プロ野球が開幕して約1カ月、予想通りもあれば、意外なことも起きました。様々な要素によってペナントレースが混沌としています。開幕1カ月を振り返ってみましょう。

 

 カープの復調の鍵

 セ・リーグでは4連覇を目指していた広島のつまずきが予想外でした。開幕前にはもっと成熟したチームだと思っていたのですが、案外、そうではないと感じました。丸佳浩が抜けたことと、新井貴浩という野手のリーダーがいなくなったこと、その穴をどう埋めるのかがポイントと思っていたのですが、開幕当初は穴が開いたまま。チーム全体としてのまとまりがなく、選手個々で戦っている印象でした。鈴木誠也が孤軍奮闘し、ピッチャーではサウスポーの床田寛樹が3連勝。そういう個々はいいのですが、チームとなると……。

 

 ただ、先週末から連勝を伸ばすなど調子が上向いてきています。會澤翼がサヨナラヒットを打つなど、下位にも当たりが出てきました。鯉のぼりのシーズンに向けて、広島の復調ぶりが楽しみです。

 

 一方で阪神の調子が上向きません。西勇輝が好投するも打線の援護がない。絶対的エースだったランディ・メッセンジャーも勝ち星に恵まれない。打線は「線」とは呼べないくらいにつながりがない……。今の順位も納得のチーム状態です。

 

 矢野燿大監督も打順の組み換えなど手を打っていますが、初手からつまずいた感があります。オープン戦で木浪聖也、近本光司の両ルーキーを積極的に起用し、両選手も結果を残していました。ですが、開幕してなかなか結果が出ないとなったら、木浪を早い段階にスタメンから外した。これによって、表現は悪いですが、他の若手選手がビビったんでしょう。「結果が出ないと、すぐ代えられる」と。

 

 プロなので結果が出ないと代えられるのは当然ですが、そこに監督として明確なビジョンがあるかどうか。そういうことに選手は敏感です。競争をさせるのか、それとも我慢して使うのか。それをはっきりさせないと阪神の浮上はなかなか難しいと思います。

 

 パ・リーグは東北楽天が首位を走り、私がイチオシだったオリックスはまだエンジンがかかっていません。ただ山本由伸が先発に復帰してすごく良いのと、吉田正尚ら主軸に当たりが出てきました。オリックスは引き続き、混戦の主役として注目したいですね。

 

 日本ハムは栗山英樹監督がオープナーといった新しい取り組みを見せていますが、なかなか結果が出ない。ただ、金子弌大がようやく勝ったことで、チームの勢いも出そうです。彼のように勝てるピッチャーがきちんと結果を出すと、他の選手にもいい影響を与えます。

 

 最後に、僕の個人的な開幕1カ月の注目選手をあげると、東京ヤクルトの村上宗隆です。去年、巨人の岡本和真がブレークを果たしましたが、村上にも岡本のような勢いを感じます。バッティングスタイルや体型から村上は筒香嘉智と比べられていますが、村上もゆくゆくは筒香のような主軸に成長するでしょうね。

 

 大型連休、そしてその後は交流戦が控えています。プロ野球はまだまだこれからが本番です。

 

image佐野 慈紀(さの・しげき)
1968年4月30日、愛媛県出身。松山商高で甲子園に出場し準優勝を果たす。卒業後に近大呉工学部を経て90年、ドラフト3位で近鉄に入団。その後、中日、エルマイラ・パイオニアーズ(米独立)、ロサンジェルス・ドジャース、メキシコシティ(メキシカンリーグ)、再びエルマイラ・パイオニアーズ、そしてオリックス・ブルーウェーブで日本球界復帰と、現役13年間で6球団を渡り歩いた。主にセットアッパーとして活躍、通算353試合に登板、41勝31敗21S、防御率3.80。現在は野球解説者。


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