準決勝を勝ち抜き、ファイナルへの切符を手にしたのはドイツとアルゼンチンだった。強豪国同士の対戦に胸を躍らせている人々も多いだろう。しかし、そんな大一番を前に行われる3位決定戦(日本時間13日)も、世界屈指の好カードだ。ブラジル―オランダ。ブラジルは準決勝でドイツに歴史的大敗を喫し、悲願の自国開催Vの道は断たれた。オランダも、アルゼンチンにPK戦の末に敗れてまたも初優勝に手が届かなかった。両国にとって、優勝以外はあまり意味をなさないものかもしれない。3位決定戦で争うのは、W杯を連敗で終えるわけにはいかないという、両チームのプライドだ。

 ブラジルはドイツ戦で7失点した守備面をどこまで建て直せているかがポイントだ。守備の要であるDFチアゴ・シウバを欠いた準決勝は、ラインコントロールが機能しなかったことで、DFラインと中盤の間に大きなスペースが生じた。また、攻撃中のカバーリングも甘く、カウンターで縦に速くボールを運ぶドイツの攻撃を防ぎきれなかった。

 その意味で、チアゴ・シウバの復帰は心強い。彼がチームメイトをコントロールすれば、ドイツ戦のように守備が破綻する可能性は低いだろう。ラインコントロールとカバーリングが安定すれば、速攻への対処もしやすい。またセカンドボールを拾えれば連続攻撃を行える。守備の出来は、有効な攻撃をする上でも重要だ。準決勝後、ルイス・フェリペ・スコラーリ監督や選手たちは、国民に対して謝罪の弁を述べた。それだけ、自国開催のW杯優勝を逃したショックは大きい。しかし、ブラジルのW杯はまだ終わっていない。最終戦で、少しでも敗退のショックを和らげるようなサッカーを、ブラジル国民のみならず、世界のセレソンファンも望んでいるに違いない。

 対するオランダは、準々決勝、準決勝ともにノーゴールに終わった攻撃面が改善できているか。今大会のオランダは攻撃と守備を分業している印象が強い。攻撃はFWアリエン・ロッベン、FWロビン・ファンペルシー、MFウェズレイ・スナイデルといった2列目より上の選手の絡みは多いものの、ボランチなどが後方から飛び出してくるシーンは少ない。

 負ければ終わりの決勝トーナメント以降は、どのチームもグループリーグに比べて守備に比重を置く。固くなった守備組織をこじ開けるには、攻撃も人数をかけることがひとつの策だ。3位決定戦は言うまでもなく、大会ラストマッチ。もう勝ち上がるための計算や体力温存策は必要ない。オランダが勝利して母国に帰るために必要なのは、ピッチ上の全員が好守に参加する同国の代名詞“トータルフットボール”の実現だ。

(鈴木友多)