Jリーグが面白くなりすぎて、海外サッカーへの興味が薄れてきたな……などと感じ始めていたら、「やっぱりこっちは凄いっすよ」とばかりに欧州CLで伝説的な名勝負が続発している。

 

 準々決勝マンチェスターC対トットナムの第2戦。4-3。21世紀最高の興奮。いやあ凄かった。もうお腹いっぱい。と思ったら、アンフィールドで奇跡が起きた。準決勝第1戦アウェーを0-3で落としたリバプールが、バルサ相手にまさかまさかの4-0。これはもう、間違いなくリバプール史上最大にして最高の逆転劇だろうし、CLの歴史においても語り継がれていくであろうドラマだった。

 

 痛感させられたのは、舞台装置の持つ意味の重さ。英国のスタジアムは、客席の1列目とピッチが同じ高さになっているところが多い。そのため、ゴールの瞬間は総立ちになる観客の姿が選手にかぶる。現場で見てもテレビで見ても、これは興奮や臨場感を何倍、何十倍にも高めてくれる。最高級のオペラだって、見る会場によっては印象が変わる。サッカーだって、同じことなのだ。

 

 ただ、逆の見方をすると、お粗末な舞台装置しか持たないチームが多い日本において、それでもわたしの中の満足度が高まっているというのは、サッカーの質自体は相当にあがってきている、ということにもなる。

 

 実際、GW中のJリーグでも嬉しいニュースが多かった。それもJ1以外で。J2では愛媛の山瀬、岐阜の前田、栃木の大黒と、アラフォーな元日本代表が揃ってゴールをあげ、J3では鳥取の17歳、下部組織あがりの石上将馬がアディショナルタイムに決勝ゴールである。ベテランが元気なのは嬉しいし、以前はサッカー不毛の地の感があった地域から若い才能が育っているのも嬉しい。

 

 GW明けには、FC東京の久保が代表入りするのでは、との一報も飛び込んできた。20歳以下の代表チームでは飛び級で選ばれた選手が何人もいる。問題点は多々あれど、着実に成熟と成長を感じられるようになった日本サッカーである。

 

 そう言えば、どこかのメディアで令和のスポーツにどんなことを期待するか、というようなアンケートが実施されていたが、その中に「大谷に次ぐ二刀流スターの出現」という答えがあった。思うに、この願いがかなう可能性はそんなに低くない。今後、二刀流に挑む選手は確実に増えるはずで、競技人口の増加が日本サッカーにもたらしたのと同様の効果が期待できるからだ。

 

 わたしも新たな二刀流の出現には期待したい。ただ、個人的に期待するのは大谷2世ではなく、米国では当たり前で、日本では依然当たり前ではない、異なるスポーツを同時進行する二刀流の出現である。

 

 今後も進む少子化を考えた場合、これは競技人口の多い野球やサッカーの関係者が真剣に考えなければいけない問題だと思う。サッカーと何か、野球と何か、が常識になれば、日本のスポーツはもっと強くなれるはずだと思うから。

 

 選ぶ自由があって、向いていないと感じたらやめる自由もある。そんなサッカー界、野球界が当たり前になる令和であってほしい。

 

<この原稿は19年5月9日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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