

 クローゼ、W杯通算得点記録更新(ベロオリゾンテ)
ブラジル 1−7 ドイツ
【得点】
[ブ] オスカル(90分)
[ド] トーマス・ミュラー(11分)、ミロスラフ・クローゼ(23分)、トニ・クロース(25分、26分)、サミ・ケディラ(29分)、アンドレ・シュールレ(69分、79分)

 あまりにも厳しい現実だ。エースとキャプテンを失ったブラジルは、攻守ともに精彩を欠き、歴史的大敗で自国開催Vの夢は潰えた。

 ブラジルの崩壊が始まったのは前半11分だ。ドイツの右CKを、ファーサイドでミュラーに右足で叩き込まれた。DFダビド・ルイスがゴール前の混戦の中でミュラーにマークを外され、フリーの状態でシュートを打たせてしまった。

 同点に追いつきたいブラジルは、ボールを回してドイツゴールを目指したものの、最後のところでパスやクロスの精度を欠いてチャンスにつなげられなかった。

 迎えた23分にはクローゼに歴史的ゴールでリードを広げられた。ミュラーとクロースのパス交換で中央を崩され、PA内で受けたクローゼが右足でシュート。一度はGKが防いだものの、こぼれ球を再びクローゼに押し込まれた。クローゼはW杯通算得点記録が16点となり、ブラジルのロナウド(15点)を抜いて歴代最多となった。
 
 さらに25分、クロースに右サイドからのクロスを左足でゴール左へ流し込まれる。26分にはMFフェルナンジーニョが自陣でクロースにボールを奪われてケディラにつながれると、リターンを受けたクロースにゴールへ流し込まれた。まさかの展開に涙するブラジルサポーター。しかし、悪夢は終わらなかった。29分、ケディラにMFメスト・エジルとのワンツーからゴール左へ決められて5失点目。落ち着いて守りたい選手、前がかりにいきたい選手の意識のギャップが、最終ラインの前にスペースとなって現れ、バイタルエリアでドイツの選手を抑えきれなかった。

 苦境を打破したいブラジルベンチは、後半開始から動く。FWフッキに代えてMFラミレス、フェルナンジーニョに代えてMFパウリーニョを投入。中盤に厚みをもたして反撃の狼煙となる1点を目指した。
 だが、ドイツの守護神GKマヌエル・ノイアーの壁を破ることができない。7分、オスカルがPA内右からシュートを放つも、ノイアーに右足で防がれた。8分には、パウリーニョがうまくPA内に抜け出してシュート。GKに弾かれてこぼれたボールを再び右足で狙ったが、これもノイアーに弾き出された。

 すると24分、途中出場のシュールレに右サイドからのクロスを押し込まれて6点差。34分にも、シュールレにPA内左から左足で豪快にゴールネットを揺らされた。シュールレのゴールに対するブラジルサポーターの拍手が、悲しげにスタジアムに響いた。

 ブラジルにゴールが生まれたのは45分、オスカルがロングボールに抜け出し、PA内左から中央にスライドしてゴールネットに突き刺した。しかし、選手、サポーターに笑顔はなかった。

 味方を鼓舞してチームをまとめられるチアゴ・シウバがいれば、攻撃で決定的な仕事ができるネイマールがいれば……勝負に「たられば」は禁物だが、攻守の要を欠いたブラジルはあまりに脆かった。3位決定戦ではチアゴ・シウバが復帰するものの、準決勝敗退のショックは簡単に拭えるものではないだろう。せめて勝利で大会を終えられるか。そのためには、選手、スタッフ、国民が気持ちを切り替えられるかにかかっている。

(鈴木友多)

【ブラジル】
GK
ジュリオ・セーザル
DF
ダビド・ルイス
マルセロ
ダンテ
マイコン
MF
フェルナンジーニョ
→パウリーニョ(46分)
オスカル
ルイス・グスタボ
FW
フッキ
→ラミレス(46分)
フレッジ
→ウィリアン(69分)
ベルナール

【ドイツ】
GK
マヌエル・ノイアー
DF
ベネディクト・ヘーベデス
マッツ・フンメルス
→ペア・メルテザッカー(46分)
フィリップ・ラーム
ジェローム・ボアテング
MF
サミ・ケディラ
→ユリアン・ドラクスラー(76分)
バスティアン・シュバインシュタイガー
メスト・エジル
トーマス・ミュラー
トニ・クロース
FW
ミロスラフ・クローゼ
→アンドレ・シュールレ(58分)