29日、Jリーグは事務局で理事会を開き、今季からフェアプレー賞を受賞したJ2、J3のクラブに賞金を授与することを決定した。賞金額はJ2が250万円、J3が100万円。J1の受賞クラブは従来どおり500万円が与えられる。J2は昨季までも賞は設置されていたが、賞金はなく記念品が贈られていた。今季から開幕し、フェアプレー賞の対象ではなかったJ3は新設となる。フェアプレー賞は設定された年間反則ポイント(退場1回につき3点、警告1回につき1点、出場停止1試合につき3ポイントが加算され、警告および退場がなかった試合1試合につき3ポイント減算)が、J1は年間合計34点以下の全クラブ、J2は42点以下、J3は33点以下のクラブを表彰する。賞金はJ1は全受賞クラブ、J2とJ3は受賞クラブのうち最少ポイントのクラブに与えられる。
 賞金を授与に至ったきっかけは、村井満Jリーグチェアマンが各クラブを視察に回った時だ。J2の松本山雅FCを訪れた際、村井チェアマンは反町監督から要望を受けた。
「反町監督と話した時に、『チェアマンは3つのフェアプレーということを言っているが、J2のフェアプレー賞には賞金がない。J1にとってフェアプレーは大事で、J2、J3にとっては大事じゃないんでしょうか」と言われた。『確かにそうだな』と。J1にだけ賞金を出すのは変ということで先般、実行員会に提案した」

 ただ、期中に規程を変更するのはなかなか難しいこともあり、当初はJ2、J3でフェアプレー賞の基準を満たすクラブにはチェアマン特別賞として賞金を授与する起案だったという。だが、実行委員から「硬いことは言わず、期中でも理事会で規約を変えてしまえばいいじゃないか」という結論になった。そして理事会でチェアマン特別賞、規程変更の両案を提案したところ、規程変更が快諾された。

 村井満Jリーグチェアマンは今季開幕前、「3つの約束」を打ち出した。1つは、「笛が鳴るまで全力でプレーする」。これはシミュレーションを含め、少しの接触で過度に痛がる素振りを見せたり、レフェリーに抗議して試合の進行を妨げないということだ。2つ目は「リスタートを早くする」こと。リードしているチームがゴールキック、コーナーキックなどで時間をかけてリスタートする場面をなくす。3つ目に「見苦しいような、時間稼ぎのような交替」の自粛だ。また「3つのフェアプレー宣言」のひとつにも、ピッチ上のフェアプレーが掲げられている。いずれも、魅力ある試合、ファンの新規開拓を促すためだ。

 こうしたフェアプレーの啓発は試合前に両チームの監督、審判団が出席するマッチコーディネーションミーティングで、マッチコミッショナーからに徹底されているという。リスタートを早くすることでゴールにつながった事例もあり、村井チェアマンは「フェアプレーが戦術的な意味で重要視されだしたのでは」と分析した。実際、12年から2年連続フェアプレー賞のサンフレッチェ広島はリーグ連覇中だ。

「フェアプレーは強い日本をつくるための重要な要素でもある」と村井チェアマン。その意味で今回の決定によって、よりフェアプレーを意識するクラブが増えるだろう。このような“ニンジン作戦”は、きっとサポーター・ファンも歓迎するはずだ。