U−17女子W杯(3月〜4月、コスタリカ)を制した同日本代表「リトルなでしこ」の優勝祝賀会が28日、都内のホテルで開かれた。会場には選手と高倉麻子監督、スタッフらW杯メンバーが4月の優勝帰国会見以来に集合。約200人の招待客と改めて快挙達成を祝った。その中で高倉監督は、W杯優勝を振り返るとともに、今後に向けて選手たちに更なる飛躍を促した。
(写真:全員は揃わなかったが、久しぶりの再会に笑顔がこぼれた)
「チームがうまくいかず、不安な気持ちを持って、本大会に向かった」
 指揮官は大会直前の心境をこう明かした。アジア予選を勝ち抜いてから本大会までは、5カ月の準備期間しかなかった。その中で高倉監督は「チームをより強くしたい」という考えで様々な選手を試すことにトライした。しかし、2月に行った米国遠征では中国とスコアレスドロー、米国には1−2で敗れた。大会前最後となったカナダとのトレーニングマッチも1−1の引き分け。指揮官のみならず、不安はチーム全体に広がっていた。キャプテンの杉田妃和はカナダ戦後に「このまま大会に入っていいのかな」と思ったという。

 そんなチーム状況が一変したのは、W杯初戦のスペイン戦だ。その後に決勝でも対戦することになる強豪相手に、2−0の快勝を収めることができたきっかけは何だったのか。
「初戦の前に、チーム全体でのミーティング、選手ミーティングでひとりひとりが『もっとこうしたほうがいい』と言い合った。そういう強い気持ちが初戦での勝利になったと思う」

 杉田は当時のチーム状況をこう明かした。高倉監督も「非常に勇敢に戦ってくれた。(内容も)いい出来で、優勝も狙えるんじゃないかと、スタッフたちは1試合でそう思うようになった」と初戦が優勝への転機になったことを強調した。

 そこからリトルなでしこの勢いは加速。準決勝で南米女王のベネズエラを下し、決勝で再びスペインを退けて頂点へと辿り着いた。指揮官は「本当に心をひとつにしてゲームを戦ってくれたと感じている」と改めて選手たちを称えた。
(写真:今後への決意を語った杉田)

 高倉監督はなでしこジャパンが11年W杯を制した後、米国女子サッカー界の友人から「(日本は今後)非常に高いプレッシャーの中でずっと戦っていかないといけない。米国はそのプレッシャーと20年間戦っている」と言われたという。
「それを聞いた時に、今から日本女子サッカーが選手、指導者、関係者のみなさんで、未来に向かってひとつひとつ前進していかなければいけない」

 そう決意した高倉監督が率いたリトルなでしこが世界を制したのだ。しかし、U−17W杯優勝も彼女たちにとっては通過点に過ぎない。リトルなでしこの選手たちは現在のなでしこジャパンの選手たちを脅かす存在になっていかなければならない。もちろん、選手もそれを自覚している。

「U−17W杯優勝も自分たちにはスタートでしかない。(今後は)ひとりひとり目標を持って、それをひとつひとつ超えられるように努力して、今以上に成長した自分になれるように頑張りたい」
 杉田は最後に力強くこう語った。なでしこジャパンは来年、連覇を目指すカナダW杯に臨む。17歳以下の選手にとっては遠い舞台かもしれない。しかし、1歩ずつ近付いていけば、必ずや到達できるはずだ。