(写真:2年4カ月ぶりのベルトを獲得した青木<中央> 提供・ONE)

 31日、シンガポール初の格闘技イベント「ONE Championship」が東京・両国国技館で開催された。日本初上陸となった同団体。計15試合が行われ、メインイベントのONEライト級チャンピオンシップは挑戦者の青木真也(Evolve MMA)が王者のエドゥアルド・フォラヤン(フィリピン)を破り、王座奪還を果たした。ONEの日本大会は10月にも行われる予定だ。

 

 2011年に設立したONE Championship(当時はONE Fighting Championship、略称ONE FC)はアジア各地で大会が開催し、世界140カ国で放送されるまでに成長している新興団体だ。日本初上陸となった今大会は「A NEW ERA」(新時代)と銘打った。特設リングと特大のスクリーンを設置、鳴り響く重低音にライトアップされた両国国技館は異国の雰囲気を漂わせていた。

 

(写真:元UFC王者のDJは日本の若松から一本勝ち 提供・ONE)

 観客も超満員。海外メディアは100人以上詰め掛け、会場入りするまで行列がつくられるほどだった。チャトリ・シットヨートンCEOは「大いなる一歩を刻んだ」と胸を張った。デメトリアス・ジョンソン(アメリカ)、エディ・アルバレス(アメリカ)の元UFC王者と契約し、世界的ビッグネームも加わった。大会開催中はソーシャルメディアのトレンドでトップに上がるなど、盛況を受けて大きな自信を得たようだ。

 

 メインイベントを務めたのは12年に契約した日本人ファイター青木だ。王者のフォラヤンには16年にベルトを奪われている。王者と挑戦者の立場が入れ替わり、青木にとっては“リベンジマッチ”である。試合前から観客からの青木コールの大合唱。会場のボルテージもMAXになった。

 

(写真:青木は得意のサブミッションで王者を落とした 提供・ONE)

 左ハイ、ミドルキックで距離を測る青木。徐々にフォラヤンとの距離を縮めていく。ケージ際で外掛けで相手を倒しにかかった。テイクダウンを奪うと、ここからが青木の本領発揮だ。肩固めで王者の首を極める。すると、フォラヤンは逃れることができず落ちた。レフェリーが試合を止め、TKO勝ち。青木が2年4カ月ぶりの王座奪還に成功した。35歳の新王者は自らの手で「新時代」を切り拓く。「次の試合は若手とやりたい」と20歳のクリチャン・リー(シンガポール)の名を挙げた。

 

 PRIDEの流れを汲むDREAMがなくなり、一時は隆盛を極めていた国内の格闘技人気は落ち込んだ。「僕はONEが大きくなる前から契約している。DREAMがなくなって(CEOの)チャトリに拾ってもらった。この大会のイベントをまとめる責任感と忠義だけで1年間やってきた。終わった安堵感というか、ホッとしています」と青木。大トリの責務を果たし、胸を撫で下ろした。

 

(写真:女子ストロー級タイトルマッチは壮絶な試合となった 提供・ONE)

 15試合中10試合がKO、一本勝ち。15時半からほぼノンストップで約6時間半の興行だった。リング上のインタビューはほぼ英語で行われ、国際色豊かなイベント模様を呈した。「最初の一歩に過ぎない」とチャトリCEO。今後の展開は「多くの団体を集めてONEと対決する大会にしたい」と意気込む。10月にも日本大会は予定されている。「日本初上陸」の枕詞は取れる。7カ月後のイベントで進化と真価を問われることになるだろう。

 

(文/杉浦泰介)