ジャパンラグビートップリーグ2014-2015シーズンの開幕まで4日と迫った18日、全16チームの監督、キャプテンらが都内に集結し、今シーズンへの意気込みを語った。昨シーズン同様に全16チームで編成し、2プール2ステージ制が採用される。昨シーズンの王者パナソニックワイルドナイツの堀江翔太主将は返還した優勝カップを目の前にし、「新たに気持ちを切り替え、これを獲りに行きたい」と連覇を誓った。
(写真:開幕ゲームで対戦するパナソニック・堀江<左>、東芝・森田両主将)
 ジャパンの公式戦10連勝、国際ラグビーボード(IRB)ランキングでのトップ10入りと、上げ潮にあるラグビー界。来年開催のイングランド大会、そして5年後の自国開催のW杯に向けて、トップリーグ12年目のシーズンが間もなく始まる。

 式典で主催者代表として挨拶を述べた高島正之チェアマンは「(代表では)目に見える成果が出てきており、トップリーグの果たした役割は大きい。また各チームが全国で行っている教室などで、ラグビーの裾野は広がってきていることを喜ばしく思う。2019年に向けて競技面、普及面で着々と準備が整っていくことを実感しています」と手応えを口にした。

 今シーズンは新たにリーグ戦の112試合とプレーオフを含むトーナメント戦12試合、そして日本選手権全試合でのテレビジョンマッチオフィシャル(TMO)制度の採用が決まった。TMOは主審の求めに応じて、ビデオを使用し判定をサポートする制度。従来はプレーオフと、日本選手権の準決勝以降のみに適用されていた。日本ラグビー協会の稲垣純一理事は「これにより競技判定の厳正化、および公明化。さらに国際基準に沿ったレフェリング体制の整備が実現することと思います」と“科学の目”の効果に期待する。

 これには現場も好意的な声が多い。ヤマハ発動機ジュビロの清宮克幸監督は「選手もファンもレフェリーも喜んでいる。ギリギリの攻防をお見せできると思う」と語れば、サントリーサンゴリアスの真壁伸弥主将も「非常に助かります。レフェリーの判定は絶対ですけど、不安に思ってしまったらゲーム中、感情的になる部分もあると思う。そこをクリアにしてくれることは素晴らしいことだと思います」と歓迎した。

 トップリーグ事業部の南隆雄部長は、年間の観客動員数を「45万人」と昨シーズンと同数を目標に掲げた。昨シーズンは目標数に届かず、36万5491人にとどまった。これは過去11年間で2番目に多いが、これは試合数増加によるもので、1試合平均で言えば4300人とワースト2位である。トップリーグ誕生が、ジャパンの躍進につながったならば、ジャパンの躍進によりトップリーグが活性化するという相乗効果に期待したいところだ。リーグ事業部としても来場促進として様々なイベントを企画する模様。国内のラグビー熱を上げることは、19年W杯開催に向けても至上命題と言える。12年目のトップリーグが発展していくためには、リーグのみならず各チームの営業努力が問われることになる。

 連覇狙うパナソニック、東芝と開幕から激突

 22日のパナソニック対東芝ブレイブルーパス(秩父宮ラグビー場)、NTTドコモレッドハリケーンズ対近鉄ライナーズ(金鳥スタジアム)を皮切りに、今週末の3日間で今シーズンの第1節が行われる。開幕カードの注目は昨シーズンの日本選手権決勝でまみえたパナソニックと東芝の対決だ。

 昨シーズン、トップリーグと日本選手権の2冠を達成したパナソニックは、ヘッドコーチにワラビーズ(オーストラリア代表の愛称)などを率いたロビー・ディーンズを迎えた。クルセイダーズをスーパーリーグの強豪に育て上げた名将がチャンピオンチームに何を加えるのか。ディーンズHCはこう語る。「幸いにも全員が向上しなければいけないということを知っている。今は全員で進化する意気込みで挑んでいきたい。22日はいい試合をして、今後のトップリーグは邁進できるということを示していきたい」。堀江キャプテンも「みんな、うまくなろうとしている」と同様のコメントを口にした。開幕戦でぶつかる東芝に対してディーンズHCは「成功の歴史を積み重ねている。FWをベースにしたフロントローが強いチーム」と警戒。「それにどう対応できるかを築き上げていきたい」と抱負を述べた。
(写真:パナソニック・ディーンズ、東芝・冨岡はともに新任HC)

