久保建英の周辺がにわかに騒がしくなっている。

 今年6月に18歳を迎えるため、FIFAのルールに従えばその時点で海外移籍が可能になる。スペイン紙はバルセロナ復帰を報じているが、レアル・マドリードやパリ・サンジェルマンらビッグクラブが獲得に興味を示していると伝えるメディアもある。しかしながら所属するFC東京の大金直樹社長は「事実無根」と真っ向から否定している。

 

 首位を争うチームにとって久保は今や欠かせない存在だ。攻撃のアイディア、センスは言うまでもなく、フィジカルの向上に伴ってプレーに迫力が増し、守備のタスクも十分にこなしている。もし久保が移籍してしまえば、その穴は極めて大きいと言わざるを得ない。

 

 久保の移籍問題は、代表にも関わってくる。

 好調なチームを引っ張っている存在なのだから、日本代表の森保一監督の目に留まるのも当然だ。3月28日付のスポーツ各紙は「結果も出していますし、それだけの選手には次のステップが準備されると思います」と指揮官のコメントとともにA代表招集の可能性を報じている。

 

 6月の親善試合(5、9日)、そしてその後にはブラジルで開催される南米選手権も控える。南米選手権をどういったメンバー構成で臨むのか、現時点では不透明なままだ。AFC(アジアサッカー連盟)主催の大会ではないために招集の拘束力が働かず、海外組を呼ぶのは極めて難しい状況となっている。Jリーグも真っただ中だ。

 

 出場可能な欧州組と東京五輪世代を中心としたメンバー構成という案も出ていたようだが、そこもまだ伝え漏れてこない。J各クラブ1人縛りというのは、どうも間違いないようなのだが……。

 

 いずれにせよベストメンバーが難しければ、範囲を広げることになる。久保もそのラージグループに入ってくるのではないだろうか。

 

 同時期の5月末からポーランドでU-20W杯が開幕する。久保は前回の韓国大会に出場しているため、メンバーに選ばれれば2大会連続の出場となる。しかしながらA代表の試合、U-20W杯両方に出るのは日程上、不可能だ。個人的には一度、経験している大会のため、チャンスがあるならA代表で見てみたい。徐々にステップアップしたほうがいいという声はあるものの、日本のトップレベルに身を置くことで得られる収穫のほうが多いようにも感じる。

 

 昨夏のロシアW杯で日本をベスト16に導いた西野朗前監督は、若い選手をA代表に呼ぶことで成長を促す効果があると強調していた。

「A代表という場に来るとさらに成長できるし、そうでなければならないと思っています。プライドを持つことによって選手たちは変わっていくと思っています」

 

 森保監督が久保の招集について「次のステップが準備される」と踏み込んだ発言をしたのも、西野前監督同様の思惑があるからだろう。実際3月の親善試合では、安西幸輝、畠中槙之輔、鈴木武蔵、鎌田大地、橋本拳人といった若い選手たちをA代表に初選出し、彼ら全員に出場機会を与えている。親善試合であっても南米選手権でもあって久保を招集すれば、試合に出場させる確率は低くないと言っていい。

 

 ただ、それもこれも欧州移籍となればU-20W杯も、南米選手権も難しくなる。クラブの了承が必要となるため、基本的には無理と考えていいだろう。欧州からどういったオファーが届くか分からないが、A代表や来年の東京五輪を見据えればFC東京に残留する道も選択肢になる。

 

 久保の決断に注目が集まる。


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