 パナソニックの堀江主将は「連覇できるのは僕らしかいない。ひた向きに2冠を獲りに行きたい」と王座を守りにいくのではなく奪いにいくつもりだ。スーパーリーグでもまれた堀江、田中史朗がチームを牽引し、パナソニックの黄金期を築くのか。「ボールが動いて、見てる人が楽しいと思えればいい。ディフェンスでもしっかり前へ出て、どんどんプレッシャーかけていけるようなチームに今年もなっていきたい」と、HCが代わっても持ち味であるアグレッシブな守備で連覇に挑む。

 対する東芝もHCが代わったチーム。黄金期を支えた冨岡鉄平がBKコーチから昇格し、今シーズンの指揮を執る。こちらの新HCもチームのプレースタイルを転換するつもりはない。「全く変えず、同じストラクチャー(構造)で戦います」。パナソニックの印象を「ここのところ、結果を出していますし、今年も出してくるだろうなと思えるチーム」と語る。トップリーグ最多の5度の優勝を誇る東芝が、5年ぶりの王座へ挑めるか。最高の腕試しの相手だ。

 天性のリーダー・森田、3年目に懸ける

 東芝の冨岡HCは3年目の森田佳寿をキャプテンに指名した。森田に求めるものは「特にない」という。「自然体で、彼の人間力を発揮し、グラウンド内外でやってくれているんで何もないです」と太鼓判を押す。高校、大学とキャプテンを経験してきた森田は、現在大学選手権5連覇中の帝京大学の出身。同大を率いる岩出雅之監督をして「こんないいキャプテンを負けさせたくない」とまで言わしめた天性のリーダーである。
(写真:左からパナソニック・堀江、東芝・森田、トヨタ自動車・吉田。3人の主将はいずれも帝京大出身)

 歴代の東芝のキャプテンは現役時代の冨岡HCや日本代表の大野均、廣瀬俊朗など錚々たるメンバーが務めてきた。その系譜に名を連ねることになった森田は「光栄なことですし、キャプテンということに対してもワクワクしている」と重荷にとは捉えていない。「(ジャパンのキャプテンの)マイケル・リーチや廣瀬さんが身近にいて、いろいろなことを相談して、イメージをもらっている。僕ひとりが引っ張っていくわけじゃない。他のベテラン勢を含めて、いいイメージを共有して違う方向からアクションをしてもらう。結局は自分にできることは少ない。むしろ前任者たちの存在は助けになっています」

 チームを牽引するのはグラウンド外だけではない。森田はルーキーイヤーの開幕戦でスタメン出場を果たしたが、その後はケガもあって2年間で10試合に出場したのみ。そのため今シーズンに懸ける意気込みは強い。「何よりもゲームでピッチの先頭に立ってやっていくのがチームにとっても、僕にとってもいいこと」。チームの得点源だったデイビッド・ヒルが抜けた今シーズンは、SOのポジション争いを制したいところだ。「いいセットアップをして、チームをよりダイナミックにプレーできるようにする司令塔としての役割を見てもらいたい」と、リーダーとしてだけではなくプレーヤーとして大いにアピールしていくつもりだ。

トップリーグ2014-2015、ファーストステージ編成> ( )内は昨季順位

プールA
 パナソニックワイルドナイツ(1位)
 東芝ブレイブルーパス(4位)
 ヤマハ発動機ジュビロ(5位)
 NECグリーンロケッツ(8位)
 クボタスピアーズ(9位)
 豊田自動織機シャトルズ(12位)
 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス(13位)
 宗像サニックスブルース(2季ぶり再昇格)

プールB
 サントリーサンゴリアス(2位)
 神戸製鋼コベルコスティーラーズ(3位)
 トヨタ自動車ヴェルブリッツ(6位)
 キヤノンイーグルス(7位)
 近鉄ライナーズ(10位)
 リコーブラックラムズ(11位)
 コカ・コーラレッドスパークス(14位)
 NTTドコモレッドハリケーンズ(15位)

(文・写真/杉浦泰介)